【悪堕ちシナリオ】羽根っ娘悪堕ち

テーマ:外圧による変質と関係性の変化
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悪堕研究機構 @utakuochi

【悪堕ちシナリオ】羽根っ娘悪堕ち テーマ:外圧による変質と関係性の変化

2018-05-04 06:31:51
悪堕研究機構 @utakuochi

俺には彼女がいる。 彼女、といっても人間の女性ではない。 いや、こう言うと語弊があるので正確に言えば、彼女は魔物娘である。 背中から純白の翼を生やし、自由に空を飛び回る、美しい存在。 俗に「羽根っ娘」と呼ばれている種族だ。 人間と魔物娘が交際すること自体は珍しくはない。

2018-05-04 06:39:08
悪堕研究機構 @utakuochi

むしろ「魔物娘」と、「娘」という表現がなされているように、同じ種族内で雄が誕生することは非常に稀なため、基本的に彼女たちは人間の男性と結ばれ、子孫を残していく。 羽根っ娘の彼女も、この俺をツガイとして選んだというわけだが、その出会いは少々特殊なものだった。

2018-05-04 06:42:01
悪堕研究機構 @utakuochi

実は彼女は空を飛ぶのがど下手くそだった。 俺と彼女が出会ったときも、前方不注意というか滑空を制御できなかったのか、土手を歩いていた俺に勢いよくぶつかってそのまま仲良く二人一緒に川に落ちた。 自慢の翼が水に濡れて、そもそも泳ぎが苦手だった彼女が水面で慌てふためいていたのを覚えている。

2018-05-04 06:49:51
悪堕研究機構 @utakuochi

川から彼女を土手に引き上げてやると、正気を取り戻したのか、犬が水気を弾き飛ばすようにブルブルと全身を震わせた後、涙目混じりに 「責任……取ってよね!」 と俺に詰め寄って来たことを覚えている。 何の責任だ、と思ったが、俺自身羽根っ娘に興味はあったので彼女に付き合ってあげることにした。

2018-05-04 06:52:52
悪堕研究機構 @utakuochi

責任の内容はすぐに分かったのだが、俺は、彼女がうまく飛べるようになるまで手伝うことになった。 曰く、本来羽根っ娘は、背中の翼が程よく成長したタイミングで、親しい家族の導きの下、飛翔訓練を行うというが、彼女にはそういった親族がおらず、独力で飛翔しようと失敗ばかりしていたらしい。

2018-05-04 06:59:32
悪堕研究機構 @utakuochi

「それで、別に俺は空を飛べないのだが」 「いいのよ。ほら! 空を飛んでる私の姿を観察することで、どうやったらもっとうまく飛べるようになるかくらい分かるでしょ?」 という話だったのだが、その実、俺に見られることによって、羽根っ娘の本能を刺激してぐんぐん飛翔が上達する算段だったらしい。

2018-05-04 07:05:30
悪堕研究機構 @utakuochi

そりゃ、もちろん俺もアドバイスはした。 でも、彼女の飛翔訓練に付き添った時間の大半は、川の土手に寝そべって、彼女が空を飛ぶのをぽけーっと眺めていただけだった。 それにも関わらず、彼女の飛翔はどんどんと上手くなっていったし、俺も、上達を喜ぶ彼女の姿を見るのを嬉しく思っていた。

2018-05-04 07:10:10
悪堕研究機構 @utakuochi

空を自由に飛ぶ鳥のように、自由に飛翔できるようになった彼女。 その姿を寝そべりながら見ていた俺は 「いいなぁ、俺もお前みたいに空を飛んでみたいぜ」 なんてこぼしてみた。 その言葉を聞いていたのか、彼女は俺目掛けてダイビングしてこう言ったんだ。 「あら、あなたも羽根っ娘になってみる?」

2018-05-04 07:15:16
悪堕研究機構 @utakuochi

寝ていた俺に抱きつく形で、その豊満な胸を俺の顔に押し当てている体勢の彼女。 「ああ……俺にこんなに大きな胸が付くなら悪くない」 「もう、本気にしないでよ、ドスケベ」 なんて口では言っているが、こういうときは決まって俺に交尾を求めているのだ。 やれやれと、今日も彼女の要求に応じた。

2018-05-04 07:20:07
悪堕研究機構 @utakuochi

秋になり、どんどんと日が短くなって来た頃、彼女の身体に異変が起き始めた。 純白であった彼女の翼は、羽毛の先端から少しずつ黒く染まり始め、全体が灰色になり始めていた。 それと同時に、1枚、また1枚と羽根が抜け落ちていく。 気付いた頃には、もう彼女は空を上手く飛べなくなっていた。

2018-05-04 07:24:10
悪堕研究機構 @utakuochi

「羽死病」……羽根っ娘に極稀に発症する、自らの羽根がどんどんと死滅していく病気。 遺伝的なものなのか、感染性の病気なのかは未だ判明していないが、この病気の特徴は放置しておくと翼を背中の根本まで侵食される。 つまり、羽死病を発症した羽根っ娘は、最終的にそのまま翼を失うのだ。

2018-05-04 07:33:24
悪堕研究機構 @utakuochi

命に別状はない。 だが、羽根っ娘にとって自分の翼を失うことは、自分の存在意義を失うことに等しく、正気を失って失踪したり、自らの命を断ってしまう事例があるという。 彼女に、飛翔を教えてくれる家族がいなかったのも、もしやこういった裏の事情があったのかもしれない。

