カレイドスコープ・オブ・ケオス＃5

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シテンノの一人として重要拠点ナガシノを預かるリディーマーは、抱える部下のニンジャ達も精強である。彼らにつけられた「デスベレー隊」の名は、アメリカ軍時代にリディーマーが率いていた強力な特殊部隊の名であり、歪んだ郷愁が込められていた。「報告せよ」リディーマーが促した。　44

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハーッ！」チェックメイト（彼は元チェスボクシング西海岸王者である）は頭を床につけるほどにオジギし、マキモノを広げた。「天下布武効果によりて国外より大量のLAN直結者がナガシノに運び込まれております。従来の10倍以上のペースで、ネザー鉄大増産の機運！偉大なるタイクーンに栄光あれ！」 45

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フン……それは良かった事だな」リディーマーは顎を擦った。「このナガシノと……畢竟、私の重大性はいや増すばかりよ。シュコーッ」「全くにございます！」「クワドリガ＝サンは南方戦線で華々しき勝利を重ねておる。増産の要請は厳しかった。是非にも応えてやらねばなるまいな……」「ハーッ！」46

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だが、惰弱４都市制圧に割くべき兵装はなによりも軽視してはならん。ここに至りては、インターネット浄化設備のメンテナンス最迅速重点！UNIX電力供給設備の増設！大ピッチで行うべし！」「ハハーッ！」チェックメイトがにじり下がると、今度はスラッシュが進み出た。「報告にございます」「申せ」47

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

治安警察をつとめる片目眼帯のニンジャ、スラッシュは、懲罰鞭を弄びながら言った。「領内に怪しき者あり」「ここのところ騒がしいの。あの……何と言ったか。おったな。ケチな泥棒が。シュコーッ」「アンモナイトでございますな」アンモナイトとは、化石略奪を繰り返す危険なニンジャの名である。　48

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奴はどうしておる？」「ひとまずは水責め拷問とスシ・トーチャリングで弱らせ、脱走意志を削ぎ落としております」ナムサン。ネザーキョウを彷徨い非道行為を重ねたアンモナイトの刹那的な旅の終着点は、火と鉄の街ナガシノであった。「価値のある化石は選別し、オムロに換えるのだ」「ハーッ！」　49

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「シュコーッ……それで？報告に入らぬか」ナガシノには富が唸る。それゆえ、外部から誘蛾灯じみて吸い寄せられてくる内外の者が後をたたないのだ。スラッシュの残虐な鞭が血に濡れない日はなかった。有罪の者、無罪の者、等しく限界まで痛めつけられるのだ。「街を嗅ぎ回る二人組のニンジャです」　50

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ……二人組……シュコーッ」「一人は襤褸を着た大男。もう一人は……なんと申したものか。若い娘です」「コーッ。シュコーッ。ならば適当に罪状を突きつけ、逮捕して引きずってまいれ」「ハーッ！逃げ足の早い連中でございます。ゲニンが取り囲み、取り逃がしましてな」「惰弱！」　51

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハーッ！おめおめと戻ってきた惰弱者は、アンモナイトの隣の獄に繋いでおります」「車裂きにせよ」「ハイヨロコンデー！」「さて、その二人。ナガシノより決して逃がすなよ」「無論にございます！」スラッシュは勢い込んだ。「コントレイル＝サンとヘッドバンガー＝サンが任に当たりますゆえ！」　52

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フーム……あの二人か」リディーマーは目を細めた。「勢い余って殺してしまうようではつまらぬが……まあ、それはそれでよいか。映像記録重点。士気高揚に用いるゆえ」「無論にございます！」「パンとサーカス……げにまこと、都市運営の鉄則よ。狩りを楽しませい！」「ハハーッ！」　53

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人のニンジャが並列側転で退出すると、リディーマーは再びオイランの遊びにふけり始めた。彼は常に苛立っていた。常に苛立ち、その苛立ちを鎮めるものに、飢えていた。KA-BOOOM……。アーチ窓の外、異常な空にネザーの稲妻が閃いた。オニの娘は無言のうちに震えた。それは凶兆であったからだ。　54

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【続く】