すいこばなし【北方謙三水滸伝・楊令伝小噺集】10/28-31
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楊志「白嵐め…」 石秀「どうされた、楊志殿?」 楊「…令の友に、白い大きな犬がいる」 石「ほう…」 楊「私の方が楽しく遊べるというのに、令め、私より白嵐と遊ぶ方を選ぶのだ」 周通(大人げねえな…) 石「…私も山を走る時に、白い大きな犬と出会いましてな」 楊「なに!」 石「私の調練の友です」
2019-10-30 07:54:31楊「その犬と会わせろ、石秀」 石「構いませんが、一つだけお願いしたいことが…」 楊「それは?」 石「実は…」 石「公孫勝!」 白嵐「!!」 楊(まさか本当にその名で呼ぶとは…) 白「!!」 楊「また会ったな、白嵐…」 白「!!」 楊「!?」 白「!!」 楊「奇襲とは卑怯な」 石(本気で負けてる)
2019-10-30 07:54:31楊「これで勝ったと思うなよ、白嵐」 白「!!」 石(負け惜しみだ) 楊「吹毛剣の斬れ味もすっかり落ちてしまった…」 石「そうなのですか?」 白「!!」 楊「全部白嵐のせいだ」 石「…聞き捨てなりませんな、楊志殿」 楊「石秀?」 石「私は公孫勝を二竜山の総隊長と認めます」 楊「!?」 白「!!」
2019-10-30 07:54:32楊志…寝返るのか、石秀! 石秀…公孫勝の方が強いのは自明でしょう。 周通…楊志殿と石秀が冷戦状態に? 白嵐…首輪につけた盗聴器から、意図せず二竜山の離間の計に成功したのを聞いた飼い主は小首を傾げた。
2019-10-30 07:54:37蔡福「真婉…」 真婉「…」 蔡「また俺の着物に嫌がらせをしたな」 真「…」 蔡「今回は宮殿に着く前に、許貫忠から指摘されたから良かった」 真「…」 蔡「意図を教えてくれ」 真「♪〜」 蔡豹「…」 福「…」 豹「贅肉の塊に教える意図などない」 福「…」 豹「皮下脂肪と口を聴く女などどこにいる」
2019-10-30 12:27:01福「…」 豹「私と口を聞きたくば、女真の崖に生えている、一輪の花を摘んでくるがよい」 福「なぜ女真の長老のような口調なのだ、豹?」 豹「私は母上の護衛。贅肉を父だと思ったことなど一度も無い」 福「その憎まれ口の語彙は、どう考えても俺たち兄弟の持って生まれたそれだな、豹」 豹「贅肉め」
2019-10-30 12:27:01福「こちとらひ弱な餓鬼を息子だと思わん」 豹「笑止」 福「俺の贅肉を移植して、お前を一人前の男にしてやろうか」 豹「貴様の皮下脂肪は毒素が凝縮された結晶だろうが」 福「俺の贅肉はKgあたり銀二粒はくだらん代物だぞ?」 豹「食肉衛生管理者が目を覆う代物だろうが!」 福「やはり俺らの息子だ」
2019-10-30 12:27:02蔡福…真婉はアレだけど、蔡豹にはなんだかんだで腹は立たない。 真婉…蔡福と一度も口を聞いていない。 蔡豹…蔡慶の息子。憎まれ口のレパートリーはさすが蔡兄弟の血を引くだけのことはある。
2019-10-30 12:27:05林冲「百里がまた面倒くさくなった」 皇甫端「奥方とのいざこざか?」 林「違う気がする」 段景住「そういえば、百里風にやけに近づく牝馬がいるぜ?」 林「なに!」 皇「あの気立てのいい穏やかな栗毛の馬か?」 段「そいつだ」 林「俺に黙って色恋にうつつを抜かすとは許せん」 段「お前も面倒だな」
2019-10-30 22:37:09百里風「…」 栗毛「♪」 林「あいつか…」 皇「嫉妬してないから、林冲」 段「相手は馬だからな」 百「!」 栗「…」 皇「どこかの馬鹿が素直になれんみたいな態度だ」 段「しょっちゅう見てるな」 林「首を捻じ切るぞ、貴様ら」 栗「!」 百「…」 皇「諦めんな」 段「頑張れ!栗毛!」 林「…」
2019-10-30 22:37:09百「…」 栗「♪」 皇「やっと素直になったか」 段「どっかの馬鹿もこれくらい早く素直になればいいものの」 林「裏へ来い、段景住」 栗「!」 百「!?」 皇「百里が追い回されとる」 段「何かやらかしたな」 林「なにをした」 茶「!」 栗「!」 百「…」 皇「浮気をしていたとは…」 林「けしからん」
2019-10-30 22:37:10林冲…浮気なんて死んでもできんぞ… 皇甫端…かつての嫁のことをほんの少し思い出した。 段景住…林冲に馬で引き摺り回された。 百里風…孤高のフリして実はかなりのプレイボーイ。馬だけど。 栗毛…許しません、百里風! 茶色…どちらか白黒つけなさい!
