亜人と自然保護官の話

帽子男 @alkali_acid

亜人の子供は乳離れが遅く、おっぱいを吸わせるとおとなしくなると聞いて仕方なく差し出すお姉さん。

帽子男 @alkali_acid

がじがじと噛みつく亜人の子。 「がまんがまん」 と目をとじて耐えるお姉さん。夜には歯型がうずく。

帽子男 @alkali_acid

化膿とかではないと思うが消毒して、電話で聞いてみる。 「歯を立てるのだが」 「それは亜人の大人の求愛行動。子供はしない。犬歯が生えてきてからだ」 「おかしいな…」

帽子男 @alkali_acid

亜人の子はばりばり鉄木の幹とかにかじりついて固い皮をはがしたりしている。犬歯が生えてきてる。でも体は小さいし。 「むむう」 「ふぎふぎ」 幹をへし折ってしまう。すごいあごの力だ。 「加減されてるのか…あれで…」 一応お姉さんの胸には甘噛みしてるつもりらしい。

帽子男 @alkali_acid

「犬歯が生えてきている気がするぞ」 「ありえない。だが一応気をつけたまえ。亜人の犬歯には精神刺激効果がある。密猟者に乱獲したのも犬歯の採集が目的だ」 「ううむ」

帽子男 @alkali_acid

ちんちくりんのままだが、犬歯は長くなってきている気がする。 噛み倒した木をひきずって川に放り込んでいく子供。 「あの体格であの腕力か」 観察しながら驚くお姉さん。いつもしがみついてくるときは加減しているらしいと分かる。

帽子男 @alkali_acid

だんだんと川がせき止められてあたりが水浸しになっていく。 「池を作っているようだ」 「ありえない。成人した亜人がつがいを作ったあとにとる行動だ」 「亜人の成人の体長は二メートルだったはずだな」 「そうだ。額から尾底にかけての鬣と合わせてとても目立つ。だから密猟の的になる」

帽子男 @alkali_acid

亜人の子供は鬣は生えていないようだし、体長は二メートルどころか百二十センチ台だろう。 やはり成人しているのだとは考えにくいが。 「成人までは二十年だったな」 「そうだ。再誕で十七年という記録はあるが」 「いずれにしろまだ当分先」

帽子男 @alkali_acid

お姉さんは池の周りを散歩する。 中央のあたりに木の枝を積み上げた巣がわずかに見えている。 亜人の子供がはいのぼって魚をむしゃむしゃ食べている。 眼が合うとばしゃっと飛び込んで水中をすいーっと泳いでくる。 岸辺からあがってよじよじ服をのぼってくる。 「こら。やめろ魚くさい」

帽子男 @alkali_acid

宿舎に連れて戻ると、シャワーを浴びせて歯ブラシとフロスで口のなかを磨いてやる。 「予防接種もしなくてはな」 「ぐるるる」 言葉が分かるのか犬歯をむいてうなる。 水かきのついた手でぺちぺち叩いてくる。 「注射は嫌いか。私もだ」

帽子男 @alkali_acid

ご機嫌とりにおっぱいを吸わせてあげる。つなぎの前を開いてシャツをたくしあげてブラジャーをはずして。 がじがじ噛みついてくる。 「お前が…んっ…本気になったら…食いちぎられてしまうな」 こわい髪の毛を撫でてやりながらつぶやいていると、指が何かに触れる。生え際に艶と質の異なる和毛。

帽子男 @alkali_acid

「鬣…」 縦に狭まる亜人の子供の瞳孔を覗き込む。 「お前…成人しているのか…？」 うがうが、という感じで上目遣いしてくる子供。指で口を広げて犬歯のようすを確かめる。しかし丈夫そうな歯。

帽子男 @alkali_acid

子供はどんどん鬣が長くなって、尾底のあたりから尾のように伸びる。 ごわごわした房毛。よく濡れたままのこすりつけてくる。 さらに朝には宿舎の窓に池でとれた魚をぶつけてくるようになった。 求愛らしいが迷惑。お姉さんは毎度掃除しながら溜息。

