エッジ・オブ・ネザーキョウ #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「参ったね……」XX002が頭を掻いた。UCA、ユナイテッド・コープス・オブ・アメリカ。インターネット情報によれば、それこそが文明、それこそがネザーキョウの外だ。タイクーンの攻撃に対抗する為、暗黒メガコーポ複数社が戦力を出し合い、臨時の防衛網を作ったのだという。 20

2019-07-04 22:37:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「UCAは情報社会に脳を侵された惰弱な企業の奴隷に過ぎない」。タイクーンはそう断じている。実際、UCAの戦績はそう芳しいとはいえない。バンクーバーを攻略したという情報もある。それはしかも矢文や水晶玉でもたらされたものではなく、向こう側のネット情報なので、おそらく真実なのだ。 21

2019-07-04 22:40:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「向こうに行ったって、そう大したものはないかもしれないぜ」キンケイドが言った。「ゲームやっといて何だよ?」「いや、ゲームは確かに向こうからだぜ。だけどこっちにはパンダ・マンもあるし、メイプル・シロップもある。クソトルーパーや獣どもに気をつけてりゃ、寝るところもある」「小せえな」22

2019-07-04 22:43:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だとぉ!?」「俺は夢があるぜ!それはアンタイセイだ!自由を追い求めるんだ!」アベ一休Tシャツを掴む!「ザッケンナコラー!」ケンカが始まりかける。アレンが悲しい顔で止める。「やめよ、そういうの」「ア……悪い」「最近その話ばっかりだな、ザック」XX002が尋ねる。「何かあったか」 23

2019-07-04 22:46:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺……確かめたんだよ。街で実際に調べ回って、マジに確かめた」ザックが言った。「アケチ水軍の隊長格に、スピアフィッシュっていう奴がいる。ソイツが小遣い稼ぎをしてるんだ……」「……それって……」「相応のカネを払えば、奴は攻撃艇の底に客を隠して、向こう岸に送ってくれるんだよ」 24

2019-07-04 22:53:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アケチ水軍はネチャコ川・フレーザー川を攻撃艇やジェットスキーで行き来し、略奪行為を行うならず者集団である。タイクーンへの忠誠は確かに怪しいものであり、そのサイドビジネスには多少信憑性はあった。「マジかよ」「何だって……?」「俺はブルシットだと思うぜ」XX002が難色を示した。 25

2019-07-04 22:57:37
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「そのスピアフィッシュは、ニンジャだ。ニンジャってのは血も涙もない連中で、どんな悪辣な事でもやってみせるんだ。お前らはまだガキだから、そういう夢物語にハマッちまう」「……」「お前らはインターネットを使って、立派なリコナーになるんじゃなかったのか?やるべき事がもっとあるだろう?」26

2019-07-04 23:00:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アレンが頷き、ザックを見た。「そうだよ。僕らは……UCA領域の人たちに……いや、それだけじゃないよ。世界中と繋がっていられるんだ。プロキシがあればね。発信していかなきゃ。これ以上、この国に、騙されてやって来て、トルーパーにされる人とか……犯罪者とかが増えないように……」 27

2019-07-04 23:02:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アレンは静かで、穏やかだが、強い意志を秘めていた。そして彼らの中で一番賢かった。ザックは唸り、俯いた。「まあ……そういう考え方もあるけどよ……」ヤスがザックの肩を叩いた。「ゲームやって落ち着けよ。かわってやるから」「ちぇ……」 28

2019-07-04 23:05:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨサマイカベー!」「ヤンチャダヨ!」ゲームの音声は賑やかで、迷彩ノーレンをくぐって彼らが現れたことに気づくのが、少し遅れた。「アッ!」アレンが息を呑んだ。その目線を追い、ヤスが気づいた。「アイエッ……!」「ウワーッ!」キンケイドが銃を手にとった。「イヤーッ!」「アバーッ!」 29

2019-07-04 23:07:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スリケンがキンケイドの眉間を貫いた。「アイエエエエ!」「アイエエエエエ!」悪童たちは悲鳴を上げた。「イヤッ!イヤーッ!」威嚇のスリケンが天井に突き刺さった。ドカドカと入ってきたのはゲニントルーパー達である!「動くな!わかるぞ……貴様らインターネットをやっているなァ~~~?」 30

2019-07-04 23:09:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「や……やっていません!」XX002がホールドアップした。「我々は偶然この場所を見つけて……旧時代の電子機器が沢山ありましたので、その……」「ほォーう」その者は黒帯を締めたメジャーゲニンだった。「UNIXテクノロジーで……インターネットはしていないと?」「ハイ、やっていません」 31

