カレイドスコープ・オブ・ケオス＃10

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……イヤーッ！」再びリディーマーはUNIXジャンクを掴んだ。もはや意図は明白。だが！KBAM！「ヌウッ！？」掴んだUNIXデッキが突如爆発した！怯むリディーマー！ナムサン、既にこの処分場のジャンクにはインターネットの血が通っている。ハッキングによるピンポイント過負荷だ！　21

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KBAM！KBAM！更に彼の足元で爆発！よろめくと、背中側に積まれたUNIX群が過負荷爆発し、休ませる事がない！さながら危険なバクチクの群れに飛び込まされた儀式犠牲者だ！「これは……！」リディーマーは目を血走らせた。ニンジャスレイヤーは前傾し、呼吸を深めてゆく！　22

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リディーマーのニンジャ第六感は、ニンジャスレイヤーから放たれるであろう不穏なカラテを予期した。阻止せねばならぬ！UNIXデッキ爆発の衝撃を受けながら、彼は強引にニンジャスレイヤーに襲いかかった。「イヤーッ！」ビッグチョップを振り下ろす！ニンジャスレイヤーの目が赤黒く燃える！　23

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは中腰姿勢に身を沈め、斜め上に拳を突き上げた。ビッグチョップと拳が衝突した。ニンジャスレイヤーの足元に亀裂が生じた。だが、今度弾かれるのはリディーマーの手だった。「グワーッ！？」DOOOOM……！地響きを立て、たたらを踏むリディーマー！手に裂傷！　24

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((未熟！浅いわ！)))ナラクが罵った。「スウーッ……フウーッ……！」ニンジャスレイヤーはリディーマーを見据え、呼吸を深めた。彼は呟いた。「掴んだ」リディーマーはその眼光を軽視しなかった。彼は用心深く間合いを取り、全身にカラテを循環させた。放置すれば危険。だが拙速な攻撃は死を招く。25

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リディーマーは屈辱を覚えた。このイクサは全くリディーマーらしくない。手勢を用い、圧倒的な物量とテクノロジーによって叩き潰すのが彼のやり方だ。ナガシノを要塞化し、精強なる直属ニンジャ達にデスベレー隊を名乗らせ、ネザーキョウにおいて兵站の要を担う立場までのし上がった。　26

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そうして、かつてのコールリッジ大尉は、この弱肉強食のカラテの国において米空軍在籍時を上回る地位を獲得したのだ。ただ己の筋肉とカラテで殺戮するばかりのクワドリガやヘヴンリイには見えぬ世界をリディーマーは見ている。文明の叡智をもって、カラテの国でのし上がる……それが彼の復讐なのだ。27

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イクサにロマンは不要。数と指揮の力で圧し潰す、足し算と引き算の世界。しかし、なればこそ……リディーマーの戦いにはもはや、じわじわと削られ、頭上からゆっくりと迫る敗北を前に為すすべもなく震える以外の選択肢が残っていないのか？（敗北！？）リディーマーは目から血を流した。（否！）　28

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リディーマーの心臓が激しく鼓動し、血液が凄まじく循環する。背中に繋がれたチューブを通して、邪悪なエネルギーが流れ込む。ビッグニンジャの肉体がさらにパンプアップした。バランスを欠いた彼の生命を維持する為の薬剤を、彼はいちどきに吸い込み、体内に留めた。チューブが背中から脱落した。　29

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイイイ……」リディーマーが震えた。パンプアップした全身の筋肉に縄めいた血管が浮き上がった。DOOOM！DOOOM！突進前のバッファローが前肢で土を掻くように、彼は足踏みした。大木じみたリディーマーの両腕は内なるカラテではちきれんばかりとなり、光すら放ちはじめた！　30

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……イイイイイヤーッ！」リディーマーは後ろ向きでニンジャスレイヤーに突進した！否！上半身をねじりながら、まっすぐに向かってきたのである！その突進は即ち、全エネルギーをこめたロシアンフックをニンジャスレイヤーの脳天に叩きつける為の予備動作だ！ニンジャスレイヤーは、目を見開く！　31

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは拳を打ち上げた。塔そのものを破壊するがごときリディーマーの拳に、真正面から向かっていくカラテだった。ニンジャスレイヤーの全身を黒炎が流れ、その拳を加速させた。リディーマーの腕が伸び切るよりもコンマ1秒早く、ニンジャスレイヤーの拳が接触した。　32

