たらればさん、「心の大腿骨が複雑骨折した」 #FGO セイレムを履修。サンソンを主軸とした骨太考察を展開

人は脆弱で醜悪で卑劣で愚鈍だが愛すべきなのか、的な。
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たられば @tarareba722

・たとえば魔女とは何か ・古代ギリシャ・ローマにおける魔女(キルケーやメディア)と、近世の「魔女」という概念は、踏襲はしているものの別の存在であること ・その大きな違いは背景にある宗教(つまり多神教下の魔女と一神教(キリスト教)下の魔女では性質が異なる) ・異教と異端と科学などなど

2019-09-10 23:36:31
たられば @tarareba722

・ロビンフッド、第1部第5章(北米)やサバフェスでの活躍を見ると、アウトローなんだけど世話焼きお兄さんという感じで、さすが「民衆のガウェイン」だと ・哪吒は『西遊記』や『封神演義』の哪吒ですね ・藤崎竜版の印象が強すぎて、「あ、宝貝人間だ…」と思ってしまいましたすみませんすみません…

2019-09-10 23:38:52
たられば @tarareba722

・本作品の(アビーとは別の)もうひとりの主人公、シャルル=アンリ・サンソンは、史実では敬虔なクリスチャンであり、彼が生きた当時は神権と王権が密接でした ・『死刑執行人サンソン―国王ルイ十六世の首を刎ねた男』(安達正勝著)は読みやすさと充実度を兼ね備えた名著です ・すっかりファンです

2019-09-10 23:40:08
たられば @tarareba722

・同書によると、ギロチンは「死刑の残酷さの低減」、「死刑方法の違い(≒身分の違い)による差別撤廃」を理由に導入(以前はサンソン家のようなプロの処刑人が剣による名人芸で首を斬り落としたり、馬で五体を引っ張って八つ裂きにした) ・しかしその「簡便さ」で、処刑数は爆発的に増加した皮肉

2019-09-10 23:42:37
たられば @tarareba722

・また、処刑人の家は代々「処刑装置」として法体系に組み込まれており、自分自身も王権、すなわちこの世界の一部であると自認していました ・そうして自分と世界を受け入れていたからこそ、(クリスチャンとして)サンソンの耳に響く「汝、殺すなかれ」(十戒の一節)の重みと痛みを感じ続けていたと

2019-09-10 23:43:49

一部一章オルレアンにみる「サンソン」

たられば @tarareba722

・ここでやや話は飛びますが、FGO第1章第1部「オルレアン」のシナリオを見返すと、この「セイレム」と見事にパラレルになっていることがわかります(第1章のサンソンは「壊れている」と言えますが、それゆえにサンソンというキャラクターと本シナリオでの立ち位置や振る舞いがより純粋に浮かびます)

2019-09-10 23:45:05
たられば @tarareba722

・オルレアンから去るときに、サンソンは「(もう一度きれいにマリーを処刑できれば)きっと、きっと君に許してもらえると思ったから…」と語ります ・神と王の名において下された処刑命令は誰かが実行しなければなりません ・そうして王権に従って処刑してきたサンソンは、法の名の下に王も処刑したと

2019-09-10 23:48:57
たられば @tarareba722

・サンソンは(王が王として生まれたように)処刑人の家に生まれた自らの仕事を誇っていました ・けれどサンソンはマリーに、そして世界に許されたかった ・できれば別の方法で世界と和解したかった ・本シナリオのサンソンは、カルデアのサンソンにとっての夢だったのかもしれません

2019-09-10 23:50:50
たられば @tarareba722

・いっぽう第1部第1章で、マリー・アントワネットは、かつてフランスそのものであったジャンヌ・ダルク(オルタ)によって殺されます ・神と王によって火あぶりにされたジャンヌと、民衆によって断頭台に上がったマリー ・FGOは(よりにもよって)この二人に「世界を許す」と語らせているわけですね

