ヨロシサン・エクスプレス #5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サガサマは車両内を歩き回り、ニンジャ達を見渡した。サクリリージとキャスケットにはアリバイがある。アクセルジャックは極めて危険なニンジャである事が明白。サガサマはチカハのデータベースをコールし、彼の推定前科を調べたが、多すぎて意味がなかった。それでも彼は無関係と見える。 22

2019-10-19 23:33:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アクセルジャックは、これみよがしに見せつけている通り、ジャックナイフが凶器だ。無数の刃物を持ち運び、切り裂いて殺すニンジャである。だがヨロシサンの非ニンジャの社員の死体の傷は刃物によるものではない。不完全だが、アリバイもある。シロだ。……では、カナスーアは。 23

2019-10-19 23:36:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんだね。なぜ、なぜ私を見る」カナスーアはサガサマを睨んだ。「まさか、骨董品が荒らされかかっていた事で、この文化人たる私を疑うと……?そういう事なのか?茶器があるから何だというのだ!」「確かに、貴方どうやら有名人でいらっしゃる。私、不勉強でしたが」サガサマはこめかみに触れた。24

2019-10-19 23:42:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それはそうだ!私は講演会に引っ張りダコだぞ。私は古物商であり、美食家でもあるんだ。名店推薦レビューには多数の『良い』がつく!わ、ワシに逆らえん奴は沢山いるぞ!」「社の与信データベースの返してきた情報では、その……貴方の講演が行われた都市で、過去に博物館荒らしが起こった事が」 25

2019-10-19 23:45:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何?」「犯人が逮捕されていないようです。この件が、貴方のお名前に、関連付けられていますが……その……」「名誉毀損すぎる!半日後には貴様のカイシャと貴様自身を訴えてやる!ワシがニッタ・カタツキを盗むために殺人したというのか!?」「さ、さすが……茶器の名前が写真一枚ですぐに?」 26

2019-10-19 23:49:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア……とにかくやっておらん!」カナスーアは否定した。「ニッタは有名な茶器だろうが!ナショナル・トレジャーだ!ワシのようなメイジンならば一瞬でわかる!」「ほれ見ろ!やはりそのオッサンだ!時間の無駄だッ!」キャスケットが椅子を蹴り、ズカズカとカナスーアに近づく!「死刑にしろ!」 27

2019-10-19 23:51:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんだキミは!暴力は……」慌てるカナスーア!凄むキャスケット!「犯人だの、どうでもいい。俺には確かめてェ事があるンだよ!」「はははは、やめておけキャスケット=サン。力を温存しろ」サクリリージは笑いながら咎めるが、止めはしない。キャスケットは拳を振り上げる!「イヤーッ!」 28

2019-10-19 23:54:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」割って入ったのは、サガサマだ!左腕の肘先を盾めいてかざし、右掌を添えて、キャスケットの拳を受け止めた。バチッ、と音を立てて、サイバネティクスがノイズ火花を散らした。「どうか、文明的に……!」サガサマは強調した。キャスケットは鼻を鳴らし、拳を引いた。 29

2019-10-19 23:57:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ワシは、やっていない!フザケルナ!」サガサマに守られたキャスケットが我に返り、激昂した。「ワシは……絶対にやっとらんぞ!証拠を出せ!ワシはまだ……」「まだ?」意識を集中させていたコトブキが聞き咎めた。「今、なんと?」「う、うるさいぞ!ウキヨめが!イヤーッ!」チョップ攻撃! 30

2019-10-20 00:02:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイヤーッ!」コトブキはカンフー・カラテでカナスーアのチョップを逸らし、顎に掌打を返した!「グワーッ!」カナスーアは怯み、身構える!「おやめなさい!」そのときサガサマが二人の手を掴んで止めた!「コトブキ=サン!貴方も冷静に……冷静……ン?」彼女の足元に、何かが落ちた。 31

2019-10-20 00:04:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」慌てて拾い上げようとしたコトブキに先んじて、サガサマはそれを取った。「……これは……オリガミ……」然り。ツルのオリガミ……縁が焼け焦げている。「ああッ……!」コトブキが悲鳴をあげた。マスラダは腕を組んだまま、俯き、その表情は窺い知れない。 32

2019-10-20 00:08:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これは」「違うんです!」コトブキが奪おうとしたが、サガサマは躱した。「オリガミだ。何故あなたがこれを隠そうとしたのか……つまり……ええと、これは……」(マスラダ=サン)コトブキはマスラダを見た。(スミマセン……もう、庇いきれない……でも、本当に貴方なのですか……?) 33

