エスケープ・フロム・ホンノウジ#4
【前提知識】 ・過去のニンジャソウルが常人にある日突然憑依融合し、ニンジャとなる ・修行によってもニンジャとなる(リアルニンジャ) ・明智光秀はコクダカを与えてニンジャの修行を短絡する ・ニンジャスレイヤーはニンジャ殺しのニンジャ ・今回のエピソードにニンジャスレイヤーは出ない
2020-03-18 20:45:00【今回の話は】 ・話の舞台は明智光秀が支配する北米カナダ地域「ネザーキョウ」 ・明智光秀は龍に乗り近代文明を滅ぼしインターネットを禁止する。暗黒メガコーポが組織した北米連合「UCA(United Corps of America)」と真っ向対立 ・UCAの精鋭部隊が首都ホンノウジ(旧エドモントン)に潜入
2020-03-18 20:50:00【今回の話は】 ・クレイグ隊長:UCA強行偵察隊の隊長。ニンジャ名は「ファイアストーム」 ・カネト:妻子と別れ絶望し、ネオサイタマからネザーキョウに一旗揚げにきた男。チューニン階級だったが昇進テストでネザーオヒガンに連れてこられ、恐怖で逃走 ・2人はネザーオヒガンで行動を共にする
2020-03-18 20:55:00【エスケープ・フロム・ホンノウジ】#4 pic.twitter.com/DcYZdw4qgT
2020-03-18 21:02:00クレイグは前方を、カネトはそれ以外の方向を警戒しながら、溶岩の川沿いを進んだ。凄まじい熱気で、目を開けるのにも難儀する。「クソクソ溶岩川だ。俺らがニンジャじゃなけりゃ、この熱だけで死ぬんじゃねえか?」カネトは言った。「どうしてコイツらは平気でいやがる」道々、石を積む奴隷を見る。 1
2020-03-18 21:04:24「ヘヒィ……」奴隷達は目で2人を追いながら、その間も小石積みに執着していた。「訊きたいのは俺の方だ」クレイグが言った。カネトは薄ら笑った。「ち……違いねえ、だけど俺もあんたと同じくらい困惑してるッて事だよ。……畜生、真のニンジャに成りそこねたんだよな、俺は」「それについて話せ」 2
2020-03-18 21:06:53「俺らチューニンはゲニンから成り上がり、タイクーン直々にコクダカをもらう。そうすりゃ晴れてニンジャのセンシになる。あんたはニンジャソウル憑依者か?」「……そうだ」「名前。名前何てンだ。ニンジャの名前」「……ファイアストーム」「ドーモ。ファイアストーム=サン。ッてな。畜生……」 3
2020-03-18 21:09:21カネトは唸った。「俺もイカス名前が欲しかった」こうして敵と共に逃走しながらも、己の惰弱によって黄金のイサオシの道が永遠に閉ざされた事への悔悟がむくむくと湧き上がる。とはいえ、己を恥じてセプクする勇気もなかった。「俺の未来はネザーキョウの外にしかねえ。このクソジゴクの外にしか」 4
2020-03-18 21:12:43「その通りだ。さっさと崖上に戻る経路を探せ」「わかってるさ」カネトは度々後ろを振り返る。「どうやらあの赤いニンジャ……マレボルの奴は撒いた。何故追ってこない?タイクーンとアイツは……多分……希望だが……カイデンする奴のほうが大事なんだ。崖下に落ちたら、死しかないんだ、きっと」 5
2020-03-18 21:16:02「サフォサフォス」遠く、溶岩川の水面で触手が跳ねた。クレイグは顔をしかめた。「アレは何だ。ホンノウジの運河でも見たが」「ああ……ヘグイだよ」カネトは答えた。「アレはジゴクの産物だったんだな。この世のものじゃねえとは思ったが。あれをイタマエがカラテで身をスライスして、スシにする」6
2020-03-18 21:20:21「……何だと」クレイグは思わず足を止めた。カネトは肩をすくめた。「凄い栄養があって、ヘグイのスシを食えば、ギンギンになる。カラテが増すんだ。カラテクマの肉よりも強い。選ばれたセンシの口にしか入らない。滅多にな。それでも、めでたい日やイクサのベントーなんかで食えるんだ」「神よ」 7
2020-03-18 21:23:09「文化だろ。毒でもないんだしよ」カネトは言った。「俺が居たネオサイタマは汚染やインターネットでいっぱいだった。俺はクソみたいな暮らしを強いられていた。どいつもこいつも……俺も……毎日インターネットをして、摩耗した。だからここに来たんだ。だけど……結局、資質がなかったんだな」 8
