ア・デッカーガン・イズ・マイ・パスポート #2

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ア・デッカーガン・イズ・マイ・パスポート】#2

2019-03-20 21:59:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「単刀直入に言う」他に誰もいない閉店ピザタキ。カウンターに肘をついて、ムギコはタキをじっと見た。「ニンジャスレイヤーの力を借りたい」「……」タキは解凍された冷凍オモチ・ダンゴを掴み取り、口の中に入れた。そして極力ゆっくりと咀嚼する。無言を貫こうとする。「……」 1

2019-03-20 22:05:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ン……ンン?」タキはユノミを取り、ゆっくりチャを飲んだ。「ンン?ン?」「ニンジャスレイヤー」「ン……ンー……何の事だかさっぱりだな」「そういうシラを切る時間が無駄なんだ、タキ=サン」ムギコは言った。「企業ウキハシ・ポータルへの不法侵入と器物損壊が数度。私はその記録をあたった」2

2019-03-20 22:10:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウキハシ?ああ、アレね。いや、こっちの話」タキは二つ目のオモチ・ダンゴに手を伸ばした。ムギコは続けた。「暗黒メガコーポはその手の被害記録は隠蔽する。市民の問題でもないから、いちいちキモンも調べたりしない。だが、調べようと思えば調べられる」「……フーン」タキはまたチャを飲んだ。3

2019-03-20 22:13:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユノミを置いたとき、彼は……彼に真に詳しい者であれば気づく……ある種の太々しさを、しおらしい表情の下に含み始めていた。(キモンの手帳は本物……コイツのアトモスフィアも、実際容赦ないキモン・デッカーそのもの。確かにそうだな)彼はムギコの視線から目を逸らした。「それで?」 4

2019-03-20 22:15:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前はニンジャスレイヤーの協力者だな?」「協力者かって?オレに訊くのか?無駄話したくないんだろ?わかってるから来たんだろ」「ニンジャスレイヤーに……」「何故ニンジャスレイヤーに用がある?キモンが?」自身に咎が無いという事を彼は皮膚感覚で確信し、即座に図太くなった。 5

2019-03-20 22:20:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ズズーッ」タキは横を向き、横目でムギコを見ながら、音を立ててチャを飲んだ。「オレはオダンゴが大好きなんだ」そして三つ目のオダンゴに手を伸ばす。ムギコは先んじてそれを取り、食べた。タキを睨む。「調子に乗るんじゃない」「だってニンジャスレイヤーに用があるんだろ?オレが窓口だ」6

2019-03-20 22:26:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そう。つまり貴方はニンジャスレイヤーの一味で……暗黒メガコーポの不法侵入事案の参考人として逮捕連行してもいいわけね?」「え?いや、窓口的な……アウトソーシング。オレは取り次ぎ役に過ぎねえ……やめろ、法律なんてねえんだぞ!この一帯はキモンにドネートしてねえし」「そう。無法地帯」7

2019-03-20 22:30:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ストップだ。そういう意地の張り合いは建設的じゃねえ」タキは笑顔を作り、前進的撤退を行う。「それで?か……彼に何の用件だね?」「直接話す。取り次いで」「アンタ正気か?わかってねえな」タキは目を剥いた。「アイツにまともな会話や話し合い、交渉の類が通じると思ってやがる。これだから」8

2019-03-20 22:33:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「つまり?」「オレに言ってくれればそれでいいんだよ。後はオレがよしなに調整するから。用件を言ってくれ。今日のところはそれで……」「戻ってくるまで、ここで待つ」「エ?」「戻ってくるまで、ここで待つ」ムギコは繰り返した。「……」タキはオダンゴをさがした。もう無い。 9

2019-03-20 22:36:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここがニンジャスレイヤーのアジトという事はわかっている。いつ戻ってくる?」ムギコは少し力を込めて尋ねた。タキはツバを飲んだ。「もうすぐだよ……」「ダムシット」ムギコは蒼ざめ、呟いた。そして椅子を立った。出口へ向かおうとするムギコをタキが留めようとする。「待てよ!マジだから!」10

2019-03-20 22:40:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何がマジだ!」ムギコは声を荒げた。「マジはこっちだ!私は……」発作的な怒りに任せ、彼女はデッカーガンの銃底を壁に叩きつけた。そして無言でひどくそれを恥じた。「……!」「なんだ。切羽詰まってオマエ……」タキはおずおずと尋ねる。ムギコは無言。「とりあえず……チャ。な。チャ飲めよ」11

