ライク・アズ・ドラゴン #2 改

この時は大変だったなあ。鈴谷を倒したのはいいけど、後始末で向こうの提督さんが自爆しちゃって。大人しくしてればよかったのに、余計なことしたから懲戒免職になっちゃったの。 ……今はどうしているのかしら? 1:https://togetter.com/li/694243 3:https://togetter.com/li/696957
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2014-07-19 20:31:18
劉度 @arther456

【ライク・アズ・ドラゴン】#2

2014-07-19 20:31:32
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss を使用していただけると大変ありがたいです。艦これと呼べるギリギリのラインですが、宜しければ暫くの間、お付き合い下さいませ)

2014-07-19 20:32:15
Gotland @overlord_write

一人の少女が、夕暮れを背負って立っていた。少女のクリーム色の髪は、夕日を受けて今は黄金色に輝いている。青い目は集中のために閉じられ、薄く開いた口からは細く、長く、整えられた息が吐き出される。彼女と相対するのは、青い髪の外国人の女性。こちらも拳を構えて、間合いを計っている。 1

2020-06-28 23:27:19
Gotland @overlord_write

カコン、と鹿威しが鳴った。目を開いた少女は滑るような足捌きで女性に近づき、手刀を放った。「ヒャアッ!」「うにゃあ!」女性はそれを避け、掌底を放つ。少女は掌底を捌き、脇腹へ蹴りを仕掛ける。「シャオッ!」女性は後方に跳んで避けた。少女は蹴り足を下ろした勢いで、前方に大きく踏み込む!2

2020-06-28 23:27:33
Gotland @overlord_write

「とぉぉぉん!」真空波を身に纏わせ、女性へと体当たり!女性は高く跳躍してこれを回避する。「ウリャッ!」だが少女は身に纏った真空波を拳へ集中させ、ジャンプアッパーを放つ!「たあっ!」女性はチョップを振り下ろし、これを迎撃。真空波と闘気がぶつかり合い、衝撃が空気を震わせた。3

2020-06-28 23:27:44
Gotland @overlord_write

少女と女性は同時に着地し構えを取る。しばし睨み合った後、女性の方が構えを解いた。「うん。調子、いいんじゃない?絶好調だと思う」少女もそれに応じて気を緩める。「ありがとうございますわ、ゴトランドさん。かの瑞典無音拳伝承者から教えを受けられるとは、思いませんでした」4

2020-06-28 23:27:53
Gotland @overlord_write

「まさかゴトランドもよくわからない拳法の使い手だったとはね……」隣で見ていた提督が感嘆の声をあげる。幼馴染とはいえ知らないこともあるようだ。「それで、熊野。本当にお父さんと戦うの?」ゴトランドの問いかけに、熊野は頷いた。「ええ。それが神戸水鳥拳伝承者の掟ですから」 5

2020-06-28 23:28:01
Gotland @overlord_write

提督はその話を既に聞いていた。熊野が艦娘になる前、一度火熊に挑戦して破れたこと。それから彼女の拳法の腕が伸び悩んだこと。丁度その頃、海軍から艦娘適正があると聞かされ、逃げるように艦霊を身に降ろしたこと。そして、それでも神戸水鳥拳を諦めきれなかったこと。 6

2020-06-28 23:28:10
劉度 @arther456

「私は武道家じゃないから、そこら辺の気持ちは分からないけどさ」夕日が提督の肌を赤く照らす。「何度失敗しても、泥だらけになっても、最初に決めた目標に辿り着けばそれで勝ちでいいじゃない。大規模作戦とか、いっつもそんな感じでボコボコにされながら戦ってるでしょ?」 7

2014-07-19 20:52:55
劉度 @arther456

「ですが、私に宿った艦霊は、熊野は……」「それは言うな」熊野の言葉を、提督は手で制した。「歴史を繰り返す必要はない。熊野が届かなかったあと一歩を、お前が一緒に歩いてやれる。だから艦娘なんでしょ」そういう提督の顔が、いつもと違って熊野にはとても頼もしく見えた。 8

2014-07-19 20:56:36
劉度 @arther456

「まあ、なんか親父さん色々悩んでてコンディション最悪みたいだし、勝てるでしょ?」一瞬の幻影は消え、提督は緩みきった顔になる。それに反して、熊野の顔に影が差した。「ええ、確かに最悪のコンディションですわ。……ベアフィールド・ヤクザクラン存亡の危機ですもの」 9

