空想の街 とある冬の一日 けさう文売り

2020.1.23~24+α #空想の街 企画様参加の、 #けさう文売り のログです
0
前へ 1 2 ・・ 7 次へ
こみや@空想の街 @Ne2_co

「帰ります」 「あっ……お構いもできずにすみません!」 彼は小さく首を振った。そのまま踵を返し、出ていこうとする。その後ろ姿に投げかけた。 「ひとつ……ひとついただいてもよろしいですか、その、えっと、懸想文」 #空想の街 #けさう文売り #はなのえ文庫

2020-01-23 13:47:07
こみや@空想の街 @Ne2_co

照れながら告げたあゆ子に頷いて、彼は廊下へと出る。慌ててがま口片手に後ろ姿を追った。硬貨を手渡し、差し出された枝から、紅梅色の色紙の透けるそれを手に取る。無言で促される様子なので、ぱらりと開いて中を見た。 #空想の街 #けさう文売り #はなのえ文庫

2020-01-23 13:48:08
こみや@空想の街 @Ne2_co

つつめどもにほへる花の宿なれやつかのま触れし袖のゆかしき 「……季節がめぐれば、また」 #空想の街 #けさう文売り #はなのえ文庫

2020-01-23 13:48:55

(隠しても色も香もある花の宿なのだろう、つかの間ふれあった袖さえもこいしく思われる)
――あなたの魅力は隠してもあらわれる

こみや@空想の街 @Ne2_co

静かな声が告げる。はじかれるように顔を上げた先で、 彼はさっさと靴を引っ掛けて出て行ってしまった。ただただ手の中の色紙がひなたの温度にあたたかい。あゆ子は言葉もなく彼を見送った。 ――あゆ子は、彼が読んだらしい歌集の間に見つけるだろう。 #空想の街 #けさう文売り #はなのえ文庫

2020-01-23 13:50:01
こみや@空想の街 @Ne2_co

春つげの鳥も来鳴けよふみ好む木の下かげにわれ待ちをれば 本を汚さぬようにだろう。硬い鉛筆で書いた文字が、どことなく懐かしい感じがした。 #空想の街 #けさう文売り #はなのえ文庫

2020-01-23 13:50:42

(春を告げる鳥も来て鳴くといい、文を好むという木、梅の木陰に私も待っているのだから)
――あなたの待つ訪れを、私も共に願いましょう

しのびてぞ夜道はあゆめ
こみや@空想の街 @Ne2_co

無事 #籠ノハナ屋 のおかみさんも帰ってきたので、 #曳舟荘 の大家はどこに行くとなく散歩の続きを再開した。 「オヤ、もう消えちまった…あっけないやねエ、古い知り合い連中はだいたい光っちゃあひとに見せびらかしてくるやつらばっかりだったが」 夜闇と同じ色の髪をかきあげる。 #空想の街

2020-01-23 19:57:14
こみや@空想の街 @Ne2_co

「……っと」 不意にすれ違う、影。 「ちょっとあんた、そいつを一つ頂戴できるかい?」 呼び止められた #けさう文売り はゆっくりと振り返り、頷いて梅の枝を差し出す。硬貨と引き換えに選ぶのは、雲母を刷いたそれ。 「なるほど恋文ね、どれどれ……」 #曳舟荘 #空想の街

2020-01-23 19:57:57
こみや@空想の街 @Ne2_co

しのびてぞ夜道はあゆめいろ赤き花を先立つともしともせで 「……どうか、大切に」 #空想の街 #けさう文売り #曳舟荘

2020-01-23 19:58:56

(忍んで夜道は歩むのがよい、色の赤い花を自分の先をゆくともし火になどしないで)
—―こころひかれるものにすがりすぎぬように

こみや@空想の街 @Ne2_co

「……はっはあ、殺し文句だこと。ありがとネ、どうせは心の持ち様って言ってもさ、馬鹿にはならないじゃない。ちゃあんと大切にするサ」 笑って結び文を懐に。一礼して去っていく #けさう文売り の背中に投げかける。 「じゃあね、ちゃんと暖かいところでお休みよ」 #空想の街 #曳舟荘

2020-01-23 20:00:31
空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

こんばんは。予報通り、青空が気持ちのよい一日でした。明日もまたすこやかにすみやかな晴れ間がのぞくとのことです。風邪をひいてしまうのは困るけれど、寒さも冬の醍醐味ですね。みなさんどうかあたたかくして、冬の特権をおたのしみください。(情報窓口係:佐々木類) #空想の街

2020-01-23 18:00:43
あなたこなたに
空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

街中の水路の傍に、藍色の葦が生えています。二つ目の節で切って穴を開ければ星の葦笛のできあがり。息を吹き込めば、夜空に浮かぶたくさんの星の中、笛の音に合わせてふるふると震える星があるはず。それはあなただけの願い星です。大事な願いを一つだけ、もしかしたら叶えてくれるかも。 #空想の街

2020-01-23 20:00:39

ふしのまのながきみぢかきいかがせむ枯れ葦原のあなたこなたに

(節の――ともに伏して寝る夜の間が長いのを、また短いのをどうしようというのだ、枯れて――離れてしまった葦原の、あちら側とこちら側とで)
――もうとうに分かたれて願いようもないのに

たえせぬものは
こみや@空想の街 @Ne2_co

よく晴れた日の夜は冷え込む。それが海辺ならばなおさらだった。暗い海からは、ただ波の砕ける音だけが聞こえてくる。 #けさう文売り は肺の奥から深く息を吐きだした。 「波うつや、」 #空想の街

2020-01-24 01:12:12
こみや@空想の街 @Ne2_co

波うつやうつつともなきちまたにもたえせぬものはなみだなりけり ……歌とは裏腹に、ただただ静かな瞳が波間へと注がれいてる。 #空想の街 #けさう文売り

2020-01-24 01:12:45

(波の打つ、そのうつつともない…よりどころのないこの世の中にも、絶えないものは涙というものであることだ)
――結局、嘆きは絶えない


二日目

空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

おはようございます。今朝もすっきりと綺麗な晴天です。けれどこの晴れ模様はお昼まで。正午を過ぎたあたりから、少しずつ雲が出てくるそうです。今日も15時から時計塔広場で軽食のふるまいがあります。楽しみにしていて下さいね。それでは、いってらっしゃい。(情報窓口:佐々木類) #空想の街

2020-01-24 08:00:42
君なかりせば
前へ 1 2 ・・ 7 次へ