2019-03-20 22:43:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキはマッチャ・ベンダーのボタンを繰り返しプッシュしながら、グルグルと思考を巡らせた。ムギコは苛立たしげに溜息をつき、戻って来た。タキはチャにオカキを添えた。「あのな、マジな話、オレはニンジャスレイヤーと協力関係だ。だから手配も可能だ。アンタを助けられる。信頼してくれ」 12

2019-03-20 22:45:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ムギコはチャを飲み始めた。タキは腹に力を込めた。(コイツはキモンだ。だが、何か事情があって、単独で動いてる。そしてニンジャスレイヤー=サンの力を借りようとしてる。多分アイツのカラテのヤバさを何かで知ったんだろう。腹キメろよ、タキ)恩を売れば、ピザタキが得る利益はデカい。 13

2019-03-20 22:48:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ピザタキがキモン提携店に認められれば、キモンの下請けの賞金稼ぎ達が情報交換に訪れるアツいコミュニティ・スペースになるだろう。ソウカイヤのヤクザはタキをナメているが、キモンと両天秤にかけてうまく刺激すれば影響力を大きく出来る。彼はニューロンを加速させて月の稼ぎを皮算用した。 14

2019-03-20 22:52:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「話、聞かせてくれ。確かに今ここにアイツは居ない。だが詳細がわかればオレのほうで最適解が出せる」「情報を漏らせば貴方を殺す。いいか」「いい。何故ならそんな事は100%あり得ない」タキは頷いた。こめかみを汗の粒が流れた。ムギコは声のトーンを落とした。「ノボセ長官が行方不明だ」15

2019-03-20 22:55:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「エ?長官?」「アンタもノボセ?長官、ア、ご家族な?」「そんな事はどうでもいい!」ムギコが声を荒げた。「キモンの長官、ノボセ・ゲンソンが行方不明だ!彼はトコシマ区で姿を消し、連絡が取れぬままだ。そして現場に残されていた遺留品はソウカイ・シンジケートにまつわるものだ!」 16

2019-03-20 22:59:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ソウカイヤ?ちょっと待て、待て待て」「当然こんな話を公には出来ない。バラしたら殺す」「絶対にバラさない」「キモンはソウカイ・シンジケートに対する総攻撃を準備している。デッドエンドというニンジャを知ってる?」「ア……まあ名前は。恐ろしい……その……」「彼女が完全にキレた」 17

2019-03-20 23:02:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「じゃあ戦争か。大変だぞ」大規模な話ゆえにタキはかえって実感がなく、声のトーンが平坦になった。「暗黒メガコーポも、黙っちゃいないよな。一番でかいヤクザと一番でかい自警組織が共倒れになってよォ、そしたらまたネオサイタマ分割の危機……」「それを避けたい」ムギコは呻くように言った。 18

2019-03-20 23:05:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オマエ、冷静だな。キモンなのにテンション上がらないのか?しかも命がアブナイなのはオマエの家族なんだろ?ア……悪い。チャを飲んでくれ」タキは目を逸らした。誰よりソウカイヤを攻撃したいのは当然ムギコ本人なのだ。責任感と奥ゆかしさとある種のプライドが、今の彼女を動かしている。 19

2019-03-20 23:10:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャスレイヤー=サンはノボセ・ゲンソンの恩人だ」ムギコは言った。「ニンジャスレイヤーはかつて、謀殺されかかったノボセ・ゲンソンの命を幾度も救った。最近になって彼が再びネオサイタマに出現した事が……」「成る程?」タキは曖昧に頷いた。「人に歴史ありだからな。わかるぜ」 20

2019-03-20 23:15:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキは高速思考する。(昔の話。そのニンジャスレイヤーはオレの知るニンジャスレイヤーと違う。オーケイ。人違いごときを理由に、ビッグ・ビジネス・ディールを手離せッかよ)「つまり……ウチのニンジャスレイヤー=サンに動いてもらいたいッて事だな。長官を救出して、争いの火種を消す……」 21

2019-03-20 23:20:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「時間は限られている」「ああ。だろうな。ニンジャスレイヤー=サンもASAPでここに呼びつけるがよ……それを待ってはいられねえぜ。積極的に動いていかねえとな」タキはキアイを入れた。「ついて来なノボセ=サン。オレの秘密の城は、そう簡単に明かしはしねえが、今は非常時だ」 22

2019-03-20 23:25:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……五分後!二人は地下の狭苦しい秘密UNIX情報収集室で、ジャンクにまみれて青白いモニタの光を顔に受けていた!「トコシマと判明したのは最後に送信された通信コールのIPアドレスからだな?」高速タイピングを行いながらタキはムギコに確認する。彼女への確認の形をとっているが、自問自答に近い。23

2019-03-20 23:27:39