ヨロシサン・エクスプレス #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「乗務員の奴らが言ってたぜ。カイシャのニンジャなのに殺された、って」ザックは言った。ニンジャ、と言う時、彼の言葉は震えた。「きっと、だから死体が一個しか見えなかったんだ。ニンジャは爆発して消えちまうだろ」「そうだ」「ヨロシサンのニンジャがこのシンカンセンに」サガサマは訝しんだ。24

2019-10-11 23:36:23
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「うん。間違いないよ。それで、社員が贅沢してたのかよッて、他の客に文句言われてたからね」「警備員にニンジャを使っていたのでしょうか?」コトブキは考えた。「ここの警備が日頃の仕事なら、客室を充てがう事もないだろう」マスラダが指摘した。 25

2019-10-11 23:38:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何か特殊な目的があって乗車していたヨロシサンのニンジャが、殺された……という事になります。成る程、剣呑ですね」サガサマは腕を組んだ。それから彼は苦笑した。「はは……しかし、となればサイコ殺人鬼の類いではないという事で、暗殺や企業紛争のセンですね。我々には無関係だ。よかった」 26

2019-10-11 23:44:43
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「そんな!正義はどこにあるのですか!殺人事件ですよ!」コトブキが怒り、サガサマは慌てた。「アイエッ、そういう意味ではなくてですね……あくまで実質的な安全の観点……」「ヤモト=サンどう思いますか?」コトブキがヤモトに水を向けた。ヤモトは上の空だったので、ビクリとして彼女を見た。 27

2019-10-11 23:48:06
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「……そうだね」ヤモトは考えながら言った。「アタイもサガサマ=サンと同じ考え。アタイ達はただの乗客だし、鉄道の人たちが対処する事だよ。気をつける事としては、彼らの仕事の邪魔をしない事じゃないかな」「ウーン……」「放っておけば、それはそれで面倒だぞ」口を挟んだのはマスラダだった。28

2019-10-11 23:53:19
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「そうです、事件の真実……」コトブキを遮り、「おれ達は正規の乗客じゃない。犯人探しやら何やらを警備員の連中が始めて、客室一つ一つをあらため始めたら、うまくない。こんなところで降ろされれば面倒だ。目的地にはまだ十分近づけていないぞ」 29

2019-10-11 23:58:43
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「そうだよ。ヤバいじゃんか。どうする?」ザックが心配した。コトブキが立ちあがった。「わたしに、よい考えがあります」 30

2019-10-12 00:06:55
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……食堂の連結ドアを開き、サガサマはコトブキを伴って事件車両に入り込んだ。警備員が見咎め、帰らせようとした。サガサマは先手を打ってオジギし、名刺を差し出した。「ドーモ。私は……チカハのサラリマンでして。サガサマと申します」「申し訳ないですが、お戻りください」「ニンジャ社員です」31

2019-10-12 00:10:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サガサマは明かした。「わたくしは助手のコトブキです」コトブキはその横でしとやかに微笑んだ。「チカハのニンジャ・エージェントの問題解決能力をご存知ですか?たまたま居合わせた我々は、突発的殺人事件への対処が可能です。ニンジャを殺すサイコパスの相手ができるのは、同じニンジャです」 32

2019-10-12 00:14:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

超然と流暢に話すコトブキを、サガサマはちらちらと見た。車両関係者に根掘り葉掘り疑われる前に、善意で接触し、友好的な関係性を築いてしまうのがよい。確かにコトブキのヤバレカバレなアイデアには少しだけの理がある。だが、あまりに後先考えないやり方だ。 33

2019-10-12 00:18:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(安心してください。マスラダ=サンはすごい勘の鋭さを持っています。百戦錬磨です)コトブキは請け合った。(わたし達が色々やり取りして、情報を集めたり時間を稼いでいる間に、不穏なニンジャ存在を見つけ出してくれると思います!)……とにかく切り拓いてゆくしかない。サガサマは腹を決めた。34

2019-10-12 00:20:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「実際そうです。ニンジャにお任せを」サガサマは実直な表情で警備員一人ひとりを見ていった。「ニンジャ……」警備員達のこめかみを冷や汗が流れ落ちた。「それは……助かるかも知れません」「渡りに船ですかね」彼らは顔を見合わせた。突発事態への対処が恐ろしく、責任問題を避けたい一心だ。 35

2019-10-12 00:26:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

しかも彼らは非ニンジャであり、ニンジャを相手にあからさまに邪険な対応をすることを躊躇っていた。サガサマは無言の圧力をかけた。やがてチーフ警備員がオジギした。「ア……では……現場判断ということで。ご協力頂ければ助かります」「はい、ヨロコンデ!」 36

2019-10-12 00:29:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コトブキがサガサマを見てにっこり笑った。サガサマは笑い返し、背中の汗を意識し、咳払いをひとつした。それで平常心が戻ってきた。今のこの事態は、彼がサラリマン人生で経験してきた「最悪」には全くもって程遠い。彼は警備員達に会釈し、事件現場にとりあえずエントリーした。 37

2019-10-12 00:32:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「大丈夫かな、オッサン達」ザックが連結部の扉に歩いていき、背伸びして中を伺っている。マスラダはザックからヤモトに目を移した。マスラダとヤモトは、いまだテーブルで二人、向かい合っていた。「……関係はあるか。昨晩の外出と」マスラダは尋ねた。ヤモトの目が桜色を深めた。 38

2019-10-12 00:34:52