松田先輩と

yui @kn_km_ym

ハミングが聞こえる、なんの歌だろう。放課後、誰もいない教室。テスト期間中なのに残ってる人いるんだ、ってわたしもその一人なんだけど。こっそり覗くとサッカー部のエースの松田先輩。黄昏れるように窓からの景色を眺めている。意外だ、普段は周りの人と騒いでいるイメージだから。ましてやわたしは

yui @kn_km_ym

後輩で、あまり関わりのない部活も違う人で。こんな風に近くで見るのは初めてかもしれない。一度吹奏楽の個人練習を外でしていた時に、ボールが転がってきて先輩に渡したことがあったっけ。そんなことを思い出していると、バサッと持っていたノートや楽譜を落としてしまった。やばい、ここにいること

yui @kn_km_ym

バレてしまう。恐る恐るノートを拾い顔を上げると、松田先輩と目が合う。「あ、ども」まるで鼻歌を聞いていたなんて思ってもいないみたいでほっとする。「2年生？」学年ごとに違う色の上履きを見て言われる。「はい、そうです。あの、すみません。うるさかったですよね」だいじよーぶ、と爽やかに

yui @kn_km_ym

言われる。ちょいちょいと手招きされ、緊張しながらもそばに行く。どうしよう、初めて話す。すると「あ、サックスの子！」突然当てられるから驚く。なんで知ってるんだろう。「俺サックスやってみたくて、ついつい見ちゃうんだよね、だから覚えた」にかっと笑われなんて言っていいのかわからない。

yui @kn_km_ym

こんなわたしのこと覚えてもらえてた、嬉しい。「ってか、なんで楽譜？部活やっちゃだめっしょ今」「えっと、部室に忘れてたので取りに行っていて。勉強しなきゃですけど、家で練習もしたいので」そっか、俺もサッカーしたいなあ。沈黙が流れる。どうしよう、このまま立ち去って良いものか悩む。でも

yui @kn_km_ym

せっかく初めて話せているからもう少しだけ。「あの、先輩がさっき歌っていたの、なんて曲ですか？」思いきって聞いてみる、あ、しまった。鼻歌を聞いていたこと自分からバラしてしまった。「あれ？聞いてた？恥ずかしーな。あれはね、涙くんさよならって歌」知ってる？と今度はちゃんと声に出して

yui @kn_km_ym

歌ってくれる。なめらかな歌声が心地良い。ずっと聞いていたい声をしている。「ねえ〇〇さん、」いつの間にか歌い終えていた先輩に呼ばれる。あれ、なんで名前。あ、上履きに書いてあるや。「テスト終わったらさ、俺とデートしてよ」急な誘いに戸惑う。「あ、もしかして週末は部活で忙しい？」まあ俺も

yui @kn_km_ym

部活ある時はあるけど、「再来週なら！、、再来週なら空いてます」頭をフル回転させてスケジュールを確認する。よし、じゃあ決まりね。と言い、「帰るかー」と教室を出る。状況がよく分かっていないけど、これってもしかしてすごくすごく一大事。ぼーっとしていると、「どうした？一緒に帰ろ」と

yui @kn_km_ym

急かされる。ますます不思議な状況。あれ、わたしって松田先輩と初めて話したよね今日。なのにデートの約束までして、これから一緒に帰るって、、！！突然顔が赤くなり固まるわたしに笑う先輩。「なにー？可愛いじゃん」突然の恋、二人の始まり。#トラジャで妄想

yui @kn_km_ym

宮近くんがホットだったはずのぬるくなっった缶コーヒーを啜りながら聞いてくる。「これからデートなの、遅くなっちゃった」と言えばふーん、とわたしの机の上のチョコレートを食べる。あ、ねえ！それわたしの！と怒るとへらへらしてる。同期だけど、宮近くんはきっと友達みたいな感覚でいると思う。

yui @kn_km_ym

「松田先輩と帰り道」g.m

yui @kn_km_ym

無事にテストが終わり、また変わらない毎日が始まった、はずだった。部活終了の音楽と共にぞろぞろと下校する人たち。上履きからローファーに履き替え、外に出ると壁にもたれ掛かる人。「、、松田先輩？」「あ！〇〇ちゃん。お疲れ様。一緒に帰ろう」身体が固まる。この前たまたま一緒に帰った時に、

