猫ちゃんのちょっと耳寄りな良い話(=^・^=)ニャーン🎵 #ねこ

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にょわわ@アリクイ @cmaoyan

「あの猫のせいで娘は結婚できない」 大坂のとある商家のあるじは、飼っている雄猫の処遇に悩んでいた。年頃の娘は評判の器量良し、婿入りした者はいずれ店を継げるとあって、本来なら縁談に困るはずなどない。 それが叶わないのは、長年家にいるブチの雄猫が娘のそばを片時も離れないせいだ。

2020-09-16 08:32:30
にょわわ@アリクイ @cmaoyan

娘が生まれる前からいた猫は、娘がどこに行こうと犬のように傍らにぴったりくっついている。そのさまは我が子を守る親か妻を守る夫かのようだ。 「あの家の娘は猫に魅入られいる。あの家は猫憑きだ」 かような噂が流れ、婿に入ってもよいという者は現れなかった。 「猫をこのままにしておけない」

2020-09-16 08:36:32
にょわわ@アリクイ @cmaoyan

一族協議の末、猫を処分してしまうことになった。 ところがそれを察したか猫は行方をくらましてしまう。 その夜、あるじがふと目を覚ますと、枕元に猫がうずくまって底光りする目でかれを見ている。 あろうことか猫は口をきいて、 「われが娘のそばを離れなかったのは理由がある」

2020-09-16 08:39:51
にょわわ@アリクイ @cmaoyan

「娘は生まれたときよりこの家の、歳古りた鼠の化生(ばけもの)に狙われている。愛着があるこの家なれば、娘を害させるに忍びず、夜昼となく守る役をつとめてきた」と。 あるじはおおいに驚き、「その鼠をなぜ獲らぬのか」と猫に問いただす。猫答えていわく、「向こうのほうが強い」と。

2020-09-16 08:46:18
にょわわ@アリクイ @cmaoyan

「われは齢四十年。鼠の化生は百年である。猫と鼠とはいえ、一匹にては討ち取ること能わず。 大坂は島之内、河内屋市兵衛のもとに虎猫がいる。その虎猫も通力を持つ者なれば、河内屋にいって虎猫を借りてきてほしい。合力すれば鼠を倒せよう」と。 あるじがはっと目を覚ますと猫の姿はすでにない。

2020-09-16 08:50:53
にょわわ@アリクイ @cmaoyan

半信半疑ながらあるじは島之内に足を運んだ。河内屋の門内をのぞくと本当に縁側に虎猫がいる。 河内屋に事情を話し、物は試しに猫を借りてよいか、とあるじは頼んだ。 河内屋はおおいに奇妙がりながらも、身元確かなあきんどのことなればと了承した。 あるじが帰るとすでに店に虎猫がいる。

2020-09-16 08:54:29
にょわわ@アリクイ @cmaoyan

明日人づてに猫を届けてもらうはずだったが、そばで聞いていた虎猫が先回りしていたのである。たしかに尋常な猫とは思われない。 おまけに姿を消していた店のブチ猫が現れ、虎猫と話し込むように顔を寄せ合って鳴いている。 その夜、ふたたびブチ猫があるじの枕元に現れた。

2020-09-16 08:57:26
にょわわ@アリクイ @cmaoyan

「われと虎猫を二階に上げ、鼠の怪を討たせよ」と。 猫たちが二階に上げられて二日後の夜、突如として恐ろしい叫喚がひびきわたり、家屋がきしむ。明らかに獣同士の争う音。震えながらあるじと妻、娘は騒ぎが収まるのを待った。 やがて音は絶え、あるじはおそるおそる二階に上がった。

2020-09-16 09:02:34
にょわわ@アリクイ @cmaoyan

猫の倍はある巨大な鼠がそこには死んでいた。 鼠の喉笛にブチ猫が食らいつき、毛皮を血に染めてこれまた息絶えていた。 虎猫は瀕死であったがこちらは生きており、手当てして回復を待ち、河内屋へ厚い礼とともに送り返した。

2020-09-16 09:05:56
にょわわ@アリクイ @cmaoyan

あるじは娘を守ったブチ猫のために人と変わらぬ墓を立て、手厚く葬り、子々孫々恩を忘れず供養していくようはからったという。 江戸時代の怪談書『耳袋』収録の話。

2020-09-16 09:08:03