稲川淳二の『つぶやき怪談』(2020.04.29)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

見るからに快活でさわやかな女性なんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それと、驚いたのが、 私の学生時代からの親友がいるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

彼は、文化放送の近くで会社を経営してるんですが、 私の夏のツアーに来ていて、この話を耳にしたらしい。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、会社が休みで、 奥さんと娘さんは海外旅行へ行ってるもんですから、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

家にひとり残されて、暇をもて余していたんで、 何だか面白そうだから、とやって来たというんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そして、私と、うちの事務所の狩野さんですから、 結構な人数になっちゃって、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ましてや秋晴れの行楽日和とあって、 もうみんな、ピクニック気分で嬉しそうなんだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

妙にはしゃいだりして、 これから恐怖の心霊スポットに行く一行とは、とても思えない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

私の親友がピンクのシャツで、 弟がオレンジ色のカーディガンだし、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

赤も、ブルーもいて、何だか服装がカラフルなんだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

心霊探訪なんだから、目立っちゃまずいでしょ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、いよいよ出発。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

石野さんの先導で、ぞろぞろとみんな、あとをついて行くんですが、 てんでばらばらで距離があいちゃって、まとまりがない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

見れば、みやげ物を買っている人がいるし、 後ろで大きな声で、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「終ってからどうする？　打上げするの？」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「何にする？　焼肉がいいか？」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「駅前に、中華料理店があったね」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と話してる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

まだ終ってやしないのに、これから行くんだから・・・・・ 大体、心霊探訪は大声でお喋りしないでしょう。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

こっそり行かなくちゃ。 まるで緊張感が無い。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それでも、山門をくぐって、 紅葉の桜並木の参道を行って、寺の境内を抜けると、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そこはちょうど、洗面器の底のような地形の小さな盆地で、 釣堀くらいの蓮池があって、建物もいくつか建っている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

恐らくこの盆地全体が昔は蓮池だったんでしょうね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

周囲を囲む高台の一角の、鬱蒼とした木々の間から、 いかにも旧家といった感じの、深い瓦屋根の大きな屋敷の一部が見える。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それが、この一帯の広大な地所を持つ、大地主一族の屋敷で、 その眼下に、この一族が経営する病院があるんですね。