ナラク・ウィズイン#7

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「来い……！」コルヴェットが手を掲げた。ニンジャスレイヤーはフックロープを投じ、コルヴェットの腕に巻きつけ、斜めに滑空した。「グ……！」ニンジャスレイヤーを受け止め、コルヴェットは苦痛に呻いた。「俺は平気だ、臆病ゆえ己の限度はしっかり見ておる。気にするな」「無理に喋るな……！」17

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ニンジャスレイヤーは振り返り、コルヴェットを後ろに、ザンマ・ニンジャに向き直った。「離れろ。奴はおれが殺る」「無論、そうしてもらわねば困るが、今は俺の助けが必須だ。あのザンマとやら、並のニンジャではない」コルヴェットは脇腹の傷を押さえ、囁いた。「黒炎に触れ、力を取り戻せ」　18

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ニンジャスレイヤーは煮えたぎる黒炎を見る。あれに踏み込み、力を引きずり出す……「言うは易しだぞ」ザンマのカラテを、その間、いかに防ぐか？コルヴェットは乾いた笑いを笑った。「全くだ。だが、まずは貴公がそれを成し遂げねば、どうにも事態が切り拓けん。俺が援護するゆえ、なんとか頼む」　19

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「胸踊るオニ退治のイクサじゃ」ザンマ・ニンジャはザンマブリンガーを水平に構え、じりじりと間合いを測る。ニンジャスレイヤーは前傾姿勢となった。「スウーッ……フウーッ……」彼は呼吸を深める。身体の芯に残るナラクの火に、空気を……この場に感じるギンカクの力を送り込もうとする。20

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「……！」ザンマ・ニンジャのこめかみがぴくりと動いた。彼は用心深く間合いを維持し、ニンジャスレイヤーの出方を待った。ニンジャスレイヤーの目の奥で、赤黒の光が明滅する。……その時、五重塔西塔が爆発し、炎を噴き上げた。KA-BOOOOOM……！コトブキだ。時間を要したか。だが今は……。　21

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KA-BOOOOOM！その時、南塔がたてつづけに崩壊した。「南だと？誰が……」コルヴェットが掠れ声で訝しむ。ハリマ離宮の全ての五重塔が倒壊したその時、上空の空に、奇妙な波が、たしかに走った。　22

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◆◆◆ 23

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」ニーズヘグとヘラルドは瓦屋根に着地し、崩壊する五重塔の邪悪な光を背にした。空に奇妙な力の波が走った。心なしか、この地を包む重苦しさが緩和されたようだ。二者は走りながらアイコンタクトした。（見よ。明らかに何か起きた。これがイクサの勘じゃ）（……！）　24

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「デアエ！」「デアエ！」パレスの屋根を駆けてくるアカゾナエのゲニン達を、ニーズヘグは呵々大笑し迎え撃つ！「イヤーッ！」「グワーッ！」「グワーッ！」ヘビ・ケンに翻弄されるゲニン達！吹き飛ぶ手足！ヘラルドは見た。前方、局地的地殻変動によって乱れ果てた大庭に、エメツの疼きの源がある！25

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「感じる……！」「それはチョージョー。オヌシのイクサも、そこにあれかし！」彼らは屋根から屋根に飛び移った。ニーズヘグは瞬時に戦場のありさまを見て取った。崖下では混乱し右往左往するサンシタども。段上になった崖の上では相争う者らがある。同士討ちの最中か。　26

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特に強い力を持った包帯姿のニンジャは宙に浮き、超自然のカトンを凄まじく投げつけ続けている。注意が要る。仕留めるか、避けるか。奇妙な事にそのカトンの勢いは弱まりつつある。ニーズヘグは塔破壊との因果関係を直感する。「イヤーッ！」「イヤーッ！」彼らは陣幕を飛び越し、グラウンドに至る！27

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崖の一番高い場所に、不穏な黒炎のわだかまりがあった。『01001……あれだ……ニーズヘグ＝サン』ニーズヘグのニューロンに、不明瞭な声が走った。ゲニンを殺しながら、彼は眉根を寄せた。「ネクサスの？通じるのか」『霧が晴れた』「ハハァ。成る程」ニーズヘグは納得した。「それはチョージョー」 28

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ネザーキョウ入りする以前、ニーズヘグはネクサスとの通信を確立し、いかにしてキョート城へ帰還するか、己の超自然的な状態をいかに解消するかについて知見を求めた。ネクサスは「確度の高い仮説」として、ネザーキョウ領内に出現したギンカク・オベリスクを利用する方法を提示した。　29

