「オイラーとアーベルの楕円関数論 朝カル講義報告まとめ2」

2019年5月26日 朝日カルチャーセンターで行われた数学塾 3回のシリーズの第2回目「オイラーとアーベルの楕円関数論 」の高瀬正仁先生による詳細な講義報告をまとめてみました。 ちなみに、この講義の続き、第3回目の講義「レムニスケート関数の等分理論と虚数乗法論」は2019/6/30に朝カル新宿にて行われます。気になった方は是非講義の方へもお出かけください。 https://www.asahiculture.jp/course/shinjuku/82a8eef2-4aae-8ab4-f438-5c4142aeb169
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(1) 5月26日。第2回目。 レムニスケート曲線、レムニスケート積分、レムニスケート関数に例を求めてオイラーとアーベルによる黎明期の楕円関数論を紹介しました。レムニスケート曲線は微積分の黎明期に発見された曲線で、発見したのはベルヌーイ兄弟(兄のヤコブと弟のヨハン)です。 pic.twitter.com/Ok3qDd4BRq

2019-05-29 05:35:40
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(2) レムニスケート曲線の弧長の算出。ライプニッツの微分計算の方法で線素を算出しました。極座標表示が有効です。(まだ計算の途中) pic.twitter.com/ScGuPDxxYN

2019-05-30 04:32:30
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(3) レムニスケート曲線の線素が算出され、レムニスケート積分が現れました。オイラーもガウス&アーベルもこの積分から出発しています。オイラーはレムにスケート曲線に由来する変数分離型の微分方程式を提示しました。1個の代数的な特殊積分x^2 y^2+x^2+y^2-1=0が記されています。 pic.twitter.com/peVNspjs87

2019-05-30 04:38:17
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・朝カル講座報告(4) 二つの変化量xとyを連繋する代数方程式x^2 y^2+x^2+y^2-1=0が実際に微分方程式を満たすことの確認。微分方程式の解は「積分」と呼ばれていました。微分方程式の「積分」、すなわち「解」は「変化量を結ぶ関係式」であり、関数の形に限定されることはありません。 pic.twitter.com/0QE4t7kS47

2019-05-30 04:43:25
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・朝カル講座報告(5) 特殊解x^2 y^2+x^2+y^2-1=0により指定される曲線を(x, y)平面上に描くと、円周にとても近い曲線が現れます。 ファニャノは、「レムニスケート積分をレムニスケート積分に移す変数変換」を発見しました。まったく偶然の発見でした。 pic.twitter.com/ixHHbXoYPs

2019-05-30 18:39:18
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・朝カル講座報告(6) ファニャノは、レムニスケート曲線の弧長の算出を2次曲線(楕円、双曲線、放物線)の弧長の計算に帰着させようとして、そのためにいろいろな変数変換を発見しました。その途次、たまたま偶然発見したのが、「レムニスケート積分をレムニスケート積分に移す変数変換」でした。

2019-05-30 18:45:17
高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(7) ファニャノの発見によりレムニスケート曲線の弧の2等分点を作図することができます。ファニャノは3等分点と5等分点の作図法も発見。ユークリッド『原論』に見られる円周の等分法に匹敵する状況が発生しました。 他方、オイラーは代数的な一般解を発見しました。 pic.twitter.com/CfWCQ1iPp3

2019-05-31 05:19:22
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・朝カル講座報告(8) ファニャノが発見した変数変換式が、オイラーの目にはそれまで解けなかった微分方程式の特殊解と映じ、1個の特殊解を知ってたちまち一般解を発見。同じ光景を見ても、見る人が変ればまったく別のものに見えるのはいかにも不思議です。楕円関数論はオイラーから生れました。

2019-05-31 05:52:06
高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(9) レムニスケート曲線についてもう少し。発見したのはベルヌーイ兄弟。1694年9月に兄のヤコブ、同年10月に弟のヨハンが公表。ヤコブはこの曲線を「リボンの結び目」「数字の8の字の形」「結び目でもつれたひも」「レムニスクス(lemniscus)」などと呼びました。

2019-06-01 03:14:48
高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(10) レムニスクスはリボンの意。古いギリシア語のlemniskos(レムニスコス)に由来します。エーゲ海北部のレムノス島では髪飾りを固定するのにリボンを使う風習がありました。美しい呼び名ですが、西欧近代の数学の場で発見された曲線です。

