- goldencat222
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この世界の片隅に見てて思い出した、店やってた頃の話なんだけど、突然ふらりと老婦人が立ち寄り、なんとなく冷たいお茶なんか出したら話を聞かせてくれたのがあれは今でもなんだったんだろうっていうのがあり
2019-08-04 00:39:24その人は戦時中は女学生で、親が先見の明あって函館在住だけど岩見沢にある大きな農学校に通わせてくれて、これからは女性も勉学に励んで働くべきという考えのもと寄宿舎から学校に通っていたらしい。しかし、戦局が悪化したら勉強どころではなくなってきて、(それもほんといきなり悪化したようだ)
2019-08-04 00:39:24毎日穴掘ったりなんの意味もない(防空壕作ってたのかな)ことをやってこんなことして勝てんのかな?って思っているうちに教えることもないのか早めの夏休みで帰省となったところ、函館空襲(7月14日の午後)が始まった。
2019-08-04 00:39:24ああもうダメだ私これで死ぬんだ、防空壕で死ぬくらいなら最後まで見てやると思った彼女は高台の自分の家の二階から函館湾を見ていたらしい。なんでか私までその光景が見えたような気がしたんだけど、淡々と語る割になんだか真に迫っていた。海峡にのんびりと浮かぶ船に容赦なく砲撃が浴びせられ、
2019-08-04 00:39:24民間の船も何もかも激しい水煙をあげてやられていく、その光景には音がなく、しばらくしてから音が届いたっていうとこも嫌にリアルだった。そして、要塞だった函館山から必死で反撃する光も見えるけど全然当たらず、見る間に船は沈んでゆき、かろうじて飛行機に当たったようで一機だけ墜落し、
2019-08-04 00:39:25そこから落下傘で降りてくる兵士の様子まで見えたそうだ。あの人、きっとひどい目にあったろう、とその老婦人は語っていた、(実際その通りらしい)10代の後半に見た光景を私も見たような気がして、ずっと聞き入っていた。ひとしきり語るとその夫人はそれでは、と去って行った。
2019-08-04 00:39:25思い出すたび白昼夢じゃないか、と思ってしまうんだけど、机の上には夫人が飲んだガラスの茶器が残ってたので夢じゃなかったんだと思う。で、おまけなんだけどそのあとでよくうちの店に立ち寄ってた掃海艇乗ってた若い男性(客でもないのに立ち寄る人が妙に多い店だった)に、こんなことがって話したら
2019-08-04 00:39:25すごいリアルですね(機雷を片付ける訓練をやってて離れたとこで機雷を爆破させることはよくやるらしいので、水煙上がってから音が遅れてくる感じとか、真に迫ってるらしい)と言ってた。掃海艇は誰にも迷惑がかからない海域で訓練するんだけど、一度爆破したらマンタがとばっちり食らって
2019-08-04 00:39:25ヒレを吹っ飛ばされて苦しんで沈んでしまったのを見て大変申し訳なく思ったというおまけの話まで教えてくれた。ちなみにその海上自衛隊の人はそのあと「しらせ」に勤務になり、オーロラの写真を自慢されて私は転げ回って羨ましがった
2019-08-04 00:39:25話してくれた老婦人はもしかしたらもう今はお亡くなりになっているかもしれないので、(それにしたって初対面のなんの繋がりもない人間にいきなりすごいこと話すよな)この時期だしせっかくだからしばらくトップにぶら下げておくので読んでいただけたら嬉しいです #この世界のいくつもの片隅に
2019-08-04 00:57:21