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「……！？」リディーマーの肩のつけ根が黒い火を噴いた。「……！？？」リディーマーは重心が狂いきって、バランスを崩し、転倒をこらえた。ニンジャスレイヤーは動き出した。彼の傍らに、他ならぬリディーマーの右腕が落下した。拳を、腕を、燃えるカラテが伝わり、肩で爆ぜたのだ。　33

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……！」リディーマーは憤怒の形相でこらえた。彼はLAN直結するコトブキ達を見た。フィルギアが警戒の表情で身をこわばらせる。リディーマーは切羽詰まった嗜虐にその目を歪めた。「……イヤーッ！」リディーマーは左手をコトブキ達に振り下ろした！　34

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「……」……しかしリディーマーの眼前には、跳躍したニンジャスレイヤーがいた。残像を伴うほどの速度で、ニンジャスレイヤーはリディーマーの泥めいたスローモーションの視界に割り込んできた。「……イヤーッ！」ニンジャスレイヤーのチョップ突きがリディーマーの目を貫いた。　35

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはリディーマーの脳から突きを引き抜き、着地した。リディーマーは倒れ込み……「サヨ……ナラ！」爆発四散し、煤めいた爆発四散パーティクルを撒き散らした。壁の穴から吹き込む風が、煤をさらっていった。　36

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◆◆◆ 37

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキはナンシー・リーの傍ら、黄金立方体の輝きを浴び、エテルの風を感じながら、ナガシノの電子ネットワークを見下ろしていた。堰き止められ、凝縮された光が、カラカラに乾いた毛細血管に流れ込み、東西南北にひろがってゆくさまを。「大それた事をしちまったか」タキはナンシーに言った。　38

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「生きるって、そういう事よ」ナンシーはタキを見て微笑んだ。タキは頭を掻いた。「やっぱりオレには向いてねえ気がするんだな」「そうでもないわよ、テンサイさん」「よ……よしてくれよ。オレはスコシ・テンサイぐらいだ。危ねえ真似はまっぴらだ」「あら、そう？」「おい……なんだ？」　39

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネザーキョウの闇のあちこちで、光の粒が瞬いた。太陽の光を地底の鏡が返すように。それに従って、毛細血管の輝きはと強まってゆくのだった。「何が起きてる」「トラフィックね」ナンシーが答えた。「ネザーキョウのネットワークは死んでいない。そうでしょう？」　40

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まあそうだな……ゲニンの奴らも、こっそりインターネットしてるわけだしよ……ア、そうだ、アレか、もっと積極的にやってる奴ら……リコナーとか言う奴ら……！」「その両方かしらね。これは」128体のオイランアイドルと麻雀牌のポリゴンが乱れ舞い、それらに応える者達が波紋を生じてゆく。　41

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんかスゲエな」タキは呟いた。アカウント同士の接触が乱反射し、別の場所に飛び火する。それはネザーキョウに留まらない。闇に包まれた領内と周辺のUCA諸都市との間でも通信の兆しが感じられる。恐らくこれは止まらない。「オレみてえな半端者でもわかる。予言者じゃなくても」タキは言った。　42

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーはタキになにか答えようとして、やめた。何故ならナガシノのネットワークに今、赤黒く燃える自我が屹立したからだ。「う、いてて」タキは頭を押さえた。「オイ、マジでやるんだな？」「……」ニンジャスレイヤーはタキに向かって頷いた。タキは応じた。「しょうがねえ。準備できたぜ」　43

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキはタイピング速度を維持し、この葉脈じみたネザーキョウのネット回線を保つべく必死になった。ナンシーがそれを助けた。ナガシノの火が、導火線を伝い、ホンノウジに、トオヤマに、ヤマザキに……ネザーキョウの都市都市に走っていった。『イヤーッ！』ナガシノの塔ポリゴンが燃え上がった。　44

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

メガトリイの障壁が強い力に反応し、国外への伝搬を妨げる。タキはむしろそれを望み、不明瞭なフィルターで補った。ニンジャスレイヤーの存在が文明諸国の偉い奴らに知られればロクな事にならないからだ。今回やるべき事は……何より……ホンノウジだ！『イヤーッ！』塔が崩れ、炎が漢字と化す！　45