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曰く、ギンカクは明らかにオヒガン的な存在であり、その周辺にアノヨと重なり合う状況を生ずるであろうと。現在、その身に青の火を宿し、半死半生じみた状態にあるニーズヘグをギンカクに呼び寄せたうえで、ネクサスは強引に彼をキョート城へ「釣り上げる」ことを試みるのだという。　30

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（ワシの乏しい知識でも十分わかるが、それはまともな策ではないな。そこそこの確率で、死ぬとみた）（我が推測が正しければ危険性は実際少ないが……然り……保証はできぬ）（まあよいわ。この期に及んでワシ一人、地べたを這いずっておられんからな）（検討を祈る。観測を維持するゆえ）　31

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異常な生態系が支配するネザーキョウには不可思議な力が満ちており、キョート城は領域を越える事ができない。ネクサスとの通信もかなわない。それゆえニーズヘグは独力でギンカクを目指した。UCAの傭兵となり、国境を越え、そのまま東へ進んだ。道中、共になったのが、ヘラルドだ。　32

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ゲニンを殺し、段差になった手近の崖に飛び上がりながら、ニーズヘグは考える。ヘラルドの妄執が万一正しければ、ここにニンジャスレイヤーが居るという事になる。その場合……捕らえて共にオヒガンを越え、キョート城への手土産にするという手も、無くはない。だが……。　33

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「邪魔だ！イヤーッ！」「グワーッ！」「我が運命の邪魔を……するな！」「グワーッ！」ゲニンを殺し、ニーズヘグと争うように先を急ぐヘラルドのさまに、興がむくところが実際あった。「どこだ！ニンジャスレイヤー＝サン！貴様だけは……！」この男が「仇」を前に、どう戦うか。見てみたいものだ。34

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「デアエ！」「デアエデアエ！！」抉るように切り込み、最初の崖にあがった彼らを誰何し、ゲニントルーパーが群がる。「どれ、景気付けにワシにやらせろ！」ニーズヘグは前に飛び出し、鞭状にしたヘビ・ケンを振り回した。「イヤーッ！」　35

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その軌跡はもはや半円球状の不可視の刃のドーム！飲み込まれたものはたちまち骨から肉をこそぎ落とされ絶命する！これこそは全方位の敵をネギトロに変える恐るべきムチ・ドーの技「ミソギ」である！「「「アバッ！アバッ！アバババババーッ！」」」ゲニンの包囲はたちまち血肉に変じてゆく！　36

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「何者だ！」ゲニンをかき分け、ニーズヘグらの前に壁となって立ちはだかるニンジャあり！「ジョウゴ親王の御前であるぞ！我が名はアンシーン！名乗りおれ！」「少しは、やれそうな奴が来おったか」ニーズヘグは身構えた。「ニーズヘグ。ザイバツ・シャドーギルド」ヘラルドが並んだ。「ヘラルド」　37

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「ザイバツとな？ズガタッキェー！」「参るぞ！イヤーッ！」ニーズヘグはヘビ・ケンを繰り出！だが、不可視の障壁が刃を弾いた！力押しすれば砕かれかねぬ！「ジョウゴ親王の支配地！貴様ら如きは……」「……やれ」ニーズヘグが屈むと、ヘラルドはその背を蹴って高く跳躍した！「イイイヤアーッ！」38

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KRAAAASH！上から襲いかかったヘラルドの渾身のカワラワリは、アンシーンの張ったムテキ・フィールドの不可視の障壁を破壊！「バカナー！？」「イヤーッ！」「グワーッ！」サイドキックで蹴り飛ばされるアンシーン！「コシャク！貴様らはケイトーの手の者と違うのか？」さらなるセンシが進み出る！　39

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その体にはスペード模様と13の文字がイレズミされている。「我が名はサーティーン。カラテあるのみ！カラテで死すべし！」ボックスカラテでヘラルドを襲う！「シュー！シュシュシュシュッ！」一秒間に13発のボディブローを繰り出す……恐るべきカラテだ！「チイッ」防御を強いられるヘラルド！　40

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「逃げられんぞ！俺の拳はLA地下格闘仕込みのカラテだ。文明社会の惰弱カラテシーンに飽き足らずネザーキョウにやってきた俺！」凄まじい乱打に、ヘラルドは後退せざるを得ない。だが、その時だ！「イヤーッ！」「グワーッ！」ニーズヘグの繰り出したヘビ・ケンがサーティーンの踵を捉えた！　41