ギア・ウィッチクラフト #5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。フェイタルです」「ドーモ。ブラックヘイズです」隣り合う針葉樹頂点に直立した二人のニンジャはアイサツし、同時にオジギした。砕けた月は白く輝き、シュヴァルツヴァルトの夜の輪郭を照らしていた。すぐにカラテ戦闘が始まる事はなかった。フェイタルはまだ襲いかからなかった。 1

2019-05-08 22:04:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ブラックヘイズはじっとフェイタルを凝視し、出方を伺っている。フェイタルは言葉を放った。「久しいな。お前をロンドンで見た時、大昔の事を意外にもおぼえているものだと、自分に驚いた」「そうか」ブラックヘイズは腕組み直立姿勢。あらゆる行動への警戒を怠らない。 2

2019-05-08 22:07:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「今までお前は影も形も無かったな。それがここのところ、やけに私の行く先々に現れる。この十年何をしていた?」「……」ブラックヘイズはしばし沈黙。やがて逆に問う。「お前は俺に詳しいのか?」「御挨拶だな、お前」フェイタルは苦笑した。「自分がどこの誰かもわからないか」 3

2019-05-08 22:12:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それで仕事には困らんさ」と、ブラックヘイズ。フェイタルは鼻を鳴らす。「お互いいつまで、しがない傭兵稼業をやる?」「傭兵……ちがうな。俺はカタナ・オブ・リバプール、強行偵察隊のニンジャだ。仕事のせちがらさは、否定せんが」フェイタルはまだ攻撃しない。ブラックヘイズは葉巻をつけた。4

2019-05-08 22:19:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だが……そうだな……俺は神と共にあるぞ、ヤナマンチよ。データストリームの聖なる響きが俺を祝福する。祈っていればカネも入る」「幸せそうでなによりだ。洒落た手脚も手に入れて」「負債でもあるがな。……かかってこんのか?ならば一服させてもらうか」ブラックヘイズの葉巻が赤く明滅した。 5

2019-05-08 22:22:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前は変わったな」「時代は変わった。プロフェッショナルとは変わるものだ。生き残る為にな。変われない奴から死んでゆく」ブラックヘイズはフェイタルをじっと見た。フェイタルは睨み返した。やがてブラックヘイズは呟いた。「……俺は変わる」そして葉巻を指で弾いた。「イヤーッ!」 6

2019-05-08 22:28:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フェイタルが跳んだ。彼女は白い風となり、空中の葉巻を切り裂き、ブラックヘイズのもとに至った。KABOOM!背後で爆発した葉巻の光を受けながら、フェイタルは回し蹴りを繰り出した。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ブラックヘイズは後ろへフリップ・ジャンプする!そして空中に着地した! 7

2019-05-08 22:30:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それは木から木へ張り渡された微細な糸だ!フェイタルのニンジャ視力はその細工を見抜いており、自らも躊躇せず、木の頂点からブラックヘイズを追ってさらに跳んだ。「イヤーッ!」「イヤーッ!」二者は糸に着地し、ワン・インチカラテ応酬を開始した!「イヤーッ!」「イヤーッ!」 8

2019-05-08 22:31:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

当初互角な打ち合いを繰り広げたフェイタルとブラックヘイズであったが、やがてブラックヘイズが押し始めた。サイバネフレームに置換した四肢は彼のカラテを生身以上に循環させる!「イヤーッ!」「イヤッ!イヤーッ!」二連打撃!「グ……!」フェイタルは防御するが、糸の上でバランスを崩す! 9

2019-05-08 22:34:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」更に一撃!跳び来たったブラックヘイズがジャンプパンチで追い打ちをかけると、フェイタルは足場を失い落下した!ブラックヘイズは更なる葉巻爆弾を投下!KA-BOOOM!「AAAAARGH!」生じた爆炎の上を、影が跳ねる!木から木へ蹴り渡り、上がってくる影が! 10

2019-05-08 22:36:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジグザグのトライアングル・リープで再び樹上へ跳び上がったフェイタルの毛皮が、月明かりをうけて白く輝いた。既に彼女は獣人態にヘンゲを終えていた。空中で高速回転、勢いを乗せて、身構えたブラックヘイズに上から襲いかかった!「ゴアアアオオン!」爪斬撃!ブラックヘイズ防御! 11

