カレイドスコープ・オブ・ケオス#5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼に危機が迫れば、対応するだけだ。マスラダはこの旅を自己犠牲の道ゆきにするつもりは無かった。タイクーンを討ち、ネオサイタマに帰還する。そしてタキの安否を明らかに……『0100101……モシモシ!ニンジャスレイヤー=サン!』「!?」ギャルルル!マスラダはシグルーンをドリフトした。 19

2020-05-26 22:00:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あッぶね!」フィルギアがこらえた。「ウワーッ!」コトブキは慌てて急停止したためにモーターサイクルを二回転スピンさせ、しがみつくザックと共に目を白黒させた。旅の一行は荒野の只中で停止した。「どうしました?」「タキだ」マスラダは顔をしかめた。『01001……001……応答……』「おれだ」20

2020-05-26 22:03:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『マジだな!オイ、無事か!?もうハリマは出たのか?問題ねえか?』「そっちが逆に……チッ。今、どうやって繋いでいる?」マスラダ達は天下布武以後、外部への通信を試みたが、全て失敗に終わっていたのだ。『それはな、オレが真のハッカーとして完全覚醒し、神に……』『モシモシ。はじめまして』21

2020-05-26 22:07:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「誰だ」マスラダはニューロンに流れ込む声を警戒した。『まあその、事情があって相乗りしてる……確かに、お前と通信する為に、クソッタレ磁気嵐を突破する必要があってよ。補助的な役割をしてくれてる存在だ。補助的な……」『私はナンシー・リー。貴方は……ニンジャスレイヤー=サンね』 22

2020-05-26 22:12:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニューロンにさざ波が走り、タキの隣に、見慣れぬ女性の存在の輪郭が揺れた。「お前がタキをおれに繋いだわけか」『とはいえ、タキ=サンのタイピング速度あってこそなのだから、私の役割は補助的なもの……』『味方なんだ』「そうか」『タキ=サン、この遠隔通話がどこまで保つかは保証できないわ』23

2020-05-26 22:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダはこのナンシー・リーの正体を確かめたかったが、今はその時ではなかった。「ネオサイタマはどうなっている。状況は」『それが、ヒデエんだ』タキは自身がいかに危険な目に遭い、絶望の淵に立ち、そんな中で勇敢に戦ってきたかを説明した。マスラダはタイクーンの宣言の裏付けを得た。 24

2020-05-26 22:23:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキは意識を失っていたが、空を覆ったタイクーンの顔という怪現象はネオサイタマでも同様に発生しており、以来、空もおかしいのだという。『昼も夜もねえ。タイクーンは神出鬼没、暗黒メガコーポの兵器をブッ壊して、また帰っていく。だから企業もゲニンをうまく止められねえ。奴らやりたい放題だ』25

2020-05-26 22:27:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おれがどうにかする」『まあとにかくネオサイタマに戻ってこい。そしてオレを護衛するべきだ……ア?どうにかッて?』「ホンノウジに行って、タイクーンを直接やる。そうすれば話が早い。矢だの、くだらないジツだの、天下布武だの、クソくらえだ。おれがカタをつける。そしてネオサイタマに帰る」26

2020-05-26 22:31:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『ちょっと?ちょっと待て?ホンノウジ……』「奴の城がある。そこへ向かう」『……いいわね。とても』ナンシーが呟いた。彼女の言葉には、どこか感傷的な響きがあった。『直接、敵の首領を叩く……シンプルで、はっきりしている。貴方もまた、ニンジャスレイヤー=サンなのね』 27

2020-05-26 22:37:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『アンタ、助長しねえでくれるか?』タキが慌てた。『奴はポータルを使ってネオサイタマやら、たぶん他の都市やらに、行ったり来たりしてンだ!ニュースじゃアケチ注意報が出るんだ、毎日!それぐらい頻繁で……ホンノウジじゃつかまらねえに決まってるぜ!』「おれが奴を釘付けにする」『何?』 28

2020-05-26 22:39:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奴の事は、だいたいわかった」マスラダは言った。「奴はこのふざけたネザーキョウの王だ。カラテでニンジャを引っ張り、常に力を見せつける。天下布武もそうだ。だから、奴はここの王なんだ」『……』「おれは奴の息子のジョウゴ親王を二度倒した。奴はおれを無視できない」『つまり……?』 29

2020-05-26 22:45:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おれはこの国の連中の耳に入る形で、タイクーンに挑戦する。奴はカラテにものを言わせて勝ち続けてきた。そんな奴が、自分の息子を負かした奴の挑戦から逃げれば、腰抜けだ。ネザーキョウの連中は腰抜けに忠誠を誓わない。奴は絶対におれの挑戦を無視できない」『ムウー……そりゃあ……そうか』 30

