ヒモきみくん(28)

いぬ @_c8159

バイト生活のきみくん(28)(いわゆるヒモ)(わたしは同い年の正社員)とカウンターでラーメンか牛丼たべたいなァ

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『給料入ったし飯食いに行こ』「お〜！！何食べる？」『決めてええよ』「じゃあ〜…牛丼！」『いっつもそれやん 寿司か焼肉とかは？』「そんなご馳走だめやで お金貯めよう？」『おう』きみくんは給料入るとその分使うから貯金はない。服とか靴はいいもの身につけてるから到底ヒモには見えないけど。

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牛丼屋のカウンター並んで『南の島とか行きたいわぁ』「セブ？」『それかサイパンとか、ま〜今度連れてったるわ』「死ぬまでにね」『おん』夢のまた夢の話をしたりね

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この日のお会計はきみくんがしてくれて牛丼屋のあとコンビニ行って缶ビールを1本ずつ買って公園で飲むんだけど(お金ないから車ないので徒歩)『ほんまごめんなぁ』きみくんは急に落ち込む

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「なにが？(笑)」『嫌やろこんな生活』「嫌じゃないよ〜 そろそろ帰ろっか」話逸らしたいわたしと『親に結婚しろ言われへん？』至って真剣なきみくん。「急になに〜 ほら立って！帰ろ！」『逸らすなや話』「…いやだこの話」『なんで』「きみくん俺とおらん方がええとか言い出しそうやから」

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言ったあと何も言わんきみくんにいらんこと言ったかな…と不安になったんだけど『言えたらええねんけどなぁ』きみくんがぽつり呟いて『言われへんねん お前おらな多分生きてないで俺』ってまさかの。「…何言ってんの(笑)」『お前は離れてかんといて』「…当たり前」『帰ろか』きみくんの本音をきけて

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わーいわーい！なんだけど後日会った友達にこの話をすると「典型的なヒモじゃん」一蹴されてがびん…「でもさ！毎日遅くまで頑張ってんねんで？」(きみくんのバイトは夜間の工事現場的なあれ)「朝は寝てるんでしょ」「まぁ…」「あんた名義の部屋でしょ」「まぁ…」「食費は？光熱費は？」「…う゛」

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「やめたら？いいの顔だけでしょ」「顔だけじゃない！」「じゃあなに？優しい、とか？」「優しい！」「それで生きてける？」「…う゛」「結局人生金だよね、まあ別にあんたがいいならいいけど」友達に正論ぶちかまされてモヤモヤしたまま帰ると『なぁ』「ん？」『これ欲しい』ゲームのチラシ見せられて

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なんかもうアレだな、と思っちゃって「友達の家泊まりにいってくる…」思いついたそのままを言って鞄にいるものを詰めると『今から？しかもそんなでかい鞄で何日泊まるん』一応は気にかけてくれたみたい。「1週間くらい…？わからん」『長ない？』「急に決まったの」『ほーん 楽しんでな』

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「うんありがとう…」『食うもんあったっけ』「なにかしらあるんじゃないカップ麺とか」お金置いとこうか？て言おうとしたけどあぶないあぶない。これじゃ友達の言う通りヒモだ………『2つしかあらへん死ぬで俺』いつの間にか棚を確かめたきみくんは『なぁなんか作ってってや チンならできるし』

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わたしが1週間いないことより自分の食料が1週間ないことが問題みたいだ。「やだ時間ない」『頼む』「やだ なんか買って食べて」『金ない』「…もう知らない どうにでもなっちゃえ！ばか！」『どしたんえらい反抗的やん』「反抗ってなに わたしきみくんのなんなの？財布？もうやだ」『なんお前』

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『やっぱ嫌なんやん』「…」『もうええわ 俺が出てく』「え、まって、どこ行くん」『俺かて行くとこくらいあるし』「え、でも、」わたしたちは大阪から東京に来てるから地元ではなくてわたしは大学の友達とか職場の同期がいるけどきみくんはいないはず…「ネカフェとか行くんやったらお金かかるし、」

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『それぐらいあるわ 馬鹿にしてんの？』「そんなつもりは、」『正社員のお前に比べたら俺なんかクズやろうな』「ちが、」『女の金で飯食うて部屋借りて？俺みたいなん彼氏やったら恥ずかしいよな』「そんなん言うてな『ほなね』待っ、」『離して』「やだ、どこ行くんかおしえて、」『離せ、て』

