- susan0smith1985
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『大絶滅恐竜タイムウォーズ』の主張は明確で、構成は理論的です。本作の第1の力点は、終結部において直接的にミカの台詞で主張として強調されています。"「邪悪だからだ。理由子エンジンは、邪悪だ!」"。この啖呵は痺れますね。しかし、通り一遍のメタ=フィクションなら、この後はフィクション内の
2019-12-30 20:44:45キャラクターがリアルから独立を獲得するというフィクションが展開されるところですが、本作はそうなりません。それはフィクションを階層化しただけに過ぎないからです。ゲームの『アンダーテール』などが、この類のメッセージ性が強く、かえって自家撞着の様相を呈するメタ=フィクションの典型で
2019-12-30 20:48:37しょう。そのため、本作は全体の構成を①二人称の語りによるフィクション②前半を二人称の語りとするメタ=フィクショナルなスリップストリーム③メタ=フィクションという3部構成とし、メタ=フィクションの段階ですでにフィクションを解体し、そして間テクスト性におけるフィクションを問題化します。
2019-12-30 20:53:40ここが第2の力点になっています。SFの1つの典型は物語の規模がどんどん大きくなってゆくことで、同作の傑作『暗黒声優』では地球脱出、太陽系、銀河系と物語の規模がどんどん拡大してゆき、最後に大オチがつきます。また、『大絶滅恐竜タイムウォーズ』と同じハードSFでメタ=フィクションの『最後に
2019-12-30 20:57:34して最初のアイドル』でも、物語の規模が最大限に大きくなる、つまりメタ=フィクション化するのは物語の最後です。それに対し、『大絶滅恐竜タイムウォーズ』では3部構成の初め、前半3分の1が終わったところで、物語が素粒子理論・重力理論と最大限に拡大し、同時にメタ=フィクション化するわけです。
2019-12-30 20:59:46さて、ブライアン・マッスミは『The Autonomy of Affect』で感情を社会言語学的な「エモーション」、伝記的、個人的な「フィーリング」から分け、意識以前の「アフェクト」としています。とくに後期資本主義に特有の「エモーション」に対する作者の社会構築主義的な批判的な視座が、『大進化どうぶつ
2019-12-30 21:03:49デスゲーム』から『大絶滅恐竜タイムウォーズ』への飛躍の原動力になったのでしょう。実際、日本語においても「エモーショナルな」はまだ通常の語彙ですが、「エモい」となると、かなり外在的でいかがわしい意味合いがあります。さて、アフェクトということをまず問題にしたのはドゥルーズの『シネマ』
2019-12-30 21:07:34であり、本書でドゥルーズは「登場人物の行動原理があまりに機能主義的で単純明快なために逆に非現実的なリアリズム」をアメリカ映画の特質としています。『暗黒声優』などはこの特質を備えた見事な活劇… 叙事詩的とも言われるジャンルであるワイドスクリーンバロックですから、『大絶滅恐竜タイム
2019-12-30 21:12:32ウォーズ』への転回は前作ですでに予示されていたのかもしれません(ただしアイドルVtuberの天秤ひなみさんが前作につき「一般的な観点からは全体的に登場人物はすこしおかしいが個人的には好き」という旨のことを配信で言っていて、私も同感ですが、その意味で作者の特質は表れていたかもしれません。
2019-12-30 21:18:57天秤ひなみさんはもともとミステリ畑だということで、私もそうなのですが、そのあたりに原因があるのかもしれません)。私が『大絶滅恐竜タイムウォーズ』の結尾部ともっとも読後感が似ていると感じたのはサルトルの『嘔吐』ですが、この物語がゲロで終わる実存主義小説に対し、物語がゲロではじまる
2019-12-30 21:22:17バーチャルVtuberの天秤ひなみさんも好きだということで勇気づけられて言いますが、怪作の続編の発表後には言いにくいのですが、私も『大進化どうぶつデスゲーム』はかなり好きです。
2019-12-30 21:31:31関連まとめ