茂木健一郎(@kenichiromogi）さんの連続ツイート第2209回「東京藝術大学の本格志向」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート２２０９回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、「東京藝術大学」について。

茂木健一郎 @kenichiromogi

私の小説『東京藝大物語』の一部をツイッターで毎朝配信している。なかなか多くの人には読んでもらえないし、でも、小説の雰囲気だけでもと思って、ツイッター連載みたいな試みなのだけれども、数年間東京藝大で教えた経験を、一年に凝縮した小説である。

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ぼくは、いろいろな美大の方や学生たちとやりとりする機会があって、その中で感じたのは、東京藝術大学は世間的には最難関と言われていて、２浪３浪は当たり前とも言われているけれども、学生さんの一番の特徴は、テクニックの高度さということよりも、藝術における本格志向なのかなと思う。

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現代において、アートや関連分野で生活し、成功する道はたくさんあると思う。その中には、現代とタンゴを踊ることも必要になる部分もあるだろう。しかし、東京藝術大学の学生さんは、現代における成功はもちろんだが、美術史における位置づけという本筋を意識して本格志向の人が多いように思う。

茂木健一郎 @kenichiromogi

レオナルド・ダ・ヴィンチが卓越した技巧を持っていることは間違いないし、ヨーゼフ・ボイスの社会彫刻の概念が魅力的なのはもちろんなのだが、そのような古典から現代アートまで、とにかく美術史における本格を志し自分もできればなにかひっかき傷を残したいと考えているのが東京藝大の学生だと思う。

茂木健一郎 @kenichiromogi

東京藝大の学生さんたちが本格志向だというのはおそらくは良いことで、何事も軽薄な現代においては貴重なことだし、出家して修行している人たちのような側面もあり、美大を目指す中高生は、東京藝大はそういうところだと知ってインスパイアされるかもしれないから、がんばって欲しい。

茂木健一郎 @kenichiromogi

一方で、東京藝大の学生が、現代の軽薄さから浮世離れした本格志向という側面があることは、祝福であると同時に呪いでもあるように思う。誰もがレオナルドの超絶技巧や、ボイスの概念創始力を持つわけにはいかないからである。月を見上げてにゃあにゃあなく猫ちゃんになっちゃう可能性もある。

茂木健一郎 @kenichiromogi

『東京藝大物語』の一部をツイッターではっつけていて思うのは、あああの数年間は楽しかったなあということと、彼らに幸あれということで、実際に生活を成立させるのは大変だと思うけれども、現代において本格志向こそが類稀なることだから、類稀なる存在であることはそれなりに覚悟がいるのだと思う。

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以上、連続ツイート２２０９回「東京藝術大学の本格志向」をテーマに、７つのツイートをお届けしました。