2020-05-26 22:49:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキは慎重に考えた。『だが、呼び出してノコノコ出ていくような奴は王様っぽくねえし、乗らねえかもよ』「そんな事はおれも期待していない」マスラダは答えた。「おれが直接ホンノウジに行く。奴はおれを迎え撃たなければならない」『お前なあ……そりゃそうかもだが……』『宣戦布告というわけね』31

2020-05-26 22:53:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダの脳裏に、脈打つ力の葉脈図じみたビジョンが去来した。『そうなれば、電子ネットワークの力が使えるかもしれない。貴方が今いる地点の付近に、ネットワークが集積している』「この国の連中はインターネットが禁じられている」『いや……ゲニン連中は結局やってるぜ』タキは渋々助言した。 32

2020-05-26 23:00:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『だから……まあ……ネットワークを使って挑発すれば……効く……だろうよ』「そうか」マスラダは納得した。「この付近の都市は……ナガシノだな。迂回するか通過するかを、決めようとしていたところだ」『ナガシノ』タキは呻いた。『連れて行かれそうになった……!ゲニン連中がその都市の名を』33

2020-05-26 23:03:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前が捕まれば面倒が減ったか」『ふざけるな!とにかく、通信が不安定……また繋ぐからよ……うまくやって、オレを呼べ!デジタル・オーディン0101』「……」マスラダは通信を終え、伏せていた目を上げた。コトブキ達がマスラダを見ていた。マスラダは頷き、遠くそびえる影を見る。ナガシノ。34

2020-05-26 23:09:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「コーッ……。シュコーッ……」リディーマーはメンポの呼吸孔からくぐもった音を漏らし、山のような巨体の膝元にしなだれかかる裸の背中を撫でた。オイランは複数おり、あられもない白紗の半裸であって、人ばかりでなく、有角の大柄な女達も混じっていた。オニ……即ちネザーオヒガンの種族である。36

2020-05-26 23:15:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リディーマーはビッグニンジャクランのニンジャソウル憑依者であり、同様のビッグニンジャ達と比較してもかなりの巨体を誇る。そしてそのいかめしい装甲。メンポはバッファローの双角が埋め込まれた鋼兜と融合しており、尖った肩当ての真鍮の甲冑で全身を鎧っている。玉座も尖り、剣呑である。 37

2020-05-26 23:22:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この精強なる鎧は、彼が治めるナガシノで鍛えられたインターネット鋼がふんだんに使われた恐るべき代物。そして奴隷オイラン達の首を繋ぐ鎖もやはりインターネット鋼であった。「シュコーッ……シュコーッ」彼の巨体にカラテが満ち、低周波が迸ると、オイラン達は恍惚として、震えながら見上げる。 38

2020-05-26 23:25:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リディーマーの鎧の肩や脇腹にはチューブが繋がり、玉座と接続されていた。彼は強靭精強なるニンジャであったが、持病であろうか、チューブを通して何らかの薬剤供給を受けている。そのさまは鎖に繋がれたオイラン達と奇妙に似通っており、ある種のアイロニーが伴っていた。 39

2020-05-26 23:29:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「コーッ……シュコーッ」鎖のひとつを掴み、手練れたさまで引っ張ると、その鎖の先の有角オニオイランは、恐怖に身をこわばらせ、重箱からサーモン・スシを取り、岩山めいた膝のうえで手を伸ばして差し出した。「遅い」リディーマーはスシを張り飛ばした。ナムサン。 40

2020-05-26 23:32:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「床に落ちたスシなど食えるか。愚か者」他のオイラン達が怯えた目で追う中、有角オニオイランはしめやかにスシを拾おうとする。リディーマーは微妙に鎖を引いてその屈辱的行為すらも妨げ、残虐に笑うのだった。何たる俗物……カラテに物を言わせし残虐なる領主であろうか。 41

2020-05-26 23:35:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リディーマーのかつての名はコールリッジ大尉。UCAのヌーテックからは旧祖国に対する最大の裏切り者として憎まれ、最上位クラスの賞金がかけられている。実際、彼のナガシノには国境を越えて幾度も暗殺者が差し向けられているが、その試みの全てが失敗していた。リディーマーが……強いからだ。 42

2020-05-26 23:38:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「もうよいわ!スシひとつ食わせられんとは惰弱な!」リディーマーは奴隷オイランを罵り、まとめて鎖を引くと、強制的にドゲザさせた。彼の怒り顔には理不尽な喜びがかすかに混じっている。そのときだ。「失礼致します」玉座の間にニンジャが二人エントリーしてきた。スラッシュとチェックメイトだ。43

2020-05-26 23:42:54