ア・デッカーガン・イズ・マイ・パスポート #9

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だァ?整備不良か?勘弁してくれ」軽口を叩きながら、シンゴはノボセに目配せし、懐のデッカーガンを片手でさぐった。いわゆるデッカーの勘……デッカー・センスである。ノボセも頷き返し、不測事態に備える。操縦者はヘリを降り、確かめようとする。「おかしい……アイエッ!?」 24

2019-04-10 23:11:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン!?彼が見たものは!ヘリのローター部分に絡みつく半壊のオイランドロイドである!「アイッ……アイエエエッ……!?」「AAARGH……」バキ、バキ、バキキ、減速するローターに圧迫され、捩じれながら、オイランドロイドは操縦者に顔を向け、痙攣した。「ARRRGH……!」コワイ! 25

2019-04-10 23:13:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

捩じれ壊れてゆくオイランドロイドを呆然と見つめ、操縦者は後ずさった。その首筋に細い指が絡みついた。「オゴッ!?」彼の背後にはもう一体のオイランドロイド!「オ、オゴゴーッ!?」「アカチャン……オッキクネ」オイランドロイドが囁きかける! 26

2019-04-10 23:15:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オゴ、オゴーッ!アバッ」パキ、首骨が折れ、操縦者の首は真後ろを向いた。オイランドロイドは満足し、死体から手を離した。「イヤーッ!」ヘリのドアがスライドし、シンゴが飛び出した。BLAM!BLAM!「ピガーッ!」オイランドロイドの頭部と心臓をデッカーガンが過たず撃ち抜いた! 27

2019-04-10 23:17:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「な……何だ!?何が……なんてこった……!オイッ!」操縦者、死体!「これは……!」ノボセは屋上ヘリポートの端まで走り、トコシマ区を見下ろした。「これは……なんと……!」アバーッ!アババーッ!アイエエエエ!街路の悲鳴がこのトコシマ・シェリフ本拠地屋上まで届く!見よ! 28

2019-04-10 23:18:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「な……!」ノボセの横に立ったシンゴはサイバネアイのレンズを拡大させた。彼は呻いた。オイランドロイドだ。オイランドロイド達が街を走り回り、街路の人々を無差別に襲っている!「こ、こいつは……!」「アカチャン!オッキクネ!」彼らの足元!壁をよじ登りくるオイランドロイド! 29

2019-04-10 23:20:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAM!シンゴはオイランドロイドの眉間を撃ち抜く!「ピガーッ!」オイランドロイドが落下してゆく!別のオイランドロイドが登ってくる!それらは工場に並んでいた素体ではない。市民社会の中で使われている実際のオイランドロイドではないか!ノボセは衝撃によろめいた。まるで、10年前のあの日だ。30

2019-04-10 23:22:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

あの月破砕日、オイランドロイドが一斉に怒り、市民暴動に加わった。あれは極めて神秘的な出来事だった。そして今この時、トコシマに起こっている事は……否、違う、まるでこれは無差別殺戮である!KABOOOM!付近のビルの一角が爆発炎上した。二人は呻き、銃を構えて並び立った! 31

2019-04-10 23:24:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAM!BLAMN!タバタは正確な二度の射撃で、襲い来たオイランドロイド素体を撃ち抜いた。「クソッ!また始まったのか!?」BLAM!ムギコは片膝をつき、後ろから襲い来た別のオイランドロイド素体を撃ち抜いた。「これは一体……」「ハッカーです。恐らくまだこの拠点に!」彼らは廊下を走った。 33

2019-04-10 23:27:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

転がり込んだ一室には粉砕破壊された鏡台UNIXがあった。「駄目。反応しない」「壊れている」タバタは舌打ちした。「他にデッキは無いか」「探そう」痛みをおして、ムギコはタバタと共に再び廊下へ飛び出す。「下は?」「駄目だ。さっき連鎖爆発があった」タバタが答えた。「上の監禁室へ」 34

2019-04-10 23:29:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

駆け上がり、監禁室にエントリーする!液晶ビジョンはノイズ塗れの状態で静止していた。ザザッ……ザリザリ。スピーカーがノイズを垂れ流し、静止画像は……歪んだ笑みを浮かべたト・キコであった。「クッ……」ムギコは漆塗り小型UNIXデッキにアクセスを試みる。無反応。「アブナイ!グワーッ!」35

2019-04-10 23:32:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ムギコは振り向く!ナムサン!タバタがムギコを庇い、背中を爪で切り裂かれて転倒した!四本腕のオイランドロイド素体が首を高速回転させる!BLAM!BLAM!BLAM!ムギコはデッカーガンを連射する!破壊されながら迫る異形オイランドロイド!「アカチャンーッ!」ムギコは歯を食いしばった! 36

