茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第2372回「ある人物の社会的評価を低下させる人格抹殺の恐怖と、それを広げる無反省な人たち」

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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート2372回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、感想です。

2019-11-09 05:44:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

人格抹殺(character assassination)という言葉がある。政治家などの公人が、ネガティヴな情報を出されて、そのイメージが毀損され、公的な評価が落ちて、活動がしにくくなる現象で、アメリカの政治で問題とされるが、世界中で起こっていて、もちろんこの日本でも起こっている。

2019-11-09 05:47:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

2012年の米大統領選のキャンペーンで、当時まだ泡沫的だったトランプさんが、オバマさんが米国以外で生まれたのではないかという疑惑を盛んに言ったのが「人格抹殺」の一例である。根拠のない陰謀論だったが、保守派の有権者の間で、オバマさんの人的評価を低下させる一定の効果があった。

2019-11-09 05:49:01
茂木健一郎 @kenichiromogi

2016年の大統領選では、ふたたびトランプさんが、ヒラリー・クリントンさんのことを「邪悪なヒラリー」だとか、「彼女を投獄しろ!」などと連呼し、ふたたび保守派の候補者の間で、彼女の評価を低下させる人格抹殺に成功した。ロシアが関与したかもしれないピザゲートもあった。

2019-11-09 05:50:21
茂木健一郎 @kenichiromogi

人格抹殺の特徴は、それが良識派の眉をひそめさせるような虚偽の情報であったとしても、一定の有権者の心理に作用し、実際の政治が左右されてしまうことで、人格抹殺(キャラクターアサシネーション)という言葉が出てきたこと自体リアルポリティクスでそのような事例があとを絶たないことを意味する。

2019-11-09 05:51:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

英国のボリス・ジョンソンさんの政策への賛否は別として、彼もまた人格抹殺の対象。ロンドン市長時代にオリンピックの宣伝中に空中で停まってしまった動画(youtube.com/watch?v=3hRwnX…)、外相の時に日本を訪問してラグビーで少年を倒してしまった動画(youtube.com/watch?v=IBt8Ao…)が繰り返し流された。

2019-11-09 05:54:38
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茂木健一郎 @kenichiromogi

ジョンソンさんの人格の全体を見るのではなく、その一部分を拡大する。これは、虚偽の陰謀論ではないけれども、一種の人格抹殺である。そのようなイメージ操作が選挙民に影響を与えて、実際の投票行動やその人の社会的活動に影響を与える。人格抹殺は人々の認知的失敗に作用して、成功する。

2019-11-09 05:55:59
茂木健一郎 @kenichiromogi

日本でも人格抹殺は常に起こっている。古くは田中角栄さん。最近では小沢一郎さんや鳩山由紀夫さんに対する人格抹殺が効果的だった。日本での人格抹殺の特徴は、全くの虚偽というよりは、その人に関する情報の一部だけを拡大、強調すること。SNSでの無反省な拡散が、そのような傾向を助長する。

2019-11-09 05:57:23
茂木健一郎 @kenichiromogi

古代ギリシャにおいて、弁を弄するソフィストたちに対抗して、知の真の基盤を問うたソクラテスが、若者たちを惑わし異端を説くものとして罪を問われたのが人格抹殺の古典である。ソクラテスは結果として、命を失うことになった。弟子プラトンの悲しみと怒りに満ちた叙述が印象的である。

2019-11-09 05:58:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

人格抹殺の害に対抗するためには、一人ひとりがそのような事象があるという認識、アウェアネスを持つこと。人格抹殺は、常に、ほんとうは広い資質を持っているある人間の一部の印象(事実、虚偽にかかわらず)を拡大することで起こる。それは悪意のある人間によって生まれ、無反省な人たちが拡散する。

2019-11-09 06:00:20
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート2372回「ある人物の社会的評価を低下させる人格抹殺の恐怖と、それを広げる無反省な人たち」をテーマに、9つのツイートをお届けしました。

2019-11-09 06:01:19