2018-05-04 07:38:16
悪堕研究機構 @utakuochi

彼女は、自らの翼の変貌を目の当たりにしながらも、俺との日常生活を崩そうとはしなかった。 「こんなの気分の問題だよ、絶対に打ち勝ってみせる!」 と気丈に振る舞って、毎日飛翔を続けていた彼女も、意図せず墜落するようになり、遂には羽ばたけなくなった。 俺には彼女に掛ける言葉がなかった。

2018-05-04 07:44:09
悪堕研究機構 @utakuochi

いや、むしろ彼女が翼を失うことを心の何処かで望んでいたというか……難しい感情だ。 俺は、彼女、空を自由に飛ぶ羽根っ娘と人間の間に、隔たりを感じていた。 その乖離が、彼女が翼を失うことによって、彼女が「人間」になることで解消されるのであれば、俺としては別段悪いことには思えなかった。

2018-05-04 07:48:08
悪堕研究機構 @utakuochi

だが、彼女は違った。 日に日に元気を失い、俺を見つめる瞳もどんどんと虚ろになっていくのが分かった。 俺との会話でも、「翼」とか「空」という単語、概念にすら触れなくなっていた。 口を開けば 「寒くなってきたね……」 「今日は温かいたいやきが食べたい」 といったことしか言わなくなっていた。

2018-05-04 07:54:32
悪堕研究機構 @utakuochi

年も暮れかけた、ある冬の日、俺は彼女の部屋を訪れることになった。 ベッドの上に腰掛け、部屋に入ってきた俺を見つめる彼女の虚ろな瞳。 彼女の翼は、未だ灰色とはいえ、ほとんど黒に染まり掛けており、いくつか羽根が抜け去った跡が見えて痛々しかった。 「ねぇ、今日はあなたに大切な話があるの」

2018-05-04 12:24:39
悪堕研究機構 @utakuochi

元々、大切な話があるということで訪れたのだから、別に驚くことでもなかった。 「私の翼が元に戻る方法を見つけたのよ」 「良かったじゃないか!」 思わず声に出して叫んでしまった。 なんだ、治す方法があるんじゃないかと、安堵していた。 逸る気持ちとは裏腹に、彼女はゆっくりと言葉を続けた。

2018-05-04 12:28:38
悪堕研究機構 @utakuochi

「驚かずに私の話を聞いてね」 そう言うと、彼女は懐から1枚の純白の羽根を取り出した。 「これ、綺麗でしょ? 私の羽根。こんなに醜く、汚くなってしまった私の翼でも、まだ、こんなに綺麗に残っていた羽根があったのよ」 羽根の根元を摘んで、俺の方へと向けた。 「ねぇ、私と契約してほしいの」

2018-05-04 12:31:44
悪堕研究機構 @utakuochi

「契約?」 突拍子もない単語に、話の先が見えず困惑した。 彼女は困惑している俺をよそに、極めて冷静に、そして穏やかに、全てを悟っているかのように俺に説明した。 現在彼女が患っている羽死病は、結局抗う手段がなく、翼を元に戻すには背中の翼ごと再生させるしかない。

2018-05-04 12:46:28
悪堕研究機構 @utakuochi

その再生方法の初手が、自分のクローンを作ること。 クローンとはまた非現実的な話に聞こえるが、曰く、彼女の翼と同等の翼を持つ羽根っ娘がいれば、彼女の翼は完全に元の状態に復活できるらしい。 「つまり、ドナーを探すということなのか?」 「ううん、違う。私と同じ羽根っ娘を創り出すの」

2018-05-04 12:51:01
悪堕研究機構 @utakuochi

「創り出す? どうやって……」 「それが、契約の話。私と契約して、あなたも羽根っ娘になるの」 にわかには信じがたいが、話が見えてきた。 要約すると、まず、何らかの方法で俺自身が彼女と同等な羽根っ娘になる。 そこから、俺と彼女とで身体の構造を同調させて、彼女の翼の再生を図る。

2018-05-04 13:00:13
悪堕研究機構 @utakuochi

「そんなことが……できるのか……」 「ええ、この羽根と、この子がいればね」 彼女は下腹部をさする動作を見せた。 「まさかお前、子供を……」 「あら、別に今更驚くことじゃないじゃない。人間と違って私達は産卵の頻度も個数も多いの。この子だって、何人目か分かったものじゃないでしょう?」

2018-05-04 13:04:46
悪堕研究機構 @utakuochi

彼女の言葉に俺は何も言い返せなかった。 元々、人間と魔物娘では子作りに対する考え方というか、倫理観が全く異なっていて、彼女の場合、それが有精卵であろうと無精卵であろうと、毎日のように大量に産卵するから、どの子を育てるのか、という“選択をして良い”という考え方が根底にある。

2018-05-04 13:11:03
悪堕研究機構 @utakuochi

「……そこまでしないといけないことなのか」 そこまで、とは、彼女の、いまから生まれてくるかもしれない子供を犠牲にするというだけではない。 俺が、人間をやめて羽根っ娘にならないと解決しない問題なのか、という意図も込めていた。 その非現実的な方法に、少なからず恐怖していたこともある。

2018-05-04 13:15:39
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