クルセイド・ワラキア #6 後編

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その一人、ラッキー・ジェイクは採掘場に設置されたドリンク自動販売機をいくつも蹴り倒して即席のバリケードを作り、同じチームのクリキと、不運にも流れ弾を受けたミカエルを、そこに避難させていた。他の採掘チームもジェイク達に倣い、自動販売機や掘削機械などでバリケードを築き始めていた。 21

2019-02-18 22:52:03
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「どうする、ジェイク」とクリキ老人が問うた。「こんな時にやるこたあ、決まってるだろ。どっち側につくにせよ、とりあえず、武器だ、武器」ジェイクは身を屈め、自販機バリケードから出ると、近くで倒れているシュマズ・ガードたちの死体から手際よくアサルトライフルと拳銃を抜き取った。 22

2019-02-18 22:55:27
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ジェイクはそれを後方に投げ渡すと、流れ弾が飛んでくる前に、また素早く自販機の後ろに逃げ込んだ。「いい手際だな」クリキはシュマズ社のアサルトライフルを受け取り、もう一挺をミカエルにくれてやった。「伊達にネオサイタマでアウトローやってないぜ」ジェイクは大口径の二挺拳銃を構えた。 23

2019-02-18 22:58:56
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「で、どっちが優勢と見る、クリキ=サン?」「そうさなあ」クリキは自販機の陰から、戦場と化した露天掘り鉱山を見た。シュマズは不意を打たれたが、次第に押し返し始めている。採掘場の奥から飛び出してきた12頭ものバイオウルフが次々にオムラ・アシガルに襲いかかり、これを殺していた。 24

2019-02-18 23:03:04
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「こりゃ十中八九、シュマズだな」「当然だよ。僕らはネオワラキアの民なんだから、ブラド公のために戦わなくちゃ!」ミカエルはバイオウルフたちの戦いぶりを見ながら目を輝かせた。オムラ歩兵が悲鳴をあげ、食いちぎられた手足が宙を舞う。「ああ、獰猛なる牙、その目はルビーのように紅い……!」25

2019-02-18 23:07:44
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「じゃあ、やるとするかい、ジェイク」「おうよ、目立たない程度にな」ジェイクとクリキは自販機バリケードからの援護射撃を開始した。BRATATATA!BLAMBLAMBLAM!「僕も?」「ミカエル、お前もやるなら、俺と同じ場所を狙え。あっちのシュマズ・ガードと連携すりゃ、オムラの奴らに十字砲火だぜ」 26

2019-02-18 23:10:27
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ジェイクや他の採掘チームは、追い詰められたシュマズ・ガードを援護すべく射撃を行った。やがてバイオウルフの猛攻が功を奏し、次第にシュマズ側が戦線を押し上げ始める。ジェイクたちもそれに合わせて少しずつ前進し、転がっている死体から銃器を剥ぎ取って、後ろの採掘チームに次々投げ渡した。 27

2019-02-18 23:12:51
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やがて三人は見晴らしの良い高台へ。「ミカエル、ヒーロー気取って調子にのるなよ。後ろにどんどん武器をくれてやれ。ここの採掘チームだけでも結構な数になる」次の即席バリケードに飛び込んだジェイクは、煙草を咥えたまま振り向き、ニヤリと笑った。「俺たちだけでやる必要なんか、ないんだぜ」 28

2019-02-18 23:15:38
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直後、狼じみた遠吠えと、ひときわ大きな悲鳴がオムラ側で上がった。「何だ?」ジェイクは振り向き、サイバネアイを凝らした。採掘場の奥から、上半身裸に毛皮のコートを纏った男が雄叫びと共に姿を現し、血のように赤い目を輝かせながら突撃。銃弾を軽々と回避し、オムラ側の隊列へと飛び込んだ。 29

2019-02-18 23:18:00
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直後、オムラ兵は次々に切り裂かれ、血飛沫が飛び、死体へと変わっていった。「ARRRRRGH!」その男はオムラ車両の上に飛び乗ると、オムラ部隊長の首を掲げ、遠吠えめいて叫んだ。バイオウルフたちもそれに答えて吠え、次の瞬間には、的確な命令を与えられた戦士のように敵に飛びかかっていった。 30

2019-02-18 23:20:44
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返り血を浴びた男の肌は、病的なまでに青白い。そして異様なほど長い犬歯。「ありゃニンジャだな。バイオウルフの親玉か何かか?」ジェイクは嬉しげに言った。ネオサイタマ時代の経験から、彼はニンジャを見ればすぐにピンと来る。ニンジャは恐ろしいが、味方につくとこれほど頼もしいものはない。 31

2019-02-18 23:22:52
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「ニンジャまで来たなら、シュマズ側の勝利はカタいだろ……!」そう言いかけた直後、ジェイクは実は喜ばしくない光景を見た。「ドーモ」「ドーモ」……アイサツだ。ニンジャが戦場でオジギし、アイサツを行っている。オムラ側にもニンジャがいたのだ。 32

