すいこばなし【北方謙三水滸伝・楊令伝小噺集】10/28-31

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

林冲「…」 公孫勝「…」 索超(久しぶりだな、劉唐) 劉唐(よう、索超) 林「…」 公「…」 索(久しぶりにあったもんだから、お互いなにを話せばいいか分からないのか) 劉(俺たちの目に見えないところで、既に立合いが始まっているぞ) 林「…」 公「…」 索(膠着している) 劉(突破口を見出せない)

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林「…」 公「…」 索(睨み合ったまま、早二刻) 劉(双方一度も目を逸らさないのはさすがだ) 林「…」 公「…」 索(何を見させられているのだろう、俺たちは) 劉(二人だけの世界だ) 林「ウスノ…」 公「馬鹿…」 索(意を決して双方口火を切ったが) 劉(タイミングが丸かぶりだ) 林「…」 公「…」

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索「一言の会話もないまま離れたものの」 劉「双方一度たりとも目を逸らしていない」 林「…」 公「…」 索「目はいいからな」 劉「二里離れても逸らしていなかったよ」 林「…」 公「…」 索「もどかしいな」 劉「そう思う俺たちも大概だぞ、索超」 林(口火を切れ、ウスノロ) 公(何か言え、馬鹿)

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林冲…結局一言も話さなかったが、目線は最後の最後まで逸さなかった。 公孫勝…林冲の方が先に目を逸らしたから勝ったと思った。 索超…後ろ向き乗馬は危ないですよ、林冲殿。 劉唐…後ろ歩きでも、我らの進軍に軽々ついてくるからな。

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宋江「電子書籍版『替天行道』の発刊が決まった」 魯達「正気ですか？」 宋「魯達も読まぬか？」 魯「書籍派なので」 宋「そうか」 魯「蕭譲や金大堅は？」 宋「蕭譲は帝や高俅の文字をフォントにして荒稼ぎ」 魯「…」 宋「金大堅は電子決済システムを構築して荒稼ぎだ」 魯「世界観が息をしてない」

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宋「電子書籍発刊において施恩に多大な協力をしてもらった」 魯「一番反発すると思ったのですが」 宋「期間限定無料公開の広告を打ち出し、宋国中で物議を醸した立役者も施恩だ」 魯「我々は反乱を起こしているのですから、もっと汚い手を打っても良いのでは？」 宋「志に反する事はならぬ」 魯「…」

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宋「しかしな、魯達」 魯「はい」 宋「『替天行道』の売上は全て梁山泊の物資や兵站などの資金に使われてしまう」 魯「…」 宋「原案は私で、書いたのはお前だ」 魯「…」 宋「なぜ我々に一文の印税も入らぬのだろうか」 魯「確かに」 宋「個人で使える銀が欲しい…」 魯(あの棚の美女フィギュアか…)

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宋江…使う銀は全て呉用に管理されている。 魯達…隻腕だからスマホは苦手。 蕭譲…アナログからデジタルに切り替えたが、電子筆だけは使わない。 金大堅…決済システムkindaikenは、筋斗雲の可愛いロゴが目印。 施恩…まだ宋国で消耗してるの？を合言葉に、入山を促すインフルエンサーとして活躍中。

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王母「張平」 張平「！」 母「あまり楊令を困らせぬように」 楊令「私の食べたかった王母様の饅頭はどこだ？」 張「…」 母「まだ、間に合いますよ」 楊「張平は食べてないと言っていたし、疑うのは悪い」 母「…」 張「行って参ります…」 楊「しかし、この皿の上以外のどこにあるというのだ」

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張「楊令殿」 楊「何だ、張平？」 張「…」 楊「どうした」 張「…楊令殿の饅頭は」 楊「…」 張「…足が生えて、小麦畑に帰りました」 楊「なに!?」 張「子午山に出てきた裸の巨人の事はご存知ですよね」 楊「竜を身にまとっていたという」 張「その巨人が、楊令殿の饅頭に足をはやして逃したのです」

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楊「どうやって、その巨人は饅頭に足をはやした？」 張「巨人の使い魔が妖術を使って」 楊「…その使い魔は、私も会ったことがある」 張「え！」 楊「小賢しい知恵が回り」 張「…」 楊「息をするかの様に人を誑かす悪い使い魔だ」 張「…」 楊「今からその使い魔を退治する」 張「！」 楊「覚悟しろ」

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楊令…晩ご飯の張平の好物を一週間貢ぐことを条件に解放した。 張平…最近言い逃れが聞きにくくなっている。 王母…成長しましたね、楊令。 王進…裸の巨人と使い魔から子午山を守るべく、門の前に立って死域。

