- Oboro_sakamichi
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1 3月10日。 私は今、目の前の看板を見つめ、その瞬間を待っている。 看板には布が被せられていて、そこに書かれているものはまだ見えない。
2020-05-27 19:43:442 そして、その瞬間がやって来る。 掛かっていた布が取り払われ、露わになるのは4桁の番号の羅列。 私は血眼になって、求める数字を探す。
2020-05-27 19:48:033 歓声が上がった。誰かが膝から崩れ落ちた。 私の求めるものはまだ見つからない。まだか、まだかと焦りが募り、絶望が顔を出す。 そして、全ての番号を見終えた。
2020-05-27 19:51:455 あぁ、本当に辛い時には涙って出ないんだ。 なぜか冷静な頭でそんなことをぼんやりと考える。 私はそのまま、静かにその場を後にした。
2020-05-27 20:00:056 不意にスマホが震える。 画面には「お母さん」の文字。 「もしもし」 『もしもし?どうだったの?』 「駄目だった」 自分でも驚くほどすんなりと言葉が出た。
2020-05-27 21:16:298 その後、気づいたら家に着いていた。 そして、出迎えてくれた母の胸で私は声を上げて泣いた。体中の水分がなくなるのではないかと思うほどに。 一頻り泣いた後、私はある人に電話をかけた。
2020-05-27 20:15:139 3コール目で相手が出た。 『もしもし、優佳?』 私の好きな、暖かく、優しい声。 『今日、発表日だろ?どうだった?』 あぁ、言わなければならない…悲しい事実を。
2020-05-27 20:18:3910 「…落ちました」 『…そうか』 「ごめんなさい…私、期待に応えられなくて…」 『何言ってるんだよ。優佳が本気で頑張ってたことはみんな知ってる。優佳が出し切ったなら、それで俺たちは満足だよ』
2020-05-27 20:23:1212 電話の後、両親が私に聞いた。 『もう一年、頑張るか』 でも、私の心は決まっていた。 「私には、私を待ってくれてる人たちがいるから。そろそろ戻らなくちゃ」
2020-05-27 20:50:0414 そして今、私の周りには21人の仲間がいる。 「空まで届け!ぽかぽかキュン!1人じゃない、仲間と共に高く跳べ、日向坂46、ひ!」 この円陣の1ピースに、ようやくなれた。
2020-05-27 20:56:2816 『大丈夫、みんなは暖かく迎えてくれるさ。なんたって"おひさま"だからな』 "おひさま"か…だったら、私はその光の下で輝いてみせようじゃないか。 いよいよ、その時がやってきた。
2020-05-27 21:04:4717 みんなが私の名前を呼ぶ。 『さぁ、行ってこい!』 その声を背に、私は光の下へ歩き出した。 視界に広がる真っ赤な光。歓声が沸き立つ。
2020-05-27 21:08:12