岩波『科学』2019年6月号 黒川眞一・谷本溶「宮崎早野論文批判補遺(1)」より|「比較出来ないものを比較している」宮崎早野論文の問題(2019.5.28作成)

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asadori_Qly @AsadoriQ

岩波『科学』2019年6月号(実は3月号からまだちゃんと読んでいない論文もあるし4月号の濱岡豊「個人線量測定論文の諸問題---批判的レビュー」は必読だけど)の黒川眞一・谷本溶「宮崎早野論文批判補遺(1)」から一つだけ。

2019-05-28 08:26:34
asadori_Qly @AsadoriQ

「1. 平均値を放射線防護における線量拘束値として用いることは誤りである」について。宮崎早野第一論文は、個人線量は周辺線量に比例し、係数は0.15±0.03で「政府が採用している係数0.6の約0.25倍である」「日本政府は・・・個人線量を3〜5倍過大評価していることになる」と述べている。

2019-05-28 08:30:33
asadori_Qly @AsadoriQ

これが比較すべきでないものを比較していることはこれまでも指摘されてきた。危機管理の基準は、「平均」をもとにまあ半数は(というと厳密ではないけど分布が対称であるとして)基準を超えていてもいいよね、という話にはならないことは普通にわかる。

2019-05-28 08:33:22
asadori_Qly @AsadoriQ

実際、黒川・谷本補遺では、ICRP勧告101aの「公衆の防護の目的」で導入される「代表的個人」は「集団から無作為に抽出された人が比較的大きな線量を受ける確率がおよそ5%以下であるように定められるべきであるという勧告を確認している。したがってICRP勧告を基準とするなら・・・

2019-05-28 08:36:08
asadori_Qly @AsadoriQ

「第1論文で行わなければならないことは、係数の平均あるいは中央値と政府の決めた0.6という係数を比較するのではなく、係数の95パーセンタイル値と政府の決めた係数を比べる」(黒川・谷本)ことになる。

2019-05-28 08:37:41
asadori_Qly @AsadoriQ

つまり「「日本政府は・・・個人線量を3〜5倍過大評価していることになる」」という宮崎早野論文の主張は「まったくの間違いであることになる。」

2019-05-28 08:38:26
asadori_Qly @AsadoriQ

黒川・谷本が言うように、「遵守されるべきはほとんどの住人が線量拘束値を超える被曝をしないことであり、95パーセンタイル値が拘束値以下になることが確実に守られるべきである。」

2019-05-28 08:40:35
asadori_Qly @AsadoriQ

ICRPの基準が緩いとの批判が少なくないことを指摘しておこう。それでもICRPは参照される基準となっている。宮崎早野論文はその基準を無視して、比較してはいけないものを勝手に比較している。

2019-05-28 08:47:02
asadori_Qly @AsadoriQ

しかしこれ、上西先生が指摘していた、裁量労働制をめぐる厚労省の主張の根拠が「一般労働者では法定時間外労働が最長の1日の時間数をとり、裁量労働制の場合は普通の1日の時間数をとっていた」というのとそっくり。

2019-05-28 08:49:07
asadori_Qly @AsadoriQ

岩波『科学』の2019年2月号から6月号までは科学のためにも、必読だし保存しておく価値がある(逆説的だが阪大の菊池氏が岩波『科学』を科学を捨てたと批判していることからも『科学』の重要性が伺える)。

2019-05-28 08:53:50
Yoh Tanimoto @yoh_tanimoto

岩波『科学』6月号 iwanami.co.jp/kagaku/KaMo201… に黒川眞一さんと書いた4月号の記事の補足を載せました。4月号では、宮崎早野論文で99パーセンタイルとされるものが実際は90パーセンタイルであると推測される、と書いたのですが、それをさらに補強する証拠と、そもそもこれがなぜ問題なのかについてです。

2019-06-02 19:58:23
Yoh Tanimoto @yoh_tanimoto

第2論文 iopscience.iop.org/article/10.108… の90,99パーセンタイルについてはここ togetter.com/li/1330735 でも書きましたが、まず図7を見れば、全体で425人しかいないのに上の外れ値が10個以上あることから、ひげの上端が99パーセンタイルでないことは明らかです。

2019-06-02 19:58:35
Yoh Tanimoto @yoh_tanimoto

図5Aを見ると、3本の曲線は係数cを使って描かれたとあるのですが、比率がほぼ第1論文図5 iopscience.iop.org/0952-4746/37/1… の1,50,90パーセンタイルの比率と同じであり、上の曲線は90パーセンタイルであると考えられます。また上の曲線がひげの上端とほぼ合っており、これも90パーセンタイルだと推測できます。