2019-04-10 23:34:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAASH!その時だ!異形オイランドロイドがバールで殴られ、首を捻じ曲げて痙攣!ムギコは隙を捉え、BLAMBLAM!更に撃って今度こそ機能停止に追い込んだ!崩れ落ちたオイランドロイドごしに、薄汚い金髪の男が荒く息を吐いてムギコを見た!タキである!「畜生この野郎!」その手にバール! 37

2019-04-10 23:36:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「タキ=サン!?」ムギコは驚きに目を見開いた。「ノボセ長官と一緒に脱出したんじゃ……?」「ア?エート……一応そのつもりだったんだがよ。あのままお前を置いてくと、ちょっとマズイつうか……」タキは頭を掻いた。「オレの働きの重要さ、これでわかったか?キモンに推せよ?」 38

2019-04-10 23:40:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキは恐怖と照れ隠しがないまぜになった顔だった。ムギコは床に倒れたタバタを助け起こした。「タバタ=サン!」「い、意識は……あります」「タキ=サン、オイランドロイドが」「わかってら。どうなってやがる!」「そこのUNIXデッキで、どうにかできない!?」「エッ?オレはテンサイだが……」 39

2019-04-10 23:43:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「別の奴が来る!」「ちょっと待て……ア、ダメだわ」タキは電源ボタンを繰り返し押した。「反応しねえ」「下へ……」「アカチャンーッ!」さらなるオイランドロイド素体!BLAM!射撃!破壊!三人は飛び出し、階段を駆け下りる!「アカチャンーッ!」襲い来るオイランドロイド素体!BLAM! 40

2019-04-10 23:45:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

非常口に!「アカチャンーッ!」BLAM!「アカチャンーッ!」ナムサン!ダメだ!倒すより早いペースで補充!三人は別ルートで下階へ走る!「アカチャンーッ!」BLAM!「アカチャンーッ!」BLAM!「アカチャンーッ!」「アカチャンーッ!」2階と1階の狭間の踊り場で、彼らはついに立ち往生した! 41

2019-04-10 23:48:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タバタは壁に背中をつけ、ずるずると座り込んだ。体力の限界か。ムギコはせわしなくデッカーガンをリロードする。「アカチャンーッ!」BLAM!「アカチャンーッ!」BLAM!倒されるオイランドロイドに、素体ではない市民モデルが混じり始めた。予感が首をもたげる。工場の外から……入ってきている。 42

2019-04-10 23:50:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ムギコのニューロンに、十年前のあのNNK暴走の瞬間の記憶がフラッシュバックした。奇妙な実感があった。アレに似ていた。では最悪の事態はどうなる。オイランドロイドが暴走……?その数は?千?一万?十万……?「ネコチャン……!」ムギコは銃をリロードしながら、悔しさに歯を食いしばる。 43

2019-04-10 23:52:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クソーッ!」「ピガーッ!」タキはバールでオイランドロイドを殴り倒し、ムギコを一瞥した。「止められんのか……?」デッキにアクセスして、元凶を垣間見る事でもできれば、事態の把握もできよう。だがデッキが無い。「デッキが無い」タキは呟き、懐を探り、黒粉末のパケを取り出した。 44

2019-04-10 23:54:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何を!?」「まあ見てろ。いや見なくていい。ちょっと対処してくれ」タキはパケの封をあけた。そして黒い粉末……エメツ粉末を……吸引する!「ックーン!」これはいわば電子魔術。伝説のハッカー「ユカノ」が……「ユカノ・アン」?朦朧とする意識が名前を吹き飛ばす……0100101001001001…… 45

2019-04-10 23:57:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

00100101……01001……001……ゴーン。格子状の地平に漂いながら、無限の遠さから鳴る鐘の音が、電子聴覚に入ってきた。「……」彼は己の身体を見下ろした。来たぜ。彼は笑顔になった。エメツの力でニューロンをキックし、UNIXデッキのタイピングを用いることなく「コトダマ空間」に入り込む。 46

2019-04-11 00:01:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コトダマ空間。ハッカーが高速タイピングのトランス状態の果てに見出す電子地平。伝説の地。無限。輝く黄金立方体の世界。タイピング速度すら必要のない直接のアクセスがもたらす全能感に酔いかける。だが、その高揚はすぐに水をさされた。「何だ。こりゃ」彼は見た……底知れぬ、巨大な電子球体を。47

2019-04-11 00:05:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼の意識に反応したのか、球体の表面には魔術的なミンチョ・カタカナが浮かび上がった。それは「オイランマインド」という単語だった。 48

2019-04-11 00:06:27