【リレーツイノベありがとう】「夏だから」【そして、ありがとう】
- windcreator
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【起】夏だから。その一言で旅立つことが決まった。海がいい。そうして海に向かった。船で行く。慌てて船を用意して、彼女の指差す方へと舵をとる。飛ぼうよ。彼女が言うので、局所的に重力を操作して雲の海を行く。気持ちい。その横顔を見るだけで満足だった。月に行こ。どこまでも貴女の意のままに。
2011-07-06 11:46:45【承】彼女が行く先を決め、用意して、船が叶える。空という海は次第に色を失い、いつの間にか遠くに数多の光が瞬く星の海へとやってきた。綺麗。頬を上気させた彼女の顔が艶やかで、顔を赤らめ頷く。行く先には次第に大きく見えてくる月がある。月にはどんな海があるのだろうか。
2011-07-06 11:58:01@windcreator 【承】月を目指す。欠けた月は猫の目のよう。こちらを見下ろす柔らかな光に包まれ船は行く。時折、彼女は星を見て笑う。その笑顔を動力にして船は加速していく。猫の目はみるみる大きくなって、そこへ吸い込まれていくかのように僕らの船は着地した。
2011-07-06 12:14:26【転】星の海を越えたころ、月を目指す僕らが見たのは、互いを想いながらも引き離された哀しい恋人同士だった。明日は逢瀬が許される日だ。「ずっと…」彼女は僕の手をぎゅっと握って、僕はそれに「うん」とだけ答えた。僕はこの手を離さない。何があっても。そして僕らはついに来た。静かの海に。
2011-07-06 12:18:05【転B】月明かりに照らされた彼女は次第に輝きを増していく。彼女の口からは幻想的なメロディーがこぼれ、それに合わせるかのように星のローレライ達も歌い出す。自然と彼女に触れようと僕が手を伸ばした刹那、歌は止み眩く輝いていた彼女は消え、暗闇の中行き場を失った船には僕だけが残された。
2011-07-06 12:25:50【結】降り立ってすぐに、地球があるべき方向へ向き直る。すぐさま目に飛び込む神々しさに、暫し二人とも、呆、と、立ち尽くした。眦からは泪が溢れ、止まるところを知らなかった。そうして数分の後、月面に座り、地球を眺め。「汚れなき青さと、そこに寄り添う輝きに、心よりの感謝と崇敬を―――」
2011-07-06 16:48:26