yui @kn_km_ym

連絡先を交換しなかったから、ああデートは口約束か、と落ち込んでいたから驚く。「あー、お友達？ごめんね、〇〇ちゃんもらいます。行こっか」わたし同様驚いている友人に短く別れを告げ、松田先輩の隣を歩く。「部活、お疲れ様。音聴こえてたよ」「先輩もお疲れ様です。わたしも教室から見えて

yui @kn_km_ym

いました。」汗をかきながらサッカーをする姿を見ながら、わたしも練習をしていた。「まじで？俺見えなかったなあ、今度手振ってよ」にかっと楽しそうに笑う。「あの！なんで待っていてくれたんですか？」立ち止まり問いかける。そもそもなんで、わたしは松田先輩と帰っているんだろう。いや、

yui @kn_km_ym

嬉しいけど！「この前帰った時、連絡先聞くの忘れちゃって。デートするのに知らないと、待ち合わせできないでしょ？」はい、とスマホを差し出してきたので、慌ててわたしも取り出し交換をする。「あ、でも〇〇ちゃんとこれからも帰りたいなあ、って思ったりもしてるんだけど、どうかな？」自分の

yui @kn_km_ym

スマホに松田先輩の連絡先が入っていることに感動していたら、さらにすごいことを言われてしまった。「え、あ、嬉しいです！けど、なんでわたしなんですか？」素直な疑問をぶつける。この前偶然会っただけなのに。少し俯いてから顔を上げる。風がなびいて髪が揺れる。綺麗。「、、この前はたまたま

yui @kn_km_ym

だったけど、サックスの子だ！って分かった時から学校で見かけると目で追ってて。で、俺〇〇ちゃんのこと好きなのかな、って思ってた」だから、デートしてくれるって言ってもらえて嬉しくて。「迷惑だった？」不安げな顔で聞かれる。勢いよく首を横に振るしかできない。今好きって、好きって言った？

yui @kn_km_ym

「〇〇ちゃんが好きです、付き合って下さい」また言ってくれた。夢かと思う。頬をつねると、痛い。「よろしく、お願い、します」頬をさすりながら答える。「やったっ！って、痛くない？大丈夫？」距離が近い。間近で見てもやっぱりかっこいい。「夢じゃ、なかった」「なにそれ、かわいい」さすっていた

yui @kn_km_ym

手を取られる。松田先輩と手を繋いで帰る未来なんて、想像できただろうか。手汗が出ないか心配になる。にこにこしている横顔にときめく。どうしよう、わたし松田先輩と付き合っている！

yui @kn_km_ym

「松田先輩と週末デート」g.m

yui @kn_km_ym

初デートの待ち合わせ場所は駅前だった。雨上がりの水たまりが反射して眩しい梅雨前。今日の天気予報は晴れだったけれど、通り雨がないか心配だ。昨晩は気持ちが昂り、なかなか寝つけられなかった。余裕を持って10分前に待ち合わせの駅に着き、改札を出る。もう既に松田先輩の姿が見えた。「おはよう

yui @kn_km_ym

ございます！早いですね」「おはよう。うん、早く着いちゃった」さらっと手を繋がられる。どうしよう、緊張する。制服姿も素敵だけれど私服だと印象が変わる。なんというか、その、「お、おしゃれっ」心の声が漏れてしまう。いやいや高校生ってこんなにおしゃれなの？わたしの知識不足？黒のスキニーに

yui @kn_km_ym

胸にポイントのある白のシンプルなトップス。シルバーのバングルやリングがさりげなくおしゃれに嫌味がない。「え、そう？嬉しいなあ。〇〇ちゃんもかわいいね。俺そのワンピース好き」いきなり言われるから驚く。嬉しいけれど恥ずかしくて、手汗をかいてしまわないか心配になる。「ありがとう

yui @kn_km_ym

ございます。わたし部活ばかりで服をあまり持っていなくて、この前買いに行ったんです」正直に言う。高校生だからおしゃれに興味がないわけではないけれど、部活の関係で年中制服を着ているような人種なのでなかなか着る機会が少ない。ネットや雑誌を参考に悩んだ。「今日の為に？やっば、なにそれ

yui @kn_km_ym

超うれしい」照れたように言うのでわたしも照れてしまう。「ご飯行こっか」「はいっ」おすすめだと言うお店に入ってランチをとる。あまりにも真剣な表情をしてメニューを見ているので笑ってしまう。もう一つメニュー表はあったけれど、何となく松田先輩と同じものを見ながら選ぶ。「飲み物何にする？」