二度目の夕焼け

虎bot @tora404_bot

世界が焼けているような真っ赤な夕日。そんな世界を見ながらビルから飛び降りた。体が動かない。かろうじて目が開きぼやけた世界に必死に焦点を合わそうとするけれどなかなか上手くいかない。しかし眼球だけは動くようであたりを見回した。あぁ病院かあ。目で確認出来たのか病院独特の匂いでわかったの

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かただの直感なのかわからないけど病院だとわかった。失敗してしまった事への安堵と喪失感と後悔、いろいろな感情が一気に押し寄せてきた。日々の生活に疲れたと言えば甘えだと言われるかもしれないけれどあの時の僕にはそうするしか道がないように思えた。だからあの時飛び降りようとした訳ではない。

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ただ夕日を見ていて、ただふっと意識が自分の中から離れその瞬間体も軽くなった。体中に巻かれた包帯とギプスで体中が固定されている、まるで飛び降りる前の僕の心を具現化したようだなあと少しおかしくなった。半年ほどで退院できた。あの時の事がまるで人事のように現実感がない。あれは夢だったのだ

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と言われても簡単に受け入れてしまいそうな程に、今は心がとても落ち着いていた。無理をしていたわけではないけれど、少しずつ少しずつコップの中の水が溜まっていったんだろう。これからは前を向いて歩こう。僕はそう決心し病院をあとにした。心のバランスはいつ壊れるのかわからない。強風が吹くから

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バランスを失うという事ではなく、多分ほんの些細なそよ風にだって僕らのバランスを崩されることがある。どこでどう気を抜くか、意識を外に持っていけるのかあの事があってからなんとなくだけれど分かるようになった。仕事も軌道に乗って結婚もできた。子供も出来て幸せな家庭も手に入れた。寝る前、電

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気が消え明日の事、これからの事を考えている時にふとあの時の事を思い出す。失敗してよかったと心から思えるし、失敗したであろう何か理解しがたい偶然の出来事に感謝をした。体が動かない。かろうじて目が開きぼやけた世界に必死に焦点を合わそうとするけれどなかなか上手くいかない。何人かの人が動

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いて見えるけれど良く見えない。「おじいちゃん！おじいちゃん！」そう聞こえた。そういえば入院していたんだな。みんな涙ながらに声を掛けてくれているこれ程幸せな最後があるのだろうか。孫が子どもが手を握ってくれているその暖かさと共に意識が遠くなり「おじいちゃん！おじいちゃん！」という声を

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子守唄にしながら深い眠りに着いた。本当に幸せな人生だったそう心から思いながら眠りに付くことができた。世界が焼けているような真っ赤な夕日。そんな美しい世界を重力に抗う事も出来ずにただ落ちていく。「あぁ夢だったのか」ものすごい衝撃とともにアスファルトを見ながら二度目の眠りについた。