2019-10-20 00:11:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがマスラダは、じっと床を見つめていた。「違うんです、と来たか」キャスケットは興味をそそられた。そして一瞬の隙をつき、サガサマの手からオリガミをひったくった。「ホホォー。コイツは間違いないぜ」「やめろ。キャスケット=サン」サクリリージが言った。今度は有無を言わさぬ語調だった。 34

2019-10-20 00:15:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「索敵にノイズを混ぜるんじゃあない!」「……フン」キャスケットは意外にも素直に従い、サガサマから離れた。サガサマとコトブキはきょとんとして、互いを見た。カナスーアは逃走のタイミングをはかり、ドアをちらちらと見ていた。マスラダはじっと床を見続ける。 35

2019-10-20 00:17:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて、テーブルのひとつの陰から、小さな蝶のオリガミがひらひらと飛び出てきた。マスラダが目で追っているのは、そのオリガミだった。オリガミは桜色の光を帯び、なにかを探すように飛び続けていたが……やがて、床の一点に着地、静止した。「わかった」マスラダは頷き、不意に立ちあがった。 36

2019-10-20 00:19:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「え?」「マスラダ=サン?」サガサマとコトブキが目で追う中、彼はずかずかと車両を進んだ。そして蝶の着地点で片膝をつき、チョップを振り上げた!「……イヤーッ!」KRAAAASH!彼の鋭利なチョップ突きは床を砕き、抉りぬいた!「グワーッ!?」床下から何者かの悲鳴! 37

2019-10-20 00:21:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「マスラダ=サン!?」コトブキは二度叫んだ。マスラダは床下からニンジャを引きずりあげた!然り、ニンジャである!「グワーッ!」襟元を掴まれ、苦悶しているのは、腹部に吸盤じみた奇怪な機構を有するニンジャであった!その上腕にはアケチの印あり!ネザーキョウのニンジャだ! 38

2019-10-20 00:24:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんな!犯人は!?」コトブキはネザーキョウに恐怖する暇も惜しみ、マスラダに問うた。「コイツだ。打ち合わせ通り、お前たちが時間を稼ぎ、おれが探し出す。そういう手筈だろ」「は……離せ!」ニンジャがマスラダに吊り上げられた状態で蹴りを放つ!「イヤーッ!」 39

2019-10-20 00:28:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」KRAAASH!マスラダはニンジャを床に叩きつけた。「グワーッ!」ニンジャはウインドミル蹴りを繰り出して牽制、間合いを取り、起き上がりった。「き、貴様……何故わかった……!」呻き声をあげ、カラテを構え直す。……車両内のニンジャ達が、全員身構えた。 40

2019-10-20 00:30:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうでもいい」マスラダは無慈悲に言い放った。だが読者の皆さんには、彼の居場所をマスラダが見破った理由を説明すべきだろう。答えは蝶のオリガミにある。ヤモトはまだ、この列車を離れていない。……彼女は昨晩、ニッタ・カタツキを強奪しようとした敵ニンジャのもとへ駆けつけた。 41

2019-10-20 00:35:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャは狼藉を行った直後であり、アタッシェケースを物色しようとしていた。ヤモトに気づき、驚くほどの敏捷性で逃げ去ろうとしたニンジャを、ヤモトはオリガミ・ミサイルで攻撃。不覚にも仕留め損なった彼女であったが、オリガミ・ミサイルが与えた傷を追跡するという手段が残されていた。 42

2019-10-20 00:39:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャは目的を果たせていない。ゆえに列車内に潜伏し続け、必ず戻ってくる。それがヤモトの見立てだった。だが、ヤモトは何故、この食堂車にとどまって、他の者が居る中で追跡行為を行わず、ただマスラダに「蝶を追え」とだけ伝えるに留めたのだろうか?不確実さが増したというのに? 43

2019-10-20 00:43:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それはお答えできない。今はまだその時ではない!……今は見よ、マスラダのオジギを!オジギの瞬間、彼のフードはほどけてマフラーめいた赤黒の布となり、装束が形成された。彼は懐から取り出した「忍」「殺」のメンポを装着し、顔を上げた。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」  44

2019-10-20 00:45:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。デスリモーラです」ニンジャはオジギを返した。ニンジャスレイヤーの名を耳にした時、サクリリージは強い心の動きを押し殺した。それよりも今、為すべき事があった。彼とキャスケットの目的の第一が、まずは達成された。彼はフワリと浮いた桜色の蝶を見、それから天井を見上げた。 45

2019-10-20 00:49:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そこか」サクリリージはニヤリと笑った。デスリモーラは威嚇的に周囲を見渡し、カラテを見せ、牽制した。そして……跳んだ!サガサマの横に積まれたアタッシェケースをめがけ!「モハヤコレマデ!イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーがアンダースローでスリケン投擲!「グワーッ!」 46

2019-10-20 00:52:11