『雪が融けたら春になる』連作twnovel(春)

僕は雪。 妹は春。
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とおる6th @windcreator

春が来ない。ここでいう春とは季節でも、恋が実ることの比喩でもない。僕の妹の名である。そう言うと僕の名前は夏か冬だろうと思うだろうが、僕の名前は雪なのだ。妹が親愛する漫画によれば「雪が溶けたら春になるの!」という。妹よ、僕を溶かすな。 #twnovel 雪お姉ちゃ~ん! 春が来た。

2010-03-01 12:33:55
とおる6th @windcreator

春が来た。春と言っても、季節でも恋が実ったことの比喩でもない。僕の妹だ。北の国から上京した僕の部屋を拠点に、春休みで都会を満喫するらしい。久し振りに見る妹は、すっかり大人びてしまった。この春からは高校生。同じベッドで二人収まるか? #twnovel 雪姉ちゃんもスッカリ大人だね!

2010-03-07 06:20:52
とおる6th @windcreator

春が来ている。ここで言う春は、恋人や合格通知の暗喩ではなく、十も離れた妹の名だ。春休みは都会で遊びたいと僕の部屋に転がり込み、気怠い僕を連れ回し、当然何もかも僕がお支払いの日々だ。文句を言おうにも、相手は誰もが待ち望む“春” #twnovel 雪姉ちゃん大好き! 春には敵わない。

2010-03-13 12:32:38
とおる6th @windcreator

春が眠っている。ここでいう春は、季節のことでもなかなか訪れない運命の出会いでもなく、妹の名だ。こうして同じベッドの隣で眠る妹の寝顔を見ると「春眠、頬が緩む」かな。懐は気温とは逆に、寒くなる一方だけど。 #twnovel う~ん、雪姉ちゃ~……。寝言に手を握る。雪姉はここにいるよ。

2010-03-18 05:55:20
とおる6th @windcreator

春がお休みだ。ここでいう春は以下略。つまり、妹は風邪をひいてダウンだ。僕としてはどこにも行かなくて楽だと思っていたのだが、看病というのは予想以上に大変だ。料理だけは自信がある僕だが、病人食にはとんと疎い。 #twnovel 雪姉ちゃんのおかゆ、おいしーよ。まぁ、一晩掛けたからね。

2010-03-20 08:18:19
とおる6th @windcreator

春が咲く。ここでいう春は、季節の春だ。白、黄、桃、赤。一気に明るくなった春は、雪解け水を吸って花ひらく。今は16の妹も、おしゃれしてお化粧して、やがて恋をして、花ひらく。今だけだ、26の僕を頼ってくれるのは。 #twnovel 雪姉ちゃん、夏休みは海に行こ! うん、一緒に行こう。

2010-03-27 11:21:19
とおる6th @windcreator

夢の中 出てきてくれないあの人に 文句のひとつも言いたい春だ

2010-03-27 15:23:00
とおる6th @windcreator

春が泣いている。今よりずっと幼い。歳の離れた僕を呼ぶ声は、次第にかすれ、遂にはただの音の連なりに成り下がる。ういえやぁあ~ん。泣き声は徐々に力を失い、終に春は力尽き……諸刃の歓喜が僕を切り刻む。 #twnovel 雪姉ちゃん、今すっごくうなされてたよ? 甘いモノを食べ過ぎた罰。

2010-03-29 00:27:02
とおる6th @windcreator

春が冷たい。風まで冷たくて、まさか季節が四月一日に向けて全力でボケているのだろうか。そんな僕の全力のトークにも、春は生返事だ。左から右、上から下へと華麗に受け流す妹、春。仕方なしに僕はまたコンビニに足を運ぶ。 #twnovel 雪姉ちゃん、大好き! 僕ではなく、アイスが、でしょ?

2010-03-29 23:17:06
とおる6th @windcreator

春が燃えている。十も離れたピカピカの女子高生。その名の通りに美しく咲き誇る僕の妹、春。そろそろ実家に帰らなきゃならない彼女の、目下の悩みは[姫姫姫姫姫]でこの先も進めるだろうかということで、それ僕のゲームなんだけど。 #twnovel 雪姉ちゃん弱すぎっ! それは、育て方が悪い。

2010-04-07 14:17:00
とおる6th @windcreator

春が沈んでいる。妹の春にとって、都会の気ままな一人暮らしである僕の部屋から田舎で実家な我が家に帰る事は沈むに値するらしい。僕のベッドで丸まる春。「春は、好きな人とかいないの?」無言の中に答がある。あの買い物も彼の為なのだ。 #twnovel 雪姉ちゃんは、いる? 無言は、便利だ。

2010-04-07 15:30:59
とおる6th @windcreator

春が去っていった。太陽のように周囲を明るくする僕の妹、春。都会で存分に僕を振り回した彼女は、実家で女子高生のお勤めだ。僕としては、急に冬の寒さが戻ったようで人肌恋しい。女の子でも呼んで添い寝しようか。 #twnovel 雪姉ちゃん! 私、一目惚れしちゃった! 電話を持つ手が軋む。

2010-04-12 19:09:51
とおる6th @windcreator

春を追いたい。一度でも暖かさを感じてしまった今は、一人寝が寒過ぎる。6年も帰っていない実家は正直気が重い。連日「一目惚れした彼」についてメールしてくる春に会ったところで、余計にその後の寂しさが募るだろう。それでも、妹に会いたい。 #twnovel えっ! 雪姉ちゃん帰ってくるの?

2010-04-16 17:14:43
とおる6th @windcreator

春が鼻歌を唄ってる。何の因果か、季節外れの雪と共に僕は懐かしの実家に帰って来た。GW返上の有休に上司は首を傾げたが、すんなり通った。変わらない実家と優しい両親。可愛い妹、春。無口な兄。早々に食卓を離れて春の部屋で会話に没頭する。 #twnovel 雪姉ちゃん元気ない? どうかな。

2010-04-18 18:13:14
とおる6th @windcreator

春は知らない。僕自身、未だによくわかっていない。事実は、僕が家を出たということ。原因は、遠く霞む記憶。「雪、少し話そう」無口な兄は、言葉少なに話す。何を話したか、記憶が淡い。身体が熱い。そうだ、僕は兄から逃げたのだ。 #twnovel 雪姉ちゃん、また帰って来る? 春のためにね。

2010-04-21 18:51:11
とおる6th @windcreator

春が遠い。季節ではなく妹の名だ。僕は一足早い有休で6年振りに実家に行き、今はまた雑多な都会に帰ってきた。忘れていた『私』の記憶が、静かに胸を締め付ける。『私』は、もういない。僕は僕だ。遠い妹の初恋を見守る、僕だ。 #twnovel 雪姉ちゃんって好きな人いる? いたよ、無口な人。

2010-04-23 16:10:02
とおる6th @windcreator

春が来た。たぶん、春だ。ここでいう春は恋が実ることの比喩でも、妹の名でもない。季節の春だ。季節のバトンリレーもようやく夏に向けて走りだした。僕は春らしく淡いスカートを穿いてみた。何年振りかわからない。姿見の前で、くるり。 #twnovel 雪姉ちゃんがスカート!? 似合うでしょ?

2010-04-24 15:10:23