日高六郎『現代イデオロギー』読書メモ集
- arishima_takeo
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ファシズムが真に恐るべき支配機構であるのは、それがある程度民衆の自発的な支持を獲得することができるという点にかかっている。by日高六郎『現代イデオロギー』
2019-05-01 20:20:14「ある学者は、自己の業績が左右いずれのがわからも何の注目も寄せられていないことを、むしろ自己の学問的純粋さのせいであるかのように錯覚している」(日高六郎『現代イデオロギー』)。笑った。
2019-05-02 20:49:51政治と文学は、人間活動の二つの極の象徴である。ひとは、朝に起き、昼に食事し、夜床につく。またひとは、歌おうとし、描こうとし、真実を求めようとする。前者においては、行動は平均化し、習慣化する傾きを持つ。後者の行動においてはつねにある到達しがたい高さへの憧憬が働いている。by日高六郎
2019-05-03 08:36:55「もし人が横ばいする蟹をてのひらの上に守とりあげて、お前は節足動物、甲殻類、十脚目だと言いきかせるならば、蟹はたちまち泡をふいて「おれはおれ、そんなものではない、類のないおれだよ」と答えるにちがいない」(日高六郎『現代イデオロギー』)。いや、そもそも喋んねーだろ。
2019-05-03 10:58:07「類のないおれ」になることは必要である。しかし「類のないおれ」とは本当は科学の教える通りのことを信じて不気味に動かないでいる石ころのようなものであるかも解らない。by日高六郎『現代イデオロギー』
2019-05-03 11:06:38「一方の南京松は苦悩のあまり、焼酎を一気飲みし、蟹を食べすぎたためにペストにかかって死んでしまう。主人公が焼酎と蟹で死ぬというのも不思議な気もするが、作者が南京松の使い道に迷ったため殺してしまったのであろう」(山下泰平『まいボコ』)。使い道の分からない登場人物は殺す。小説指南一。
2019-05-03 13:21:53「たとえば音楽とひとはただひと口に片づける。しかしジャングルの奥深くに陰欝にひびく皮太鼓の単調なリズムもまた音楽であろうか」(日高六郎『現代イデオロギー』)。そりゃ音楽だろう。なに言ってんだ。
2019-05-03 15:24:59生活記録の情緒性過剰を批判して、もっとドライな文体で書けないものかと言った理論家にたいして、「情緒性過剰というノリで、やっとサークルのメンバーがばらばらにならずにくっつくことができるのです」と答えたある実践家の言葉が忘れられない。by日高六郎『現代イデオロギー』
2019-05-03 15:52:24日高六郎『現代イデオロギー』読了。なんの面白みもない良心的進歩的知識人事と捉えられがちで、まあ進歩で良心なのはそうなのだが、割といい。特に、マルクス主義者たちはデモクラシーの論理学は理解しても心理学には届かないとして召喚されるベルクソン論は今日の感情化社会にとっても無縁ではない。
2019-05-03 18:11:06論理学ではなく心理学の重視には、勿論フロムの翻訳仕事を透かして読めるが、それだけでなく、仏革命もないのにデモクラシーの観念だけ輸入してもしょーがない論や戦争経験もないのに反戦説教だけされてもしょーがない論と連続していて、案外、やりたいことが一貫して読める。
2019-05-03 18:13:46あと、日高って社会学者なのに『近代文学』同人なんだよな。ここが面白い(ほか誰かいたっけか?)。年齢的にもちょっと浮いているのでは。白樺派でいうと有島武郎枠疑惑。
2019-05-03 18:15:48しかし、どんな書き手でも割にいえることだけど、初期の作品というのはたしかにこなれてないし文章的に下手くそなんじゃないかと思うんだけど、それでも、ある種の熱というか、書かねばならぬ気迫が感じられて、非常に代え難いアウラを帯びちゃうんだよね。
2019-05-03 18:24:52