- alkali_acid
- 1461
- 7
- 0
- 0
密猟者達は獲物を追う。しばらくして大きな木が倒れる音がする。悲鳴と銃声。断末魔。 やがて亜人の仔がやってくる。お姉さんのそばへ。 「お前が…無事でよかった…」 お姉さんはほほえんで目を閉じる。
2018-12-24 00:50:44お姉さんは長く重たく苦しげな夢にとらわれながら、幾度か短いあいだ目を覚ます。都度うなじに、鎖骨に、脇腹に、二の腕に、頬に、太腿に、足の甲に、とがった歯が食い込むのを感じる。冷え切った体が、そこから炎を注ぎ込まれたように熱くなる。
2018-12-24 00:55:20生ぐさいキス。口移しにされた魚の肉を吐き戻すと、二度目からは甘い果実になる。 やっと意識が鮮明になると、裸のまま、池の中の巣にいるのが分かる。傷口に入った弾はえぐりだされていて、苔が包帯のようにあてられていた。化膿はしていない。
2018-12-24 00:58:47「お前の唾液には…雑殺を殺す力があるのかもしれないな」 我がものがおで乳房に食らいつく亜人の仔の鬣を撫でながら、お姉さんはつぶやく。全身に歯型が、別の意味で熱を帯びて、それを水掻きのついた小さな掌がそっと撫でている。 「お前の犬歯には…もっと別の力がある…ようだが…」
2018-12-24 01:01:34通信途絶から十日ほどでヘリが来た。 「遅くなってすまない。すぐに病院へ」 「大丈夫だ。かすり傷だ」 「そういうわけには」 「大丈夫だ」
2018-12-24 01:05:58通信塔を修理し、予備の通信機も。 「本当に交代は必要ないのか」 「ああ」 「ならばいいが。亜人は?」 「警戒しているのかも」 魚が飛んでくるのを慌ててかわす。 「とにかく歓迎されていないようだな。では我々はこれで」
2018-12-24 01:09:00ヘリが去ったあとで、お姉さんはきちんと着こんでいた服を脱ぎ捨てる。 そこかしこに歯型だらけ。とても同僚には見せられない。 「まったく…お前は…やきもちやきだな」 鬣をゆすりながら、亜人の仔が近づく、牙を剥いて。だが敵意の印ではない。 「分かった分かった…」
2018-12-24 01:11:03「好きなだけ噛めばいい…お前のものだから…」 裸身のまま両腕を広げる保護官の胸元に、小柄な影がぴょんと勢いよく飛び込み、猛然と押し倒すのだった。
2018-12-24 01:12:41