2014-07-19 20:59:52
劉度 @arther456

「……え、何それ?」「広島からベルグース・ヤクザクランが攻めこんできているのです」「さっきの爆弾も、そいつらのせいか……」広島と兵庫は近い。神戸から出発し、秘境岡山県を越えればすぐだ。「ならやり返せばいいんじゃないの?」「いえ、この抗争、そんな単純じゃありません」 10

2014-07-19 21:03:14
劉度 @arther456

新たな声。顔を上げると、いつの間にか若頭の鍋島が近くにいた。「ベルグースとは過去に何度も戦った間柄、奴ら単独じゃウチに勝てないってことはハッキリしてます。だから奴らは同盟を組んで攻めてきたんですが……そいつらが問題なんです」鍋島が懐から一枚の写真を取り出す。 11

2014-07-19 21:06:27
劉度 @arther456

写っているのは、白いスーツの冷たい目の男と、スーツを来てもチンピラ風味を隠し切れていない男。「これがもう一つの敵、横浜を本拠地とする、ブラッククルス・ヤクザクランです」「……冗談だろ?」提督が呻く。写真に映るヤクザではない。その回りにいる男たちにだ。 12

2014-07-19 21:08:43
劉度 @arther456

「お分かり頂けましたか、私たちの置かれた状況が」写真に映るヤクザの向かいに座って話しているのは、兵隊たちだった。ヤクザの戦力という意味の兵隊ではない。正真正銘、日本軍に属する兵士。「この神戸を狙っているのは、私たちと同じ、海軍ですわ」「なんてこった……」 13

2014-07-19 21:11:57
劉度 @arther456

「奴らの狙いは、ウチの組とベルグースの全面抗争に『治安維持』っていう横槍を入れることです。いくらウチでも本物の軍隊には敵わない。ウチらを潰した後、ゆっくり神戸の支配権と利益を奪い取る気でしょう」「とんだ悪徳軍人もいたもんだ」自分のことは棚に上げて、提督は忌々しげに呟く。 14

2014-07-19 21:15:17
劉度 @arther456

「オヤジは鎮守府と、どうにか交渉するために金を集めてるんです。来月のみかじめを先に取ったり、貴方に見せた契約書みたいなことをしたり」ヤクザたちが焦っていた理由は、それか。提督はようやく納得がいった。「……あんな契約書を渡しておいて何ですが、ウチに金を、貸してはくれませんか」 15

2014-07-19 21:18:49
劉度 @arther456

鍋島が膝を地に、続いて手を最後に額を地面につけ、深々とお辞儀した。恥を顧みない最上級の降伏姿勢、土下座である。「ちょっと、鍋島……」「止めないで下さい、お嬢。オヤジはこの10倍頭を下げてるんです。部下の俺が土下座の一つも決めなきゃ、顔が立ちません」 16

2014-07-19 21:22:18
Gotland @overlord_write

「土下座しても出さないものは出さないからね」提督の一言が、場に水を差した。「お前ーっ!?」「提督!?」「ちょっと、優月!?」「私の立場ってものも考えてよ。ヤクザに直接金を貸せるわけないでしょう?はい、これ!」提督は鍋島の手に名刺を握らせる。 17

2020-06-28 23:28:22
劉度 @arther456

「……これは?」「ちょっとした代議士さんの名刺。それ銀行に見せて、お金貸して貰いなさい!」暴力団に資金提供しても、帰ってくる保証はない。だが政治家の名前を担保にすれば話は別だ。巡り巡って利益が帰ってくるならば、銀行は喜んで金を貸してくれるだろう。 18

2014-07-19 21:28:55
Gotland @overlord_write

「ありがとうございます!」「これっきりだからね。……ちょっとトイレ行ってくる。ゴト、熊野、よろしく」「……ああ、なるほど。それじゃあ熊野、来なさい」「承りましてよ!ヒャアッ!」訓練を再開した2人を背に、提督はその場を離れる。そして、2人から見えない所でスマホを取り出した。 19

2020-06-28 23:29:15
劉度 @arther456

「もしもし?」『お呼びですか、司令』声を潜めて、提督は電話口の相手に要件を告げた。「不知火、ちょっと調べて欲しいことがある。神戸鎮守府建設計画についてなんだが……」夕日と共に、密談を告げる声は沈む。 20

2014-07-19 21:35:58
劉度 @arther456

ケンジは酒に弱い。ブラッククルス・ヤクザクランの中で一番の外戸だろう。地元のキャバ嬢の間ではすっかりネタにされているほどだ。だが、今日に限っては何杯飲んでも酔う気がしなかった。アルコールに酔える場じゃない。常に腹に刃物を突きつけられているような状態だった。 22

2014-07-19 21:39:17