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樋口は、女子高校生である。小糸を好み、雛菜と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明樋口は家を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此(この)聖蹟桜ヶ丘にやって来た。
2020-04-15 21:28:19樋口には父も、母も無い。女房も無い。十六の、内弁慶な小糸と二人暮しだ。この小糸は、村の一の律気な秀才で、近々、花の女子高生として迎える事になっていた。入学式も間近かなのである。
2020-04-15 23:20:08樋口は、それゆえ、小糸の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる聖蹟桜ヶ丘にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。 樋口には竹馬の友があった。浅倉透である。今は此の聖蹟桜ヶ丘で、アイドルをしている。
2020-04-15 23:23:56その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちに樋口は、まちの様子を怪しく思った。 輝いている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのが当り前だが、けれども、なぜだか、光りのせいばかりでは無く、市全体が、やけに明るい。
2020-04-15 23:37:16皮肉屋の樋口も、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちを賑やかすようなことはなかった筈はずだが、と質問した。若い衆は、リズムを取りながら首を激しく振って答えなかった。
2020-04-15 23:41:10しばらく歩いて老爺(ベテラン)に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。樋口は両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
2020-04-15 23:44:16「Pは、人を殺します。」 「なぜ殺すのだ。」 「尊心を抱いている、というのですが、誰もそんな、札束を持っては居りませぬ。」 「たくさんの人を殺したのか。」
2020-04-15 23:47:52「はい、はじめはイルミネ担当を。それから、アンティーカ担当を。それから、放課後担当を。それから、アルストロメリア担当を。それから、ストレイライト担当を。それから、まみみ担当を。」 「おどろいた。Pは乱心か。」
2020-04-15 23:51:09