【それをよいと言う】福間健二 #k2fact216
バーミャンで安く飲んで日が変わる。広いフロアーをひとりで担当する青年。感じよかった。ぼくも座骨をのばして歩きたい。だれに会ったとしてもどこにも連れていってくれない大学通りから入った小路のいまにも咲きそうな沈丁花の蕾たち。ゴージャスじゃないのがいい。(それをよいと言う1)#k2fact216
2019-02-26 11:22:01書かれなくてもいい過去だとさ。夜に拾った楽器。鳴るのかな。夢のなかで試してわかったことを朝には忘れてニュースを見る。七十一歳の男が奇妙な死に方をしてハノイではトランプとキムが会う。かすかにだがまだ月がいる。クロワッサン。鳴るのだ。ぼくは生きている。(それをよいと言う2)#k2fact216
2019-02-27 10:58:02ゴージャス、なにか余ってしまうものがあるということ。たとえこの世のものでも。遠い日々に帰って遊んでいてもらうしかないかれら。メールする。いま、新宿駅。軽くすませました。腹八分目、お酒六分目くらい。お風呂入ります。中央線、きょうはだれも落ちなかった。(それをよいと言う3)#k2fact216
2019-02-28 08:43:30いきなり呼びかけられた。余っているとしたらたとえばきみだ。でも。動かない物体のあいだを移動して生きのびる。すきまのある世界。まだ。どんな痛みも原因をたどっていくと遠い日々に出る。はい。お風呂に入ってハイボールと柿ピーまでの、小さな穴。二月が終わる。(それをよいと言う4)#k2fact216
2019-03-01 08:52:49くやしかった過去。だれかのせいでそうだったという散文を追うな。弦をはった真夜中の丘で踊る二本足よ。夜が明けてもその周波数の作用が残っている。いいね。海を感じる散歩のあとはネットからも五二八ヘルツ。まだいる人。一緒に用意した朝ごはんを残さずに食べる。(それをよいと言う5)#k2fact216
2019-03-02 11:04:22わからないと言わない。素手でやれることがほとんどなくなった社会で、推理力ゼロにひとしいと言われるぼくでも。パスしてない。なにかが生まれなくてはならない物語のつづき。ゆっくりと流れおちて筋をつくる黒い液体。ぼくから出る。ぼくが出した。まだ出てくるよ。(それをよいと言う6)#k2fact216
2019-03-03 11:14:25ドアのない部屋でのびのびしてあくびが出る。男の意地だ。ゴージャスな美女の夢なんか見ない。どっちを向いても見習いの分身が泳いで。安く飲む。きょうはサイゼリア。バンドのメンバーが次々にやってくる。いい曲できた。人間になった。深く隠れている蛇を見つけた。(それをよいと言う7)#k2fact216
2019-03-04 12:25:09出現。そのタイミング。それ以上にきっと隠れ方が勝負だったのだ。人間も蛇もそして生まれる前からの傷口も。消える部分、終わっていい部分、ちゃんと始末しているのかどうか。サイゼリヤ国立駅南口店、もうすぐ全席禁煙になる。きみも四月からは新しい学校に行く。(それをよいと言う8)#k2fact216
2019-03-05 09:10:18きみと一緒に見た海の色、きみの目の色と同じだった。台風が去ったあとの主題は、きらいなものを好きになること。どっちが得意だったか。入れかわって階段をおり、重たいドアをあけて入ると新しいバンドが生まれていた。一九九円の真イカのパプリカソース、もう一皿。(それをよいと言う9)#k2fact216
2019-03-06 12:46:37その秋からこの三月までの、蛇と目的を隠した実験。メロディーが後向きに歩けと言ってもリズムがそうさせない。戻ってきたきみ。数字について質問しない。すぐにまたいなくなる。いい曲だ。何ひとつ余らない夜。タバコをすう人たち。だれかの墓参りをしてきたそうだ。(それをよいと言う10)#k2fact216
2019-03-07 10:13:17