2019-10-30 22:37:14宣賛「今日は罠だらけの山中を行軍し、罠にかからず、罠を見抜く調練を行います」 穆弘「宣賛の罠は一筋縄では行かんだろうな」 呼延灼「お前は今までどれだけ罠にかかったのだ、関勝?」 関勝「数えきれん」 宣「まずは関勝殿に模範を見せてもらいましょう」 関「なに!」 呼(これは) 穆(見せしめだ)
2019-10-31 17:04:18宣「関勝殿。私のいる高みにまで登ってきてください」 関「…」 呼(関勝の気が鋭くなった) 穆(いったいどんな罠が…) 関「!」 呼「走った!」 穆「もう道を見つけたのか!」 関「」 呼「…」 穆「…」 宣「このように、思考を放棄し、正面突破を試みる者ほど容易い」 呼「考えてないだけだったか」
2019-10-31 17:04:18宣「まず第一の関門は、私の高みまで登ってくるように」 呼「関勝の穴は道のど真ん中だ」 穆「宣賛のことだから、行ける道は一つなはず…」 関「!!」 呼「関勝が這い上がってきた!」 穆「今度は宣賛の元に行く勢いだぞ!」 関「」 宣「…」 呼「あと一歩だったが…」 穆「ここまで読んでいるとは」
2019-10-31 17:04:19宣賛…迂回して後ろから来たルートを選択した彭玘が正解。 関勝…なぜか同じ穴に郭盛が落ちてきた。 呼延灼…山の木々の仕掛けに気を取られ、穴に落ちた。 穆弘…項充とコンビを組んで散策したが、死角の警備を怠り、二人揃ってあえなく落ちた。
2019-10-31 17:04:25李俊「寒い…」 童猛「罰金百文な」 李「しまった」 阮小七「ぶっちぎりで李俊殿が罰金払ってるな」 項充「示しがつかんぞ、李俊殿」 張順「寒いな」 李「張順!」 張「違う。李俊殿を寒いと言ったのだ」 李「やかましい!寒いと言ったら寒いと言った罰金を払え!張順」 張「李俊殿、二百文」 李「!」
2019-10-31 19:43:20七「冷たい水だな、兄貴」 阮小二「確かにここまで凍えそうな水になるのは珍しい…」 趙林「よく泳げるな、張敬」 張敬「こんなのが寒いなんて信じられねえや」 李「張敬!百文!」 童(小せえ) 順「今のは意味が違うだろう、李俊殿」 敬「寒くないですよ、こんなの!」 李「やかましい!百文!」
2019-10-31 19:43:20順「じゃああんたも泳げ、李俊殿!」 李「!?」 二「小七、水温は?」 七「俺の名前くらいかな」 童「死にかねんな」 李「!!」 順「逃げるな、李俊殿!」 李「寒い!寒すぎる!死ぬ!」 項「張敬、いくらだ?」 敬「銀二粒ですね」 李「湯を用意しろ!火をたけ!阮家の鍋を!」 七「銀五粒な」
2019-10-31 19:43:20李俊…よもやの出費で、朱富の店のつけが嵩んでしまった。 童猛…俺はまだ大丈夫だぞ。 阮小七…しかしなぜこんなに冷たくなったのだ。 阮小二…子供の頃はそんなことなかったのにな。 張順…潜水部隊の者でも中々厳しいな。 張敬…叔父貴と俺しか泳げませんな! 趙林…ギブアップした兵の回収係。
2019-10-31 19:43:24秦明「ここが梁山泊…」 孔明「秦明殿!」 秦「げーっ孔明!」 孔「…秦明殿」 秦「久しぶりだな、孔明」 花栄「孔亮は?」 孔「あいつは致死軍です」 花「青州軍も勢ぞろいか…」 孔「…誰か忘れてませんか?」 花「弓矢は忘れてないが?」 秦「そいつはあえて忘れてきたから、心配ない」 黄信「…」
2019-10-31 21:59:13花「いかん!剣を間違えた」 秦「将校か、孔明?」 孔「歩兵の将校で調練も任されています」 秦「お前の面倒見の良さは重宝するだろう」 孔「秦明殿はどこへ?」 秦「二竜山だ」 花「配属先の地図はどこだ?」 秦「二竜山を次の段階へ進ませるぞ、孔明」 孔「近くの白虎山は調練にいい山ですよ」
2019-10-31 21:59:13孔亮「おや、懐かしい顔ぶれが」 秦「孔亮か」 明「致死軍の報告か?」 亮「ご明察」 花「変えの着物はどこやった?」 亮「一人足りなくないですか?」 秦「忘れなければ、出番はあるはずだ」 明「多分愚痴ってますね」 黄「なぜ俺だけ置いてけぼりなんだ…」 兵「…そういうところじゃないですか?」
2019-10-31 21:59:13秦明…空気がいいな、梁山泊は。 花栄…ポッケにしまった地図の類を全部入れたまま洗濯してしまった。 孔明…俺ってそんなに器用かな、亮? 孔亮…少なくとも俺より花栄殿の面倒を見るのは上手いな。 黄信…置いてけぼりにされた愚痴を、日替わりで新兵相手に吐き続けている。
2019-10-31 21:59:17