空想の街 とある冬の一日・2日目

空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

駅前の広場に噴水があります。普段は何の変哲もない噴水ですが、薄曇りの日の１２時から１３時にだけ、水面に実際にはない青い花びらが降っているのが見えます。とても綺麗な景色なので、通りかかった人はぜひ見てみて下さいな。　#空想の街

こみや@空想の街 @Ne2_co

「ちどり、これ好きだよね」「うん、好き」触れればぱしゃり、と冷たい水が音を立てる。「面白いと思うんだけど」「ぼくはあれ、まどの赤い花も好き」「あ、うん！あれもいいよね！」「じつは青い色が好きなんだよね、ちどり」「ばれたか」「ばれてるよ」#空想の街 #鳥に纏わる掌編

十浦　圭 @ueto_rika

あなたは混乱して後ずさる。涙は出た、声も。五感もある。でもそれだけだ。人間らしい反応はしても、あなたは物を口にしない、お手洗いだって行かないし、この寒空の下で一度も寒いなんて思いもしない。誰だろう。私は、誰だろう？　#空想の街　#ネムレスガール カシャン、と音がした。

十浦　圭 @ueto_rika

あなたは振り返る。振り返る前から分かっていた。そこにはマネキンたちが立っている。ゆらゆらと不安定に揺れ、泥に汚れた命のないモノたちが立っている。　#空想の街　#ネムレスガール　でも、あなたは気づきかけている。硝子玉の目は透き通る青、背の丈も、腕の長さも、あなたとぴったり同じだと。

十浦　圭 @ueto_rika

カシャンカシャンと近づくマネキンを、あなたは硬直したまま見つめている。何体も何体も、ずらりと並んだ同じ顔、同じ体、同じ瞳のマネキンたち。それらと、自分と、一体何が違うんだろう。　#空想の街　#ネムレスガール 「　　　　　‼」誰かが、あなたの名を読んだ。

十浦　圭 @ueto_rika

あなたは振り返る。懐かしい人影が遠くにある。記憶の中と同じ手のひらを精一杯のばして、必死に駆けてくる。普段運動なんて全然しない癖に。「お父さん…」 #空想の街　#ネムレスガール そうてあなたの腕を無機質な手が掴む。あなたになれなかった、あなたの同類の、失敗作の手のひらが。 カシャン。

こみや@空想の街 @Ne2_co

道行の裾を翻し、 「こんにちはー……」 カラカラ、と軽やかなサッシの音。笑顔の気配、というのだろうか。そういうものがあるとすればこれ、という空気が、あゆ子を出迎えてくれる。 「どうも、お久しぶりです」 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

「ちょっとお花でも飾ろうかな、と思って。また籠にこしらえてくれますか？」 おかみさんが頷く。間遠にならない程度に店に顔を出していても、彼女とご主人のように意思疎通するのは難しい。それでも彼女はびっくりするくらいこちらの意を汲んでくれるのだ。#空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

季節の花を手早く整えて、持ってきた籠にあしらってくれる。手拭いをかけた横顔は、やはりーー。実のところ、彼らの関係についてはよくわからない。聞かないほうがいいのかもしれないし。 と、彼女が視線に気づいたらしく、こちらを見て首をかしげる。#空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

「あっ、えっと。ちどりくん……とめじろくん、随分と読み書きが上手になって。たぶんもう読むのにはほとんど苦労しないんじゃないかな、ってくらい」 ぱっと笑みを濃くしたおかみさんが、あゆ子を指さす。 「へ？あ、いや、わたしはその……特に何も」 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

苦笑まじりに答える。 「学校でものの教え方をちゃんと習ったはずなんですけどね。結局そっちには進まなかったし……私がうまくやれてなくても、ふたりが一生懸命だから」 おかみさんは黙ったまま――そもそも声を聞いたことがないが――やっぱり微笑んでくれた。 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

日下 昊／頭巾ちゃん @sola_Dante

「ええ！？配達？おいら絶対迷子フラグ立ってるよ？どうすんの？？」この致命的方向音痴に配達をさせる為に方法は考えていた。瑛は街の地図を広げ手をかざした。地図はしゅんっと丸まり一羽の雀となった。「この子に案内をさせる。これで迷う心配はない。但し間違っても喰うなよ？」 #空想の街 #花心亭

