茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第2288回「映画『新聞記者』は、昨今の日本の政治、メディア状況を正面から扱って商業映画として大成功」

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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート2288回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、感想です。

2019-07-28 07:28:58
茂木健一郎 @kenichiromogi

話題の映画『新聞記者』をようやく見ることができた。:望月衣塑子さんの「新聞記者」が原案になっている。この2、3年くらい、世間で話題になって、みんなが知っているのに、表のメディアが扱わないテーマがそのままストレートにとらえられていて、見ながら思わずにやにやしてしまった。

2019-07-28 07:32:22
茂木健一郎 @kenichiromogi

映画『新聞記者』の一方の主役は「内調」で、そのシーンになると全体に灰色で色がとぼしく暗い画面になるのが面白かった。そこで働くひとたちも個性にとぼしくロボットのように描かれている。フィクションだとしても、なんだかカフカっぽくて面白い。

2019-07-28 07:33:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

一方の主役である「新聞記者」のいる「東都新聞」は明らかに「東京新聞」なんだけど、そこを映すシーンはカメラがいつも微妙に揺れていて、それがダイナミズムというか臨場感の表現になっていると思った。内調のくらーい灰色の感じとのコントラストが、また面白い。

2019-07-28 07:34:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

さっきから、映画『新聞記者』の感想を「面白い」と連発しているけれども、たしかに面白くて、内調の暗躍とか、ネット活動員を大量に動員して、政権に有利な情報操作をしているとか、ここ数年ネット上で半ば常識のように語られていたことがふつうに映像になっているのが面白い。

2019-07-28 07:35:56
茂木健一郎 @kenichiromogi

前川喜平さんのことについても、あれは内調がリークしてそれに読売新聞がのって記事にしてしまったのだというような、ネット上でのいわば「常識」を、表のメディアはタブー視して一切扱わないのを、映画『新聞記者』はあっけらかんと扱っているから、そこに痛快な面白さがあるのだと思う。

2019-07-28 07:37:02
茂木健一郎 @kenichiromogi

ぼくが映画『新聞記者』の感想として「面白い」ということを重視しているのは、これはあくまでも商業映画で、お客さんを楽しませなくちゃいけないわけで、昨今の日本の政治状況、メディア状況がうんぬんと真剣な顔をして論じてもいいけれど、それ以前に映画として面白いことが大切だと思う。

2019-07-28 07:38:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

それで、映画『新聞記者』の面白さの大切な部分は、みんなが知っているのに表のメディアがチキンハートで一切ふれようとしないタブーとも言えないくらいのタブーを正面から扱っているからで、校長先生に呼び出されて怒られている小学生の笑いの衝動のような建前と実際の乖離のダイナミズムがある。

2019-07-28 07:39:42
茂木健一郎 @kenichiromogi

監督の藤井道人さんはわざのある方で、『新聞記者』も画面のトーンが劇的にかわって、スローモーションでの感情の絡み合いなどの表現もうまくて、とても引き込まれた。なによりのヒットは主役のシム・ウンギョンさんで、この方の存在感というか、いきいきとした感じが映画の成功を決定づけている。

2019-07-28 07:41:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

映画『新聞記者』がこれだけ話題になっているのに、表のメディアは相変わらずスルー、だんまりを決め込んでいるのがいかにも日本のメディアっぽくて面白いわけだけど、そのロボットぶりに、シム・ウンギョンさんの生々しい存在感が対比され、最高の批評性を獲得している。今年の主演女優賞は決定だ。

2019-07-28 07:43:07
茂木健一郎 @kenichiromogi

松坂桃李さんの演技、存在感もすばらしく、やはりいい役者さんがいるのによい作品がないことが日本映画の不幸なんだなと思った。今小津や黒澤が生きていたら、松坂さんを起用してすばらしい作品ができていたことだろう。ちゃらちゃらした芸能ノリの映画が多いから、せっかくの良い役者さんが生きない。

2019-07-28 07:44:42
茂木健一郎 @kenichiromogi

映画『新聞記者』は、前川喜平さんや望月衣塑子さんご本人もビデオ引用でたっぷり出るし、昨今の日本の政治、メディア状況がストレートに扱われるし、商業映画としてとてもよくできていて必見です。このようなフィクションとしてしか内調の暗躍を扱えない日本のメディアの情けなさも味わいの一つ。

2019-07-28 07:47:20
茂木健一郎 @kenichiromogi

ところで、映画『新聞記者』にかかわった人が勇気あるとか、これで仕事干されるとか、そういう独裁者のいる発展途上国なみの言説が流布するのはいかがなものか。この程度のホワイトハウスの陰謀ものは、アメリカだったら年に何本もある気がする。日本という国も、そこまでは落ちぶれていないだろう。

2019-07-28 07:48:58
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート2288回「映画『新聞記者』は、昨今の日本の政治、メディア状況を正面から扱って商業映画として大成功」をテーマに、12のツイートをお届けしました。

2019-07-28 07:50:11