【わからない秋】福間健二 #k2fact233

福間健二 @acasaazul

きらら通り、また来ちゃった。ゼロからはじまってない。京都じゃない。プライドじゃない。まちがったわけでもない。この古シャツのように、これが最後と思っても最後にならないものってある。残っている力、愚かな力が、途中の風を呼ぶ。きらら通り、もう光る子はいない。（わからない秋１）#k2fact233

福間健二 @acasaazul

アブストラクト。なんだろうと考えさせる道路の落書きもなく、胴長で忠告好きのおっさんたちの数も減り、待っていた書留やっと届いても「よかったね」と言ってくれる口も目もない。恋の色、赤じゃなくてはという詩も忘れられ、秘密、秘密。鳴ったか、かたすみの二人の鈴。（わからない秋２）#k2fact233

福間健二 @acasaazul

箱の中身をどうするのか。だれかの影に隠れる。そのだれかがあけてしまった箱。やられた手口でやりかえせばいいっていうのは、ただ働きを押しつけられた死人の言うことだ。つまりは本に書いてあること。弱気の、掃除。カティア・ブニアティシヴィリのピアノを聴きながら。（わからない秋３）#k2fact233

福間健二 @acasaazul

まだ止まらない針。でも、できていたはずのごちそうが跡形もない。音楽があればいいと残った者に分配されるのは、塩蜜とか、よくわからない味の、どこに行ってもおなじだとは諦めない瞳からの、微かな光のしずくだ。酒はある。人気のカティアのYouTubeはきりなくある。（わからない秋４）#k2fact233

福間健二 @acasaazul

夢を見た。混乱した。確かなのは、いや、一番わからないのは、おまえの勝ちだと言われたこと。人はなにかのなかにいる。たいてい枠が曲がって釘が出ていたりするなにか。足りない。太宰治、三十八歳。佐藤泰志、四十一歳。そのくらいで終わっても余るものはほとんどない。（わからない秋５）#k2fact233

福間健二 @acasaazul

きらら通り、引っかきまわす楽しみはまだある。ほっそりしたもの、植物の幹や枝かと思うが、私的な野心をこえて迫れば発熱する。しなやか、でなくても自分で動いて、招かれたことに感謝とよろこびを感じる。今年の、九月十一日の夢。光のなかの脳に、カティアのショパン。（わからない秋６）#k2fact233

福間健二 @acasaazul

【訂正】 感謝とよろこびを感じる。 ↓ 感謝とよろこび、素直に。 （わからない秋６）#k2fact233

福間健二 @acasaazul

熱が出て、セックス、ドラッグ、壁にサイコロ遊びをする少年たちの絵がある狭い部屋の座卓に並んだ器具の、突きささる意欲。読みとろうとすればするほど重くなる存在理由。これは余っている。使われていない。外の、逃げる足音、追う足音。通りがひとつの幽霊になって。（わからない秋７）#k2fact233

福間健二 @acasaazul

倒れるように走り、結局、気分爽快。それで終わりならいいけど、通りが消えても、こちらの返事におかまいなく世界はつづく。現れるもの、消えるもの、どちらにも注意する必要がある。弱い動物のための母親の役、そして一緒に叱られる役。つねに動いているなにかのなかで。（わからない秋８）#k2fact233

福間健二 @acasaazul

笑いたいのを我慢している。だって、この秋。手紙の言葉と気配だけで、実体は線路の向こう側でいつまでもグズグズしている。待て、なのか。このままではすまないと思ったぼくを抱いていたものを次はぼくが抱くのだ。虫の声。満月。水辺の、並べられた石。地球を感じる。（わからない秋９）#k2fact233

福間健二 @acasaazul

きらら通り。通りが死んでもそこに生きるもの。一匹、黒いしっぽのハクビシンが通った。紙ゴミが舞い、人もいる。耳から血が流れている若者を囲む人だかり。それには無関心な老いた男。その秋。目で見てわからなくても風の音でわかる。千年以上前の詩人がそう教えている。（わからない秋10）#k2fact233