ドリームキャッチャー・ディジタル・リコン#9

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウウウーッ!」サブジュゲイターはヤグラ内でドゲザじみて突っ伏し、頭を抱えた。「こ……このようなナンセンスは……二度と御免被りたいものだ!」震える彼のニューロンは今やナウジアの体内のカエルと完全にリンクした。カエルはナウジアの腹を食い破り、体外へ飛び出した!ナムアミダブツ! 24

2020-01-28 23:04:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバババーッ!」ナウジアの断末魔が響き渡る!ヤグラの中でサブジュゲイターは仰向けに転がった。「ハアーッ……ハアーッ……!」荒い息をつく彼のニューロンに、ドリームキャッチャーの姿が透けた。(よくやった。感謝する、CEOよ)彼の意志力の力添えあっての、ヨロシ・ジツ成功であった。 25

2020-01-28 23:07:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

正気を失い叫び続けるのもとへ、毒で死にかけたカラテビースト数匹が歩み寄り、無慈悲にトドメを刺した。そして同じ頃、ニンジャスレイヤーはレベリングの顔から手を荒々しく引き抜いていた。「アバーッ!」天高くレベリングの脳漿と血が噴出した。「サヨナラ!」テツバの2戦士は爆発四散した! 26

2020-01-28 23:09:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『油断するなニンジャスレイヤー=サン。CEO』ドリームキャッチャーが彼らに語りかける。『強い力の接近を感じる』DOOOOM……DDOOOOOM……彼の警告を裏付けるように、地響きが徐々に大きくなる。『……オヒガンの力だ』サブジュゲイターは起き上がり、ヤグラから轟音の方向を見た。「……!」 27

2020-01-28 23:13:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

DOOM!崖を砕きながら、轟音の主が谷の村へ踏み込んだ!それは巨大な、青銅製の、ツルじみた逆関節の脚部と無慈悲なクチバシを持った存在であった。サブジュゲイターは訝しんだ。遠目にはそれは、たとえばカタナ社やオムラ・エンパイアあたりの巨大兵器の類にも見えた。だが、すぐに違うとわかった。28

2020-01-28 23:16:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

痩せた黒いフレームを青銅の甲冑で鎧ったそれは、30メートル超の高さがあり、稲穂を潰し、杭を蹴倒し、小屋の残骸を蹴散らし、死体を踏みしめ、あるいは戯れについばみ、咀嚼しながら、悠然と進み来る。クチバシの付け根には紫の火が眼光めいて燃え、腹部にも同様の紫の火の炉が垣間見えた。 29

2020-01-28 23:23:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

これは近代ロボ兵器ではない。邪悪なジツの力で動く、金属の怪物だ。歴史に詳しい方はご存知だろう。これはカゲムシャ・ジツ。オダ・ニンジャ、即ち織田信長がかつて用いた青銅巨人の一種である。かのセンゴク・ダイミョの破竹の快進撃を支えたのは鉄砲ではない。青銅巨人カゲムシャの力であった。 30

2020-01-28 23:27:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

テクノロジーの出揃わぬ平安末期・江戸戦争の時代において、このような恐るべき質量が出現すれば、人は正気ではいられない。ニンジャ・リアリティ・ショック症状に襲われたモータルの雑兵達は、カゲムシャの圧倒的破壊を鉄砲の連続射撃に無理矢理に置き換えて理解し、正気を保ったのである。 31

2020-01-28 23:31:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フフ……ハハハ……フフフハハハハハ……」遠く離れたカメヤマ城の天守閣、御影石に映る破壊の映像を眺めながら、ジツを行使するジョウゴ親王は四つん這いのコショウを肘置きがわりにサケを飲み、厳しい無表情のまま、暗く、暗く笑った。「インターネットよ。根絶やしにしてくれようぞ……」 32

2020-01-28 23:38:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「コヒバリ」と名付けられたカゲムシャは、ゆっくりと首を巡らせ、驚愕と共に凝視するサブジュゲイターの櫓に、戯れめいて衝突した。KRAAAASH……。サブジュゲイターは粉々に砕けた櫓材と共に落下してゆく。「……!」地上を走る赤黒の影が、その方向へ燃える縄を放つ。鈎が絡み、斜めに引き寄せる。33

2020-01-28 23:42:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAAASH……KRAAAASH……SMAAASH……DDOOOOM……!破壊し、踏み潰し、そして……「AAAARGH……!」コヒバリの嘴が開き、紫の炎が放たれた。超自然の火が稲穂を縦横に薙ぎ払い、この谷間の村に、さらなるジゴクの光景を作り出した。ニンジャスレイヤーは人事不省のCEOを抱え、破壊を背に、走った。34

2020-01-28 23:47:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴方には……二度……助けられましたね」ニンジャスレイヤーに抱えられたサブジュゲイターが呻き、呟いた。「メダルを進呈……」彼は目を閉じた。『ファッキング・カイジュウだぞ!ヤバすぎる』タキの通信がニンジャスレイヤーのニューロンを騒がせた。『その金ヅルは絶対に離すな。株価なんだ!』35