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孔亮「朱富が面白い饅頭を売っていたので買ってきた」 劉唐「それは？」 孔「この饅頭の中に一つだけ激辛のものが入っている」 楊雄「ほう」 公孫勝「…」 樊瑞「人数分あるな」 孔「試しませんか？」 劉「面白い」 孔「恨みっこなしですからね」 楊「恨みはしないが、憎しみは買うかもしれんからな」

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孔「皆、饅頭は取りましたね」 公「…」 劉「…」 楊「…」 樊「…」 孔「不正防止のため、一緒に食べましょう」 公「…」 孔「いざ！」 公「…」 劉「…」 楊「…」 樊「…」 孔「…」 劉「美味い…」 楊「いつもの味だ」 樊「お前は、孔亮？」 孔「俺も何とも無い」 劉「…ということは？」 公「」

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孔(嘘だろ…) 劉「もしや、公孫勝殿…」 楊「引きましたね！」 公「ひいて、ない…」 樊(嘘だ) 孔(俺を見る目が憎悪に燃えている) 劉「水はないのか、孔亮！」 孔「各々が携帯している分しか…」 公「…！」 劉「切らしてる！」 孔「くんできます！」 楊「逃げるなよ」 公「…！」 樊(必死で堪えてる)

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公孫勝…孔亮を木に縛り付けて寸止めの練習台にした。 劉唐…水を用意しない準備不足を責められているのだな。 楊雄…これは辛いぞ… 樊瑞…やはりもってるな、公孫勝殿。 孔亮…恨みっこなしって言ったじゃないですか！ 朱富…パーティー用とはいえ、味に妥協はしませんよ。本気で辛くしました。

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童貫「調練をするのに飽きた」 鄷美「元帥!?」 畢勝「嘘をつく調練ですよね!?」 童「飽きた…」 鄷「この兵の中に、医者が出来る者はおらんか！」 畢「メンタルケアに明るい者が望ましい！」 馬万里「外傷を縫うならまだしも…」 韓天麟「心の傷は縫えんぞ…」 李明「…ならばいっそ、休まれては？」

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鄷「李明！」 畢「元帥に何を！」 童「鄷美、畢勝」 鄷・畢「！」 童「李明の話を聞こう…」 李「…謹んで、申し上げます」 童「良い」 李「元帥は既に調練をなさっています」 童「それは？」 李「生きる、という調練を…」 童「…続けよ」 鄷(元帥に刺さりそうなフレーズだ) 畢(成長したな、李明)

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李「生きるだけで大変な世で、元帥は世界一の禁軍の調練を課せられているのです」 童「…」 李「己への厳しい調練も一日たりとも怠らず、その元帥の背を見て、我らも厳しい調練を重ねることができるのです」 童「…」 李「元帥であられる重圧など、私如き想像もできませぬが…」 童「礼を言う、李明」

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童貫…これほどの者たちが数日休んだところで、弱くなるわけがないか… 鄷美…不意の長期休暇の許しに戸惑いを隠せない。 畢勝…スケジュールを埋める調練に邁進中。 馬万里…大手柄だ、李明。 韓天麟…次期元帥はお前だな。 李明…ご冗談を…

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王倫「やい、貴様ら！」 杜遷「なんだ、クソ首領」 宋万「くだらん事だったら許さんぞ」 王「…私の生存ルートを、一緒に考えてくれ」 朱貴「お前はもう死んでいる」 焦挺「帰りましょう皆さん」 李雲「茶番にもなりゃしねえ」 湯隆「地縛霊を切り刻む剣でも打ってみようかな」 王「待て！」

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焦「梁山湖の石でも積んでた方がまだマシだ」 王「…」 杜「本当に強くなったな、焦挺」 焦「…じゃあ王倫。条件があります」 王「なんだ、焦挺殿」 焦「…殿？」 王「焦挺様！」 朱(凄いな) 宋(容赦ねえ) 焦「この容器に水を汲んできてください」 王「分かった！」 焦「…」 王「…かしこまりました」

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王「容器を持つだけで一苦労だ…」 焦「…」 宋「焦挺は何を？」 杜「…後で解説するから、見てろ」 王「汲んできました！」 焦「！！」 王「…焦挺様、何を」 焦「これが、答えだ」 王「」 杜「覆水盆に返らず」 宋「…」 李「焦挺、お前…」 湯「すげえものを見た」 朱「飯、行こうか…」

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焦挺…今日は皆さんが没面目ですね。 杜遷…こぼした水は二度と戻らんだろう？ 宋万…なるほど… 朱貴…一人で釣りをする背中は、さながら太公望。 李雲…あいつは役人になりたかったんじゃねえのか？ 湯隆…焦挺にやり返されちゃ、世話ねえや。

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王倫…死んでからショックだった出来事ランキング、ワースト３に入る出来事だった。