日下 昊／頭巾ちゃん @sola_Dante

「電話番は交代だ」「オーライ！それならおいらにも出来そうだ。さぁー出発だぁー！」意気揚々と一歩目を踏み出そうとしたカムナに「待て。まだ注文が来ていない」ハッとして「あーそうだったそうだった」とハットを取って頭を搔くカムナに不安しかない瑛。#空想の街 #花心亭

こみや@空想の街 @Ne2_co

いつの間にか出来上がっていた花鳥籠が差し出される。ふわりと白い雪輪草と、蔦の緑がやさしい。 「ふふ、いつも素敵。ありがとうございます」 支払を済ませてそれじゃあ、と踵を返そうとした背中に。 「ああ！ちょっと待ちなよ先生！」 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

「？」 何気なく振り返る。いつの間に帰っていらしたのだろう、と。 「あれ……？」 随分耳に馴染んだ、朗らかでからりとした男の人の声。かごや、はなかご、と道々を呼ばわって歩く、この店の主人の姿はどこにもない。 「いやいや違う違う、〈おまえ〉だよ」 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

その言葉の通りに動くのは、はらりと手ぬぐいを肩に落としたおかみさんの唇だ。 「いやさ、みんなお喋りってやつが好きだよねえ。〈おれ〉も大好きだしさあ。そんでちょこっと先生に付き合ってもらおっかなー、なーんて」 そう言う調子はまさにご主人のもので。 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

「ああこれ？これはちょっと借りてんの。自前のはもう無いんでね」 あゆ子は呆然と立ちすくむ。さすがに状況が呑み込めない。 「先生たちが可愛がってくれっからさ、あの子らどんどん大きくなって、いやもう〈おまえ〉からも感謝のしきりだって伝えたくってさあ」 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

返事もできず立ちっぱなしのあゆ子へと、彼女は目を細めてみせる。 「……まあそれだけじゃないんだけどね。ちょっと付き合ってくんなよ」 板の間に差し出される座布団。ぼんぼん、とそれを叩く白い手。導かれるように、腰かける。 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

「何から話すかなぁ。まあ〈おまえ〉たちの話からか」 おかみさんがお茶を淹れてくれる。つくづくきれいな人だと、今さらながらに思う。彼女の言う、〈おれ〉と〈おまえ〉を整理しながら、続きを待つ。 「〈おまえ〉たちはさ、探してんだ」と、彼女は切り出した。 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

「でっかいからっぽを持ってて、行く場所がない、そんなやつがいい。そのからっぽに……何て言えばいいかな、すみかをこさえるんだ。〈おまえ〉と〈おれ〉のすみかを。しまいにゃあそのすみかに〈おれ〉をまるごと連れてっちまう。そういうふうにできてんだ」#空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

「え、じゃあ、ちどりくんやめじろくんは」 思わず遮った。漠然とそういうものだと思っていたものが揺らぐ。ふたりと彼女の関係の確かなことはわからずとも――近しいものだ、と。そう思っていた、のに。 けれど、彼女は首をかしげて、何なんだろうな、と答えた。#空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

「本当は〈おまえ〉たちの目や耳みたいなもんだったんだろう。代わりに色んなところへ行って、色んなものを見て、聞いて…でもさ、もういいんだ。あの子らはかわいい小鳥。かわいい子どもたち。そうなっちまったんなら、ちゃんとその道理で幸せにならなきゃあ」 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

「ほんとうに先生には感謝してるんだよ。ありがとうな。あの子らに目え掛けてくれて。先生だけじゃねえけどさ、先生みたいな世話焼きのおかけで、あの子らはあの子らでいられる」 ここにいないものを見る瞳が、入口に射す午後の光へ注がれている。 #空想の街 #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫

十浦　圭 @ueto_rika

@sola_Dante トゥルルル、トゥルルル「…あ、もしもし。心亭さんですか。いつもお世話になっています、こちら孔雀荘のシズクと言います。…あー、ええと、お茶受けのいつものロールケーキとクッキーを、お願いします。とりあえず50ずつで」　#空想の街　#孔雀荘　#花心亭

日下 昊／頭巾ちゃん @sola_Dante

@ueto_rika ジリリリンと黒電話が鳴る。「はい、毎度有難う御座います。花心亭です。ロールケーキ50個にクッキー50個で承りました。今回は代理が向かいますので、少々お待ち下さい。」電話に出たのは瑛だが、早速の配達依頼にカムナはワクワクしている。 #空想の街　#孔雀荘　#花心亭