2019-06-01 03:17:30
高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(11) 発見の背後に「曲線の理論」あり。ベルヌーイ兄弟はイソクロナ・パラケントリカ(側心等時曲線。説明略)の探索を通じてレムニスケート曲線の線素に遭遇。線素を知って曲線の全容を探索し、レムニスケート曲線の方程式に到達しました。ライプニッツの逆接線法の成果です。

2019-06-01 03:26:45
高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(12) ファニャノはレムニスケート曲線の弧長積分に目を留めて、それを円錐曲線(楕円、放物線、双曲線)の弧長積分に帰着させる変数変換の発見を試みて成功しました。たまたまレムニスケート積分の形を変えない変数変換を見つけましたが、まだ楕円関数論にはなりません。

2019-06-01 04:33:51
高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(13) ファニャノが発見した変数変換をオイラーが見ると、微分方程式の代数的積分に見えました。楕円関数論はその瞬間に誕生しました。楕円関数論のはじまりは微分方程式。楕円の弧長積分は楕円積分ですが、楕円の弧長を観察しても楕円関数論にはなりません。

2019-06-01 04:40:21
高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(14) ファニャノの肖像。ファニャノの数学論文集より。 手にもっている紙片にレムニスケート曲線が描かれています。 pic.twitter.com/SXZMGKr0A3

2019-06-01 07:15:43
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(15) オイラーの加法定理から、三角関数の倍角の公式に相当する等式が導かれます。オイラーはそこまで歩を進めましたが、等分方程式を書き下して、代数的可解性を論じるという様子は見られません。オイラーが関心を寄せていたのはどこまでも微分方程式の解法でした。 pic.twitter.com/RBSamnsZBL

2019-06-02 03:17:42
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(16) アーベルは(第1種の)楕円積分の逆関数を考えています。今日の語法では、楕円積分の逆関数は楕円関数です。アーベルの語法では今日の楕円積分が楕円関数。逆関数には特定の呼び名はありません。 ここではレムニスケート積分の逆関数をレムニスケート関数と呼ぶことにします。

2019-06-02 03:28:14
高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(17) 定積分値ωはレムニスケート曲線の全周の長さ。円周の全周2πは正弦関数や余弦関数の周期。πになぞらえてωを定めました。2ωはレムニスケート関数の周期(のひとつ)です。もうひとつの周期は純虚数2ωiです。

2019-06-02 03:30:13
高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(18) レムニスケート関数は二つの周期をもつ。ひとつは実数、もうひとつは純虚数。アーベルはレムにスケート関数の変数の変域を複素数域に拡大しようとしています。第1歩は純虚数まで。虚軸に沿って原点から iy まで積分して、等式   φ(iα) = i φ(α) を導きました。 pic.twitter.com/TGIWuYjMhi

2019-06-02 03:37:46
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(19) 等式φ(iα) = i φ(α) はレムニスケート関数が虚数乗法をもつことを示していますが、この段階ではまだαは実数値にとどまっています。アーベルは加法定理を基礎にして変数の変域を複素数域全体に拡大しました。複素変数関数論の解析接続に相当することが実現されています。 pic.twitter.com/CS3vQ0wDsD

2019-06-02 03:44:23
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(20) レムニスケート関数の2重周期性が明示されました。 pic.twitter.com/UB6wCxqTgo

2019-06-02 03:47:36
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(21) レムニスケート関数の極点(関数値が無限大になる点)の探索。 pic.twitter.com/jQFxA2OnUQ

2019-06-02 03:52:08
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(22) レムニスケート関数の2等分方程式を解いて、ファニャノのレムニスケート曲線の等分と同じ結果が得られました。 pic.twitter.com/zdtCc1cZ2A

2019-06-04 04:56:15
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(23) レムニスケート関数の加法定理のアーベルによる証明。 アーベル「楕円関数研究」(1827-28年) アーベルの一般の場合の証明をレムニスケート関数に限定して再現しました。 pic.twitter.com/5J2HHOaG2Q

2019-06-04 04:59:13
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高瀬正仁 @M_Takase_imfo

・朝カル講座報告(24) レムニスケート曲線の発見が楕円関数論の契機になり、オイラーの微分方程式論の世界に移ってはじめて芽生えました。逆関数の虚数乗法の根源は虚の乗法子を伴う微分方程式。そこに数論との連繋を見たのはガウスとアイゼンシュタインでした。次回は等分方程式の解明をめざします。 pic.twitter.com/xtwQ971jQs

2019-06-06 06:47:19
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