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「帰ってくる………？」『おん』「絶対？」『うん』「……やだ」『頭冷やしてくるだけ』「……」『ほんまやって 前も言うたやんお前おらなあかんねんって』「…うん」『財布おもてるわけちゃうで？けどそんな言い方してもうたかもしらん ごめんな？』

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「わかった 絶対帰ってきて」『うん』「どこおるかも教えて」『うん』「これ持ってって」財布からクレジットカードを抜いて渡すと『いらん』「でも、」『これ借りたらなんも変わらんやん』「そっか…でも危ないことに手出さんでね」『分かっとる』「…気をつけて」『…俺お前が1番大事やから』

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きみくんが出て3時間、いまだ連絡はない。わたしはきみくんの交友関係を全く知らないから連絡する相手もいない………きみくんの友達に紹介してもらったことないから、恥ずかしいと思われてたのはわたしの方かも。

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「バイト先も知らんし…なんも知らんやん」夜間の工事現場ってことだけ聞いてて場所も知らんければ連絡先も知らない。ほんとに工事現場かも分からん………思い返せばめちゃくちゃ綺麗な格好で出てくじゃん。作業着なんか家で見たことないじゃん………

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きみくんからの連絡を待ってたら携帯を握りしめたまま寝ちゃってて仕事用のアラームで目が覚めた。いつもならきみくんもこのアラームで起きてなにをするわけでもなく、朝ご飯を食べるわたしの前に座って、ドタバタ準備するわたしを目で追って、「いってきます」『気ぃつけて』見送ってくれるのに

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そんな当たり前がなくてせっかくした化粧もぼろぼろに崩れる。もう家出なきゃ間に合わないのに座り込んだ玄関から立ち上がれなくて「ごめん休むって伝えて」同期に連絡するのがやっとだった。こんなことで会社休むなんてありえないと思ってたけどきみくんの存在はめちゃくちゃ大きかったみたいだ

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1日玄関にいて泣き続けて頭は割れそうに痛いしまぶた重いし鼻はつまりすぎて苦しいし。今もしきみくん帰ってきたら最悪だなぁ100年の恋も冷めちゃうな、なんて考えてたのにこの日もきみくんは帰ってこなかった。

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きみくんが家を出て3日目の今日、22時になって家を出た。その辺の工事現場で探してみよう。生きてるのを確認できればそれでいいと無謀な賭けに出た。迷惑やと分かりつつ工事現場があれば「横山て人いますか」聞いて回ったけど「知らないねぇ」欲しい答えはなくて

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気づけば日付がかわりそうで2時間も歩いてたから足は棒だし、寒いしまた涙は出る。ずっとかけてる電話はコール音だけが聞こえてもうこのまま死んでもいいかも、なんて気分はもう悲劇のヒロイン。「おねーさん危ないで？なにしてんの」「…」「えっ泣いてるやん！どうしたん？」「人を探してます、」

いぬ @_c8159

「人探し！？」「はい」「男？女性？」「男です、彼氏なんですけど、」「やからそんな泣いてんのか…喧嘩したとか？」「いやまぁ色々ありまして、」「ほう…その人の顔写真とかある？」「あります、」カメラロールを遡ってきみくんの写真を見せると「んー…俺は知らんなぁ 友達にも聞いてみるわ」と

いぬ @_c8159

ものすごく協力的で画像をその人の携帯に送る。「顔が広い友達おるからラインしとくな？」「ありがとうございます…」「すぐ返事はこんやろうからおねーさんの連絡先聞いてもええ？」「あ、はい…」電話番号と名前を言うと鳴らしてくれて「マルちゃんって登録して♡」とわたしとは正反対の明るい顔で

いぬ @_c8159

ニコニコしてる。「大丈夫やで絶対見つかる！」「何を根拠に…」「最近寝れてる？」「…いえ」「ご飯食べてる？」「少しだけ…」「初めて会った俺でもおねーさんの元の顔がそんなんちゃうって分かるで？」「ブスですよね…」「いやいやっそうゆうことちゃうくて！そんなになるまで想ってるなら絶対見つ