2019-05-08 22:38:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゴアアアア!」さらに空中蹴り!ブラックヘイズ防御!糸の上を後ずさる!フェイタルはクルクルと回転し、足の爪を振り下ろした!爪は糸を切断!二者は共に落下!上下逆さとなり落下しながら、ワン・インチカラテを応酬する!「GROWL!」「イヤーッ!」「GROWL!」「イヤーッ!」 12

2019-05-08 22:40:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAACK!大地に着地した二者はブレイクダンスじみたウインドミル回転と共に蹴りをぶつけ合った。土が吹き飛び、岩が砕けながら宙を舞う。攻撃しながら同時に起き上がった二者は再びぶつかり合う!「GROWL!」「イヤーッ!」「GROWL!」「イヤーッ!」「GROWL!」「イヤーッ!」 13

2019-05-08 22:42:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

今度はフェイタルが押す番だった。鋭利な爪を生やした巨大な腕がブラックヘイズを執拗に襲った。ブラックヘイズは洗練されたカラテによってその勢いを殺し、いなし、弾き返したが、獣人態のフェイタルは止まらなかった。「GROWL!」「グワーッ!」そして一撃!肩が裂ける! 14

2019-05-08 22:46:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「GROWL!」「イヤーッ!」続く一撃!ブラックヘイズはヘイズ・ネットを至近距離から射出して腕に絡め、フェイタルの左腕と己の右腕を縛り合わせて止めた。「GROWL!」襲い来た右腕を左腕で弾き返した。「GRRRRRR!」牙の並んだ恐るべき口が開く!頭を齧り取る無惨な致命攻撃だ! 15

2019-05-08 22:48:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ブラックヘイズは肘を曲げ、左肩ごと敢えてフェイタルの口の中へこじ入れて、餌となる運命を防いだ。「物騒なマネを。俺はそこまで頑丈ではない」ブラックヘイズは皮肉めかして言った。キュイイイイ。キュイイイ。サイバネアームのモーターが悲鳴をあげ、火花を発し、煙が生じた。16

2019-05-08 22:51:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「GRRRR……!」「ヌウッ……ヌウウーッ!」KBAM!関節部が更にスパークした。ブラックヘイズは両脚を踏ん張り、生身の体幹から全身にカラテを行き渡らせ、全ニンジャ膂力を奮い立たせた。「AAAARGH……!」齧られかけたまま、獣人を……持ち上げんとす!ゆっくりと地から離れるフェイタルの足! 17

2019-05-08 22:54:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイイヤアアーッ!」瞬間的なカラテの爆発!アイキドー高レベル段位所持者じみて、なお喰らいつくフェイタルの勢いを利用したかのようにブラックヘイズは投げ飛ばした!「グワーッ!」フェイタルは地面に叩きつけられ、転がり、受け身を取ろうと試みて、木に背中を衝突させた!「グワーッ!」 18

2019-05-08 22:59:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

勢い余って、ブラックヘイズもまた、濡れた草の上に倒れ込んだ。「……ハーッ……!」バシバシと音が鳴った。サイバネフレームのスパーク音だ。彼は地面に手をつき、身を起こそうとして、再びスパーク。難儀する。フェイタルは咳き込み、木を破壊しながら立ち上がる。「……生意気な……!」 19

2019-05-08 23:02:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「生意気だと?俺は必死なだけだ……!」ブラックヘイズは答えた。「馬鹿力めが」キュイ。キュイイイ。左腕が震え、手が不安定に開閉する。「チッ。イレギュラーなダメージだ。どうしてくれる」「いい気味だな」フェイタルは挑発した。「お前の事などどうでもよかったが、だんだん腹が立ってきたぞ」20

2019-05-08 23:07:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「知った事ではない」ブラックヘイズは荒い息を整える。フェイタルは獣人態から再び人間の姿に戻っていた。彼女は一歩踏み出す。二歩。そして足を止める。遮るように、木々の間にヘイズ・ネットが張り渡されている。ブラックヘイズは何か言おうとする……BRRTT……BRATATATA。背後で銃声、戦闘音。 21

2019-05-08 23:13:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(一の太刀!二の太刀!)(覚悟せよ邪悪騎士めが!シュヴァルツヴァルトに……)ブラックヘイズは肩を落とした。彼は後ずさり、フェイタルを指さす。「いいか。貴様」厳しい睨み。それを睨み返すフェイタルの美貌は、怒りによって神々しく輝くようだ。ブラックヘイズは踵を返し、走り去った。 22

2019-05-08 23:17:10