2020-03-18 21:27:26「あの異常な光。あれはコクダカか」クレイグが尋ねた。2人は再び歩き出した。カネトは頷いた。「ああ、まず間違いない。新しいコクダカが与えられたしるしだ。俺の仲間が……クソッ……うまくいったに違いないんだ。死を克服した。タイクーンのカラテを受け容れ、生き残って、名前を得た筈……」 9
2020-03-18 21:31:02「カネト=サン。お前の進む道は、前にしかない筈だ」クレイグは言った。「俺にはネザーキョウのイサオシもコクダカもわからん。だが、共に行動する以上、敢えてそう言わせてもらう。得られなかった物事をくよくよ考えるな」「頭では……頭ではわかってるさ」彼らは走った。前方にオニがいる! 10
2020-03-18 21:35:13「AAARGH!」奴隷の背中を鞭で繰り返し打っていたオニは、2人の接近に気づくと、拳を固めて向かってきた。「イヤーッ!」カネトはスリケンを投げ、オニの足に命中させた。「グワーッ!」クレイグ隊長が走り込み、コンビネーションブローからのチョップで首を刎ねた!「イヤーッ!」「アバーッ!」 11
2020-03-18 21:37:56オニの首が転がり、小石を崩した。「ヘヒィ……」奴隷がさめざめと泣くのを無視して走る2人。「オニはニンジャより弱いようだ。惰弱だぜ。あんたが居れば、どうにか対処できるな」カネトは尋ねる。「あんたカトン・ジツは使わんのか?」「何故だ」「ファイアストーム=サンなんだろ」「使わん」 12
2020-03-18 21:40:13「じゃあ何故その名前だ」「過去の作戦名から採った」「へえ……」「鉱山火災だ。渦巻く炎と熱。肺を焼く空気。俺は地獄を見た。救出ミッションに参加した俺以外の仲間は全員死んだ」クレイグの横顔は巡礼者じみていた。「ここと大して変わらん世界だ」「……じゃあ、どんな力を得た?」「……」 13
2020-03-18 21:45:48そこまでの信頼関係はまだ無い、そういう戒めか。カネトは苦笑した。「なあ。俺達は崖沿いに進んでるが、このまま行けば、うまくグルっと回ってだな……」「見ろ」クレイグが前方の崖上を指差した。黒いポータル。見間違えようものか。彼らが入ってきた場所に、戻ってきたのだ!「ど……どうする」 14
2020-03-18 21:49:46崖はまだまだ先まで続いていた。彼らは立ち止まり、顔を見合わせた。逆棘めいた尖り岩が生えた岩肌。上までの高さは……何メートルだ。カネトは考えるのをやめた。クレイグが言った。「ようやく見つけた帰り道だ。チンタラやっているわけにもいかん」「……つまり……」「ニンジャらしくやるんだ」 15
2020-03-18 21:53:23クレイグは既に法衣を脱ぎ捨てていた。彼は背負ったツールハンガーに吊るされたワイヤーロープをカネトの帯に繋ぎ、しっかりと固定した。「一方が落ちたら、一方が支える」「ア?この崖をか?」「そうだ」「ずっと上だ」「そうだ」「バンクも凄い」「そうだ。もういいか」「……クソッ……!」 16
2020-03-18 21:55:17クレイグはナイフを逆手に持ち、問いかけるようにカネトを見た。カネトは渋々頷き、得物のサイを手にした。「俺から行くぞ」クレイグが決断的に宣言し、崖に飛びついた。「イヤーッ!」ナイフを突き刺す!尖り岩を手で探り、ホールドする!「やりゃあいいんだろう……!」カネトは続いた! 17
2020-03-18 21:58:09「……イヤーッ!」「……イヤーッ!」「……イヤーッ!」「……イヤーッ!」2人はもはや無駄口を叩かず、逆手の得物を岩に突き刺し、突起を探し、時には不自然な姿勢でぶら下がり、この悪夢じみた世界でクライミングを行う。「……イヤーッ!」「……イヤーッ!」上昇はつたなく、緩慢だった。 18
2020-03-18 22:01:17KRACK!黒曜石じみた崖の一部が剥離した!カネトのニューロンをニンジャアドレナリンが流れ、泥めいた時間の中で落下が始まる。クレイグの緊迫した顔……肩の筋肉がパンプアップするさま……そして……「イヤーッ!」クレイグはカネトのロープを、支えた!「グワーッ!」振り子めいて揺れるカネト! 19
2020-03-18 22:04:50「ヌウウーッ!」クレイグがこらえる!カネトは振り子状に揺れながら、必死で身構えた。岩肌に近づく……チャンスは一度!「イヤーッ!」カネトは尖り岩に飛びつき、保持!「ハアーッ……!ハアーッ……!ハアーッ……!す、すまねえ!」「……!」クレイグはカネトを見下ろし、厳しい顔で頷いた。 20
2020-03-18 22:07:52