2019-02-18 23:26:45
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「マズイな……」ジェイクはサイバネ聴覚の閾値を調整した。ノイズまみれにアイサツの声が聞こえてくる。ワラキア側のニンジャはローンウルフと名乗った。敵はブラックヘイズと名乗った。さらに、オムラと思しき重装甲ニンジャがもう一体現れ、レゾナンスと名乗り、ブラックヘイズの側に加勢した。 33

2019-02-18 23:28:59
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「ファック」ジェイクは額の汗を拭った。援護射撃をクリキらに任せ、自分はサイバネアイで必死に敵ニンジャの動きを追った。「しかも様子が妙だ。ニンジャどもの紋章を見る限り……ブラックヘイズって奴は……カタナ社だ。オムラ社とカタナ社が共同戦線張ってやがるのか?犬猿の仲だろ、あいつら?」34

2019-02-18 23:30:46
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「するってえと、今回のはクルセイドか?」クリキが吐き捨てるように言った。「採掘所どころか街ごとブッ潰すつもりか?」「クルセイド?」ミカエルが首を傾げた。「マジかよ。ヤギのファックだ。勘弁してくれ。ドラキュラの野郎が喧嘩売ったから、奴らついにキレたのか?」ジェイクは舌打ちした。 35

2019-02-18 23:34:16
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「本当にクルセイドなら、今見えてる敵なんざ、巨人が履いた鉄板ブーツの爪先みたいなもんだ。少なくともあの後ろに数十倍の戦力が控えてるぞ」「クルセイドって何?」ミカエルが問う。「論理十字軍だ。論理聖教会が暗黒メガコーポを集めて、率いとるっちゅうこった」クリキが言い、弾倉を交換した。36

2019-02-18 23:37:11
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「しかし滅多に起こるもんじゃない。そこに居合わせるなんて、相当運が……。おい、待て、ありゃ何だ?」クリキは目を凝らした。戦闘が起こっているのとは別の場所で、オムラ・アシガルの重装歩兵部隊が、巨大アナコンダめいて野太いケーブルを運搬しているのが見えた。電源ケーブルであろうか。 37

2019-02-18 23:39:20
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「わざわざここのエメツ電源取ろうってのか?ファッキンオムラの考えることはわかんねえな。後方にどれだけ部隊が控えてんだ」ジェイクもそれを見て首を傾げた。「どちらにせよ、とっととこの採掘場から逃げ出さなけりゃ、命がいくつあっても足りないぜ。あの狼野郎に頑張ってもらわにゃ……げえッ」38

2019-02-18 23:40:32
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ジェイクが視線を戦場に戻すと、二体一に追い込まれたローンウルフは銃弾とスリケンを浴び、その片脚はほとんど千切れかかっていた。ジェイクの全身から血の気が引いてゆく。ニンジャのイクサはジェットコースターめいて瞬時に戦況が変わる。「こりゃマズいか……?」 39

2019-02-18 23:42:46
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だが直後、ローンウルフはオムラ兵の隊列の中に飛び込み、不運な犠牲者の首筋に食らいついて、生き血を吸い上げた。あっという間に1ダースほどの兵士が殺され、ローンウルフの傷はいつの間にか塞がり、前よりも遥かに荒々しいカラテで再びオムラ側のニンジャに挑みかかっていった。 40

2019-02-18 23:45:24
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「ヒュウ、心配して損したな」「どうなっとる、ジェイク?」BRATATATATATA!BRATATATATATA!クリキがオムラへの側面射撃を続けながら言った。「あいつムチャクチャだぜ。血を吸って傷を治してやがる。そりゃそうか、吸血鬼でニンジャだもんな」ジェイクは愉快そうに笑った。 41

2019-02-18 23:47:01
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さらに乱戦の中へと、スーツを着た黒人のニンジャがイナズマめいて着地。彼は苦戦するローンウルフと背中合わせに立ち、アイサツを決めた。ローンウルフも、この男の増援に驚いているようであった。その男は敵に対して深々とオジギをし、カシウスと名乗った。 42

2019-02-18 23:49:08
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「よし、よし、いいぞ!いいぞ!シュマズ側にニンジャが増えやがった!」ジェイクはガッツポーズを作った。他の採掘チームの連中も武器を取り、シュマズ・ガードとともに反撃を開始していた。オムラ兵の首が飛び、血飛沫が上がるたびに、エメツ採掘労働者たちは歓声を上げた。 43

2019-02-18 23:53:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イェー!クソッタレの論理聖教会め!このままおとなしく家に帰って、UNIXゲームのママとでもファックしてな!」ジェイクも二挺拳銃を構え、デジタル・オーディンですら耳を覆いたくなるほどの電子的な侮蔑の言葉と共に突き進んだ。クリキやミカエルもそれに続いた。 44

2019-02-18 23:55:32
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だが、そこまでだった。ブゥン、ブゥーンという地鳴りのような音が、敵軍の遥か後方から聞こえた。巨大な電子レンジの中に放り込まれたような頭痛と吐き気が、ジェイクたちを襲った。 45

2019-02-18 23:58:28