帽子男 @alkali_acid

また電話で連絡してみる。 「やはり成人しているようだ」 「ありえないな」 「だが事実犬歯と鬣がある」 「幼体成熟（ネオテニー）か…下等動物では例があるが…」 「過去に亜人がそうなったという報告は」 「ないな。ありえない。だが君の手に余るようなら」 「いや何とかする」

帽子男 @alkali_acid

亜人の子供？大人？彼が遊ぼうと誘ってくる。ぴょんぴょんと宿舎の前で飛び跳ねてはぐるぐると回る。 お姉さんは苦笑して水着に着替えてついていく。ゴーグルとシュノーケルをはめて水にざぶん。ちょっと冷たいが心地よい。 水中を進む亜人の姿はしなやかで美しい。

帽子男 @alkali_acid

池の真ん中にある木の枝の巣は水中から入るらしい。中は割と乾燥していて過ごしやすい。糞尿の匂いもしない。清潔。 「なかなかいいお家だな」 鬣をくしけずりながら褒めてやると亜人は身をくねらせながらお姉さんに摺りついて、しばらくするとまた池に入り、ざりがにを採って来る。

帽子男 @alkali_acid

生け簀みたいなところにいれて飼っているらしい。食べ残しの魚などをくれてやっているようだ。とっておきのごちそうといったところか。 「…生のざりがにはちょっと…」 謝絶すると亜人は不満そうにかじりつき殻ごと粉砕。むしゃむしゃ。 「よく食べるな。その割に大きくならないが」

帽子男 @alkali_acid

またおっぱいを欲しがる。 「お前。大人になったんなら乳離れしないとな」 と言いながらもすっかり慣れたようすで水着の肩ひものところをはずしておっぱいをだすお姉さん。歯型がまだ癒えていないところに上からまた幾重にも噛み跡が重なる。

帽子男 @alkali_acid

誰にも見せられないな、と思いながらも左右の乳房を交互に噛む亜人をおだやかに眺めおろすお姉さん。痛みには慣れたはずだが時々また眉がぴくっとなる。 どうも歯の立て方に、いらうような、試すようなところがある。 「お前…いじわるだな」 目を爛々と輝かせ見上げる亜人の仔。もちろんという顔。

帽子男 @alkali_acid

明くる日。また電話で連絡しようとして、通じない。 お姉さんはちょっと驚いてちゃんと仕事の装いをして、森の中の電話線をたどる。地中に埋まっている区間をすぎて、通信塔までたどり着いたところで、壊されているのを発見する。亜人のいたずら、にしては徹底している。

帽子男 @alkali_acid

腰に締めた帯に手をやったところで肩に衝撃。撃たれた。 密猟者がいる。通信塔の影に入って撃ち返そうとするが、痛みでうまくいかない。

帽子男 @alkali_acid

とうとう銃をとりおとし、反撃ができなくなってしばらくしてから、向こうが近づいてくる。 「女だ…自然保護官にしとくにゃもったいない」 「殺せ。仲間を二人もやられてるんだぞ」 「だからこそただ殺すんじゃつまらねえだろ」

帽子男 @alkali_acid

血まみれの服を脱がせてくるが抵抗できない。 お姉さんのおっきな胸を見て口笛を吹く密猟者。 「おい見ろよ。まるで亜人の雌じゃねえか…気の荒い若い雄とくっつくとこうなるんだぜ」 「自然保護官ってのはいい趣味してるじゃねえか」 歯を食いしばるお姉さん。出血で意識が遠のく。

帽子男 @alkali_acid

密猟者の顔面にいきなりざりがにが張り付く。くさそう。 「あ？」 またざりがに。ざりがに。ざりがに。 怒ってあばれるざりがにが鼻とか耳とかを挟んでくる。 「いでえ！！？」 魚。くさそう。

帽子男 @alkali_acid

森の中にたてがみがあらわれては消える。 「亜人だ！」 密猟者はざりがにを引きはがし、血相を変えて銃を構え、撃つ。あたらない。 「おい。追いかけろ」 「女はどうする」 「ほっときゃ死ぬ！それより亜人だ」