2020-01-28 23:53:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KABOOOM!ニンジャスレイヤーの背後を紫の火が洗った。この後どうする!?追いつかれるか!『右を見ろ!』タキの通信!その方向、崩れた建物の陰から走り出たのは、モーターサイクルに跨ったコトブキ!その横を無人のシグルーンが並走している!「ニンジャスレイヤー=サン!こっちです!」 36

2020-01-28 23:56:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはサブジュゲイターを抱えて回転ジャンプし、シグルーンに搭乗した。ガッ!ガッ!ガッ!性急な爆音が追ってくる。巨体からは信じられぬ速度で、ツル型青銅甲冑はダチョウじみた突進をかけてくる!「イヤーッ!」二人は棚田の壁に衝突すれすれでバイクをドリフト! 37

2020-01-29 00:00:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KA-BOOOOOM!一瞬後、彼らがドリフトした地点が嘴の衝突と紫の炎によって爆発した。ふたつのバイクは凸凹の棚田道を勇敢なモトクロス選手じみて走り続ける。コヒバリは向きをかえ、再びの突進……KRAAAAASH!激しい震動にバイクが飛び上がる。彼らの背後で、巨体は……転倒していた! 38

2020-01-29 00:04:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

杭や稲、地面、建物をえぐりながら、巨大な青銅甲冑は地面を滑った。転倒地点付近にはワイヤーが張られ、カラテナキウサギが跳ねながら拳を振り上げていた。ナムサン。原始的トラップだ!カラテビーストは巨体に群がり、怒りを込めて関節部をヤリで刺し始めた!「AAAAARGH!」 39

2020-01-29 00:06:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

しかしそう容易くはゆかぬ!KA-BOOOOM!そこへ容赦なく浴びせられる紫の炎!「ワンワーッ!」「アバーッ!」ナムサン、見よ!二体目のコヒバリだ!そして2台のバイクは、無力に湖の周囲を巡行するしかないのか?ジリー・プアー(徐々に不利)なのか?……「あれです!」コトブキが前方を指差す! 40

2020-01-29 00:09:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

奥の崖壁の一部がフスマめいて開いた。岩フスマを開くと、そこではザックが必死の形相で手を振っていた。ニンジャスレイヤーとコトブキの進行方向、棚田のきわに、ジャンプ台じみた斜めの板が置かれていた。二人は互いに顔を見合わせ、頷いた。そして、加速!ゴアアアオオン!壁穴へ大ジャンプだ! 41

2020-01-29 00:11:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAASH!コヒバリの頭が壁穴付近に叩きつけられた。ニンジャスレイヤー達は間一髪、壁穴の奥のトンネルへ入り込んでいた。コヒバリはやや後退し、嘴に紫の炎を充填した。穴にブレスを噴きつけ、イチモ・ダジンにしようというのだ。「GRRRRR……!」 42

2020-01-29 00:15:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アニキ……まずい!」コトブキの後ろにしがみついたザックは、恐怖とともに後方を振り返った。炎のブレスがトンネルに噴きつけられればもはや逃げ場無く、確実に死ぬ!「もっとスピードを……」KRA-TOOOOOOM!凄まじい轟音!そして、SPLAAAASH!KA-DOOOOM!濁流の音! 43

2020-01-29 00:18:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんだと!?」ジョウゴ親王は御影石の前で立ち上がり、「エイッ、邪魔だ!」「アッ……!」顔を赤らめるコショウの尻を乱暴に蹴り飛ばした。ジョウゴ親王が見つめる中、御影石が送ってくる俯瞰ビジョンに映し出されているのは、ナムアミダブツ……崖に囲まれた棚田の大地に突如渦を巻く水だった。44

2020-01-29 00:20:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『間に合ったぞ』ドリームキャッチャーの声が、トンネルを進むニンジャスレイヤーのニューロンに響いた。『獣たちが、湖に注ぎ込む川のダムを破壊した。計画は成ったのだ』……然り。上流のダムを知性カラテビーバー達が崩した結果、今や棚田の村は大量の水によって蹂躙されようとしていた。 45

2020-01-29 00:24:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「AAARGH……」「AAAAARGH……!」コヒバリは渦巻く濁流に足を取られ、よろめいた。吐き出す紫の炎は洞穴を逸れ、崖を撫でた。いくつもの洞穴から滝めいて水が注ぎ込む。コヒバリはなお耐えた。ブレス攻撃を継続しようというのだ。さらに、転倒していたもう一体も既に起き上がっていた。 46

2020-01-29 00:29:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

2体は冷徹に嘴を開いた。紫の炎が充填される。……KRAAAAASH……DOOOOOM……DDOOOOOM……地震が生じた。コヒバリは湖の方向を振り返った。廃墟の天井を破壊しながら、巨大な影が身をもたげ、這い出した。ドリームキャッチャーが太陽の下に現れたのだ。「AAARGH……」超自然のオオケモノが、唸った。47

2020-01-29 00:31:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイ……ふざけるな」ファーネイスの横に馬を並べたクロスファイアは呻き声をあげた。彼らは早々に切り上げ、棚田の村を囲む高台に避難していた。彼らの眼下に広がるのは、渦巻く濁り水の中で睨み合う、2体のカゲムシャと、巨大なカラテビーストという、黙示録的光景であった。 48

2020-01-29 00:35:44