2019-07-04 23:12:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フン……ならばオフライン無罪である」メジャーゲニンは顎に手を当て、アジトを見渡した。それから傍らの赤帯ゲニンを振り返った。「確認しろ。感じるか?」「は……只今!」赤帯ゲニンはこめかみに指を当て、集中した。XX002は息を呑んだ。赤帯ゲニンは目を見開く。「……オヒガンを感じます」 32

2019-07-04 23:14:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「示せ!どこだ!」「ムム……」赤帯ゲニンがダウジング棒を懐から取り出し、一地点を示した。ナムサン!そこには例の円柱形デバイスが!「これは!動かぬ証拠ではないか!」黒帯ゲニンが指さした!「やはりインターネットをしていたうえに虚偽まで!これは許せんなァ~~!?」 33

2019-07-04 23:18:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうか子供たちだけは!」XX002はその場にドゲザするために両膝をついた。ゲニントルーパーたちは残虐に目を細めた。その時だ!BRRRRRRTTTTTT!「グワーッ!」「アバーッ!?」銃弾の嵐がトルーパー目掛け撃ち込まれたのである!ナムサン!UNIXデッキが展開し、この時のために仕込んだ機関銃が! 34

2019-07-04 23:21:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BRRRRTTTT!BRRRRRTTTT!「グワーッ!」「アバーッ!」蜂の巣になり次々に倒れるゲニン!「アバーッ!」赤帯ゲニンも撃ち抜かれ、死!だが、ナムサン!?メジャーゲニンは踏み留まったのである!装束が引き裂かれあらわになった胸には「明智」の漢字が収まった円紋章!コクダカのパワーである! 35

2019-07-04 23:23:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」スリケン投擲!KRAASH!圧倒的カラテだ!UNIX機関銃は一撃で破砕!「ウワアアーッ!」ヤバレカバレ!XX002がメジャーゲニンに組み付こうとする!だがメジャーゲニンはチョップを振り下ろし即死させる!「アバーッ!」悪童達は……「ウワアアーッ!」BLAM!BLAM!BLAM! 36

2019-07-04 23:24:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らは隠し持っていた拳銃で一斉に攻撃した。メジャーゲニンは銃弾による即死は免れたが、もはや重傷。ついに倒れ込むメジャーゲニン!しかしトルーパーは全滅していない!「イヤーッ!」「グワーッ!」アレンがスリケンに斃れる!ザック達は逆上し、撃ちまくった。撃ちまくった……! 37

2019-07-04 23:28:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シグルーンは燃費優先速度を保っていた。今はマスラダが運転し、コトブキが後ろだ。「方角は正しいと思うのですが……正しいですね、多分」コトブキの声が明るくなった。獣道に過ぎなかった道路は徐々にくっきりとしてきた。やがてアスファルトによる舗装がはっきりした。 39

2019-07-04 23:34:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らは川に突き当たった。「川です」「ああ」『理解可能。ネチャコ川です』シグルーンの電子音声が述べた。「シグルーン=サンは、とても知性が高いバイクですよ」コトブキが喜んだ。「ネチャコ川という事は、これを右手に見ながら進めば、いずれプリンスジョージの街に辿り着く計算です!」 40

2019-07-04 23:38:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

水面には川岸のモミジが映り込み、美しい。SPLASH!彼らと並走するように、イルカめいて川の魚が跳ねた。しかし魚は硬い鱗に覆われており、獰猛な目が彼らを追った。「あれもカラテビーストなのかもしれません」「ふざけた話だな」「黒帯が見えた気がするのです」「放っておけ。どうでもいい」 41

2019-07-04 23:42:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「穫ればスシが作れるかも……」「バッテラはまだ十分ある」マスラダはシグルーンをやや加速させ、先を急いだ。プリンスジョージはフィルギアが指定した待ち合わせ地点だ。アスファルトはひび割れ、根が張っていたが、シグルーンのインテリジェント操車補助が転倒を防いでくれる。 42

2019-07-04 23:46:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

道中、逆さにひっくり返った無残なクルマを幾つか通り過ぎた。何年も放置され赤錆びた廃車は見飽きたが、そうしたものとは様相が違った。なかには……ナムサン……運転席から死体の手がはみ出している無惨な車両もあった。「なんという事でしょう」コトブキは呟く。無関心を保てぬのだ。 43

2019-07-04 23:49:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何かが引っくり返した」排気ガスを断末魔めいて吐く車両を通り過ぎたとき、マスラダが反応した。「いずれわかる。ろくでもない理由だろうがな」「気をつけましょう」……しかし、まず優先して注意すべきものが、後方から近づいてきた。激しい水音。そして雄叫びだ!「ホーッ!」「ホホーッ!」44

2019-07-04 23:52:58