松田先輩と

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yui @kn_km_ym

「んー、アイスティーにします」こういう時、大抵アイスティーを選んでしまう。「俺もそうしようかな。砂糖とミルクは?」「入れないです、そのままで」「俺と一緒だね」目が合う。一緒、というフレーズに幸せを感じる。松田先輩は何気なく行った一言かもしれないけれど、わたしの胸をときめかせるには

2019-06-02 19:26:21
yui @kn_km_ym

十分な言葉だ。こんなんで今日一日心臓が持つのだろうか。頼んだものが来るまで話をする。最近は一緒に下校をしているので知っていることもあるけれど、わたしはまだまだ松田先輩のことを知らない。「俺さ古着が好きで、今日は〇〇ちゃんと行きたいな、と思ってこの街にしたんだよね」たしかに

2019-06-02 19:26:21
yui @kn_km_ym

このお店に来るまでにいくつか古着屋さんを見かけた。古着は一度も着たことがない。「あ、抵抗ある?たまに古着は嫌って人いるから」「それは大丈夫です!よく、親戚のお姉ちゃんからお下がりもらって着ていたので」よくいらなくなった服をもらっていた。「ならよかった。古着ってさ、出会いっていうか

2019-06-02 19:26:22
yui @kn_km_ym

1点ものだから探すの楽しいんだよね」本当におしゃれが好きなんだろうな、と感じる話し方。「好きなんですね。いいなあ、素敵です」好きなことがあるって素敵だ。羨ましくも感じる。食事が終わり、お店を出る。「じゃあ、俺がいつも行くとこ行こっか」「はいっ」洋楽がかかる店内に足を踏み入れると

2019-06-02 19:26:22
yui @kn_km_ym

独特な香りがする。なんだろう、バニラかな。甘い香りを感じながら物色する松田先輩の後を着いて行く。見たことのないような柄やデザインの服ばかりで新鮮だ。鼻歌を歌いながら服を見ている様子をチラッと見る。そう言えば初めて教室で見た時も、鼻歌を歌っていたことを思い出す。不思議だ。いくら

2019-06-02 19:26:23
yui @kn_km_ym

一緒に下校したって、話をしたって、未だに松田先輩と付き合っていることが夢のように感じる。「どう?これ」ぼーっとしていたので反応が遅れてしまう。「え、あ、いいと思います!わ、かわいいデザインですね」アメリカのアニメのキャラクターが描かれたTシャツ。少し色褪せて味が出ている。「〇〇

2019-06-02 19:26:23
yui @kn_km_ym

ちゃんは?何か気になるのある?」おしゃれ初心者に古着が難しい、と思いながら探してみる。「あ、これかわいい」手に取ったのは襟付きのワンピース。ヨーロッパのものだと、近くにいた店員さんに説明をされる。試着をしてみることになり、お花やヴィンテージの小物が置いてある試着室に並んで入る。

2019-06-02 19:26:23
yui @kn_km_ym

鏡で確認すると、幼い顔をした自分がなんだか急に大人びた気がする。気のせいかもしれないけれど、違う世界みたいで楽しい。「着れたー?」外から呼び掛けられる。思い切ってカーテンを開けるとさっき手に取っていたTシャツを今日のスキニーにインをして着こなしている松田先輩。「かっこいい、、」

2019-06-02 19:26:24
yui @kn_km_ym

「かわいい!」声が重なる。「似合うって〇〇ちゃん!」いやあ、やっぱりな、そうだと思ったんだよ、とひとりで頷いている。「変じゃないですか?ワンピースはとてもかわいいんですけど、わたしちゃんと着られてますか?」「大丈夫だって、すっごくかわいいよ」目を見れば嘘じゃないことが分かる。

2019-06-02 19:26:24
yui @kn_km_ym

よかった、嬉しい。「松田先輩もすごく似合ってます。わたしなんか全然分からないけど、でもおしゃれだなって思います」松田先輩の内面の部分も知っているから、余計にかっこよく見える。好きだなあ、と思う。元の服に着替え終わると、さっとワンピースをとられる。そのままお会計に行くのと慌てて

2019-06-02 19:26:25
yui @kn_km_ym

止める。「え、ちょっと待ってください」「あれ、気に入らなかった?」「いえ、すごく好きですけど、自分で買います」「いいの、俺が買ってあげたいの。次のデートで着てきてね」次のデート、という言葉にフリーズしてしまう。ずるいなあ、もう。さっきのランチも奢ってもらったのに、申し訳ない。

2019-06-02 19:26:25
yui @kn_km_ym

店員さんと仲がいいのか談笑をしている。さっきも服を選びながら笑っていたのを思い出す。本当に行きつけのお店なんだ。「結構長く居たね、ちょっと休憩しよっか」時計を見ると思っていたよりも滞在していたことがわかる。「はい、」と荷物を持っていない方の手を出される。手を重ねると繋がれる。

2019-06-02 19:26:26
yui @kn_km_ym

心臓が、心臓がうるさい、、途中で飲み物を買って、公園のベンチに座る。さすがに悪いので飲み物はわたしが無理矢理に買った。「暑っついね」梅雨も来ていないのに、汗ばむ。「夏が思いやられますね。松田先輩、外で部活だから体調には気をつけて下さいね」熱中症になってしまいそうだと考える。

2019-06-02 19:26:26
yui @kn_km_ym

「あのさ、」突然深刻そうな顔になるので驚く。「呼び方変えない?」「え、」「松田先輩じゃなくてさ、名前がいいな」呼んでみてよ、と催促される。突然のことに緊張する。ゆっくり息を吸って吐く。期待のこもった目を向けられるので、ときめく。「げ、元太先輩、、」意を決して言ってみたけれど、少し

2019-06-02 19:26:26
yui @kn_km_ym

反応が薄い。あれ、違った?「えー、ほんとにそれでいいの?」試すような言い方。あれ、これはもしやちょっと楽しんでる?「だって俺は〇〇ちゃんって呼んでるんだよ?」「はい」「そしたらさ、もうひとつしかないじゃん?」「、、元太くん?」そうそれ!と小さく拍手をされる。ついでに握手もされる。

2019-06-02 19:26:27
yui @kn_km_ym

「これから学校でもちゃんと呼んでね」先輩って言ったら罰ゲームだから!と、嬉しそうに言われる。罰ゲームってなんだろう。「もしかして、壁を感じてましたか?」ふと思う。わたしは近づいているつもりだったけれど、先輩は違ったのかもしれない。「うん、ちょっとね。だって付き合ってるのにさ寂しい

2019-06-02 19:26:27
yui @kn_km_ym

じゃん」敬語もだんだんとなくなるといいなって思ってるよ、と頭を撫でられる。一緒に帰ろうと言ってくれたり、いつも歩み寄っているのは先輩の方からだった。何にもしていない自分に気がつく。「がんばるね、元太くん」一瞬固まってから照れ出す。「あ、ちょっと待って、ふいにそれはやばいわ」最高、

2019-06-02 19:26:28
yui @kn_km_ym

と褒められる。おしゃれも恋もまだまだ初心者だけど、少しずつ攻略できたらと思う。照れる元太くんの手を取り、恋人繋ぎをする。してやったりの顔をすると肩を引き寄せられ、短いキスをされる。「かわいすぎるんだけど」こんな幸せなファーストキス、忘れられるわけない。

2019-06-02 19:26:28