2019-06-02 19:58:52
Yoh Tanimoto @yoh_tanimoto

すみません、これは"10,50,90パーセンタイル"の間違いです。下の曲線は論文中では1パーセンタイルとされているのですが、これも10パーセンタイルの間違いであると考えられます。そもそも、第2論文図5 iopscience.iop.org/0952-4746/37/3… を見れば、区域A,Cではひげの下端と下の曲線は全然合っていないのですが。

2019-06-03 01:25:42
Yoh Tanimoto @yoh_tanimoto

第1論文については、図4 iopscience.iop.org/0952-4746/37/1… の1000人以上いるビンを見ると、中央値が図からは読み取れないこともあるのですが、箱の下端としてもひげの上端は最大で3倍、箱の中央をとれば2倍で、これは図5の99パーセンタイル(3.7倍)にはなりません。やはり90パーセンタイルだと推測されます。

2019-06-02 19:59:06
Yoh Tanimoto @yoh_tanimoto

次に、なぜ(平均値や中央値とは別に)90,99パーセンタイルといったところが重要なのかです。これは単純には、例えば90パーセンタイルの被曝が大きかったら、それは10パーセント以上の人がそれ以上の被曝をしているということなので、無視はできないからです。

2019-06-02 19:59:19
Yoh Tanimoto @yoh_tanimoto

ICRP勧告 icrp.org/docs/P101a_Jap… によれば、代表的個人を定めて線量拘束値が守られているかの判断をし、大きな線量を受ける確率が5%以下になるように代表的個人を定めるべきだとされています。つまり、代表的個人は平均値や中央値でなくて95パーセンタイルを見て決めるべきだということになります。

2019-06-02 19:59:35
Yoh Tanimoto @yoh_tanimoto

95パーセンタイルは第1論文図5では中央値の約2.5倍です。(ICRPのこの勧告については、科学4月号 iwanami.co.jp/kagaku/KaMo201… の濱岡豊さんの記事「個人線量測定論文の諸問題−−批判的レビュー」で指摘されています。濱岡さんの記事はいろいろな個人線量測定論文の問題点を指摘していてとても重要です)

2019-06-02 19:59:50
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

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2019-05-31 11:07:24
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

『科学』6月号より 甲状腺がんをめぐる歪みの連環―IARC国際専門家グループ「TM-NUC」報告書・提言とは何か…平沼百合 3.11以後の科学リテラシー<78>…牧野淳一郎 巻頭エッセイ 天文学と軍事研究:2年の議論を経た学会声明とこれから…柴田一成

2019-05-31 11:07:55
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

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2019-05-31 11:08:30
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

『科学』6月号より 利他の惑星・地球[生命編]<3>〈自己解体〉という進化戦略…大橋力 ちびっこチンパンジーから広がる世界<210>アメリカに渡ったニホンザル…平田聡 手紙がひらく物理学史<9>ローレンスと嵯峨根遼吉,そして加速器実験の新時代…有賀暢迪

2019-05-31 11:08:49
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

『科学』6月号より [科学通信] 〈リレーエッセイ〉地球を俯瞰する自然地理学 地形のフィールドワークからネパールの大地震を読む…熊原康博 〈コラム〉東京電力原発事故の情報公開 “スピード感”だけで置き去りにされた品質管理…木野龍逸 宮崎早野論文批判補遺(1)…黒川眞一・谷本溶

2019-05-31 11:09:15

雑誌『科学』「ゆがむ被曝評価」特設サイト

https://www.iwanami.co.jp/kagaku/hibakuhyoka.html

・宮崎早野論文ダウンロードリンク(日本語訳有り)
・宮崎早野論文の倫理問題(科学2月号記事全文掲載ページリンク)
黒川眞一・島明美: 「住民に背を向けたガラスバッジ論文――7つの倫理違反で住民を裏切る論文は政策の根拠となり得ない」,科学,89(2),152(2019) https://www.iwanami.co.jp/kagaku/201902-kurokawa-shima.html

英語訳 https://www.iwanami.co.jp/kagaku/eKagaku_201902_Kurokawa_Shima.pdf


2019.3.22追加
科学,89(3),270(2019)より要旨公開
『被曝防護には空間線量そのものを使うことが妥当である――信頼性なく被曝線量を過小評価する宮崎早野第1論文』 https://www.iwanami.co.jp/kagaku/201903-kurokawa.html

科学,89(4),318(2019)より要旨公開
『インテグリティの失われた被曝評価論文:宮崎早野第2論文批判』 https://www.iwanami.co.jp/kagaku/201904-kurokawa-tanimoto.html