神殺しの物語り-ボトムズとガサラキ
- XavierCohen
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続)“この世界で、キリコがなぜそんな位置にいるかというと、ワイズマンというのは本当の神様ではなくて、ある種、人間が発達してきた中での究極の存在で、そういう意味においては万能です。(中略)そうなると、次に目指すのは神なんですね。”(続
2011-07-07 15:48:57続)“それを最初から持ち出すと、何だかいわくありげな、ちゃんと目的を持ったキャラクターになるんだけど、キリコ本人はそんなことはまったく意識していない。そういうところから物語を発想していったんですよ」 高橋良輔氏:『ボトムズ・アライヴ』
2011-07-07 16:00:00死なざる者である彼等は、死すべき者である人間に藉身することにより、再び死なんとすることを望んだのか。そうかも知れない。度重なる戦火と築き上げられる死体の山は、彼等の死の疑似体験であったのか。多分、そうなのだろう。
2011-07-07 16:12:50超自然的存在、という表現は適当じゃないだろうね。本来自然に備わっている安全装置としての神、なのだろう。キリコは死なない兵士と呼ばれるし、ユウシロウは前世の記憶を受け継いだまま転生を繰り返す、ある意味神的、霊的存在と言える。高橋作品は、神が似非神を殺す物語りなんだね。
2011-07-07 16:43:59ちくま文庫版『エッダ』には、『グレティルのサガ』というおまけが付いている(というか、おまけの方が長い)。これは悪党小説でもあり、面白ろ悲しい法螺話でもあるんだけど、十世紀前後のアイスランドやスカンジナヴィア地方の風俗や倫理観、法制度が細やかに描かれていて興味深い。
2011-07-08 08:54:54例えば、当時のアイスランドで極刑とされたのが追放刑。この期間中は、共同体による法的保護を受けられなくなる。つまり、被害者は報復し放題だったりする(ザブングルの3日間ルールだね)。ただし共同体の外に出た者に手を出しちゃいけないんで、受刑者は必死で見ず知らずの土地を逃げ回るハメに。
2011-07-15 09:05:54追放刑を受けたグレティルは、結局逃亡先の共同体でも強盗殺人を繰り返し(必ずしも悪意によってでは無いんだけど。ムラ社会だから他所者は職にも就けないし)、最後は息子を殺された老婆の呪術にかかって死んでしまう。
2011-07-15 09:13:54“しかし人々はグレティルが魔法で殺されたことを知ると、はげしくトルビエルン(老婆の息子)を非難した。” アイスランド、スカンジナヴィア地方は、ヨーロッパの中で最後にキリスト教の洗礼を受けた土地。それが、ちょうど十世紀前後の事。キリスト教によって、あらゆる魔法は禁忌とされたんだね。
2011-07-15 09:24:26『エッダ』と『グレティルのサガ』は、共に北欧社会における土着的な神聖、霊的社会の終焉を描いていると、ちくま文庫版の解説(松谷健二氏)に書かれている。『金枝篇』の中で、フレイザーはこう言う。「偽りの神が、真実の神を駆逐したのだ」と。「イエスは懐を豊かにしたが、心を寒くしたのだ」と。
2011-07-15 09:34:31意識集合体ってSFの定番ガジェットだけど、これって生命体としては終わってる(セックスが無いからな、と言ったのは草薙素子さんでしたっけ?記憶が曖昧)わけで。異能者(PS)、インヴィテイターを介して智識、経験の書き足しは可能なんだけど。
2011-07-08 11:29:54一方で、ハードウェアの進化(は可能だろう)は、一切種としての進化を意味しない。ワイズマン(と類似品)はその行き詰まりを解消する為に、再び生身の肉体を欲するのかな(『ガサラキ』では少し匂わせているが)?無限の力と智識を代償にして。
2011-07-08 11:38:23「そんなもん要らん。俺は俺のヤりたいようにヤる!」って言って、セックス(おんなのこ)を選択しちゃうキリコとユウシロウは、いやあ実に『思春期のおとこのこ』だよね。
2011-07-08 11:46:50生身の肉体であることを選択したキリコはいずれ死んじゃうのかな?ユウシロウは二度と転生しないのかな?成仏とか解脱という言葉が思い浮かぶけど、それらのお話が物語られることは決して無いだろうね。そう、「それはまた別のお話」M.エンデ
2011-07-08 12:00:09“自分の鼻を扉の外へ突き出す誰にとっても、恐れを知らぬことは弱気よりもよいのだ。自分の生命の長さと死の日とは、ずっと以前から定められているのだ。” 『スキールニルの旅』
2011-07-07 16:50:06“男も女も自らの困難の分け前を予期し、最善の者はそれを利用し、その上に出て、勇気と忠誠と寛厚とで自分自身のために名声を切りひらこうと試みるのだ。北欧に根本的なこの宿命論は、神話の中に反映している。”(続
2011-07-07 16:58:38続)“バルドルは死を定められていて、それを避けるすべがないことを(全智の者)オーディンは知っている。また「神々の滅亡」であるラグナレクそのものも、遁れがたい。あらゆる創造が火と洪水によって破壊される時が、必ずやって来るのだ。” 『北欧神話』:K.C.ホランド著
2011-07-07 17:03:05オーディンは、自らの滅ぶべき運命を自覚するが故に、積極的に享楽的な生き方を選んだのだという。-“人間性は苦難に生れついているが、しかし勇気と冒険と生の諸奇蹟は、われわれにまだ生命が与えられている間に楽しむべき、感謝に値する事柄である。” E.ダヴィットソン
2011-07-07 17:21:35「想像する事すら出来ない力 -でも、それだって結局は与えられたものでしかない」「どんなに大きな幻よりも、永遠に続く生命よりも、たとえ小さくたっていい、ほんの一瞬に過ぎなくたっていい、本当の命を生きる方が私は好き」「たとえそれで命を落とす事になっても?」ミハルが頷く。 『ガサラキ』
2011-07-07 17:28:27