2019-09-10 23:52:01

セイレムの「サンソン」

たられば @tarareba722

・さてセイレムに戻って ・この世で、代々「処刑人」を継いできたシャルル=アンリ・サンソンだけは、法の名において下された判決を覆すことはできないのですね ・たとえそれがどんな茶番でも ・それは今までの彼の所業を、先祖の所業を、手にかけた人々をすべて裏切ることになってしまう

2019-09-10 23:53:37
たられば @tarareba722

・そうして処刑台に向かったサンソンは、のちほど「セイレム」のエピローグで象徴的な「剣」(ギロチンの発明前、サンソンを含む処刑人は剣で死刑囚の首を落としていました)を持たないままマリーと出会い、「できれば踊りを教えてほしい」と語りかけたわけですね ・泣いた ・めっちゃ泣けた

2019-09-10 23:55:00
たられば @tarareba722

・日本で一番有名なマリー・アントワネットの評伝は、おそらくシュテファン・ツヴァイクが書いた『マリー・アントワネット』だと思うのですが(角川文庫から中野京子訳で新版が出ており、これがとてもよい)、それを読むと(かなりマリーびいきでルイ十六世の描写がえらい愚鈍で悲惨ですけども)、

2019-09-10 23:56:31
たられば @tarareba722

フランス革命という人類史が誇る大いなる進歩、近代国家の産声が、いかにめちゃくちゃで、行き当たりばったりで、陰惨で、冷酷で、残忍で、流言飛語や密告、中傷、なによりある種の熱狂によって多くの人々が処刑・惨殺されていたことがわかります(九月虐殺や地獄部隊でググるとあれこれ出てきます)

2019-09-10 23:57:31
リンク コトバンク 九月虐殺(くがつぎゃくさつ)とは - コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 - 九月虐殺の用語解説 - フランス革命期の 1792年8月 10日から9月にかけての「第1次恐怖政治」の頂点をなす事件。9月2日以来アベイ,ラフォルス,コンシェルジュリなどの監獄にあった反革命容疑者約 1200人がパリの民衆によって虐殺された。当時の司法相であった G.ダ...
リンク www.weblio.jp 地獄部隊とは - Weblio辞書 地獄部隊とは? 地獄部隊 (Colonnes infernales)とは、ヴァンデ戦争中に共和国軍のテュロー将軍が指揮した、ヴァンデ軍の残党を殲滅させるための作戦である。脚注^ (Reynald Secher, La...
たられば @tarareba722

・本シナリオにサンソンを配置することで、集団ヒステリーとしか言い様がない「セイレムの魔女裁判」も、人類史に刻まれたフランス革命における革命裁判と似た「死の茶番」ではないか ・人はいつでも、どんな場所でも、愚にもつかない言いがかりを元に、同胞を吊るすのか…と感じざるをえません

2019-09-10 23:59:04
たられば @tarareba722

・FGOは、広範にユーザーを楽しませるだけでなくて、関連作品や登場人物、作品舞台の時代背景を調べてみると、ヒューマニズム(人間主義)というものに絶望する仕組みになっていると感じています ・浅はかで、愚かで、騙し、妬み、同胞を憎み、同士討ちを好むのが「人」という生物だと歴史は語ります

2019-09-11 00:00:36
たられば @tarareba722

・「オルレアン」から通して見ると一本の筋でつながっているように見えるわけで、つまり人間は、文明は、(神や王の命令だけでなく)自由や平等の名の下に「こんなこと」をしてしまう存在であると、それでも愛せるか、と問われている気分になります ・そしてその答えもまた同作にあると思っています

2019-09-11 00:02:55
たられば @tarareba722

・それは、主人公であるマスターを含め、わたしたちはどうしようもなく人間であり、「こんなことをする人間」を抱きしめて生きるしかないのだと ・以下、オルレアン第11節「洗礼詠唱」で(マリーを永遠に失ったことがわかった直後に)述べられた、モーツァルトによるマシュへの言葉を引用します

2019-09-11 00:04:07