氷原公魚著【破竹のナイトメア】~竹の子社員を不幸に堕とす~ まとめの弐☆

竹の子書房が誇るスラップスティックの名手、氷原公魚氏が容赦なく手腕を発揮するこの企画! 問答無用で、社員を不幸に突き落とす…決して、殺すことはなく…。竹の子社員には死の安息など、許されはしない…ッ!!! まとめの壱☆は、こちら http://togetter.com/li/146455
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氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 「十枚あるか数えましょう」ハーメルンが散らばった下着を拾い集め、枚数をかぞえる。「いちまーい、にまーい、さんまーい……」呆然とその光景を眺める煙鳥。彼はなんとなく、有名な古典怪談『番町皿屋敷』を思い出していた。#tknm

2011-07-15 21:44:47
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 「ななまーい、はちまーい、きゅうまーい……」ハーメルンの動きが止まる。「一枚足りない!」と、同時に煙鳥の背後でエンジョイメントの殺気のこもった猫撫で声が響いた。「さて、残る一枚は何処にあるのかしらー?」「し、知らない! 僕は無実だ、知らない!」#tknm

2011-07-15 21:45:14
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 煙鳥は動揺する。そうだ、無実のはずだ。なのに……この股間に感じる不自然な稲荷のハミ出し方は何故だろう? 普段はこんなに食い込んだりしないはずだ。しかし、どういうわけか意識すればするほど稲荷の不自然さが気にかかる。#tknm

2011-07-15 21:45:36
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 「そこかー!!」エンジョイメントがいきなりスボンを引っ張り、引き下ろした。そこに現れたのは明らかに稲荷を収納しきれないほど肌に密着した縞パン! もはや言い訳のしようもない。煙鳥はガックリとうなだれて自白した。「ぼ、僕がやりました……」#tknm

2011-07-15 21:46:01
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 近隣住民が騒然として見守る中を、煙鳥は顔を隠すという人権的配慮もなく手錠をかけられ、下半身を縞パンだけに守られた姿で警察署に護送されていった。ハーメルンが苦笑する。「さすがによく考えたらわかるんじゃない? 整合性がメチャクチャだって」#tknm

2011-07-15 21:46:32
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 「人間は夢を見てる最中は、案外気がつかないものよ。これが夢だっていうことはねー」エンジョイメントは答えた。背後に流れるエンディングテーマ。さっきからテーブルだとばかり思っていたネムレス・モノリスが、静かに頷いている……。#tknm

2011-07-15 21:47:58
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 【破竹のナイトメア/社員番号十二番 竹宵亭煙鳥様のお支払い】#tknm ・何度数え直しても一枚足りない。 ・近隣住人に罵倒される悪夢ばかりみる。 ・何度履き直しても稲荷がフィッティングしない。

2011-07-15 21:48:26
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 【破竹のナイトメア/社員番号十三番 こたろー様】#tknm

2011-07-20 22:52:48
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p ハンチング帽を目深に被り、左手に持った競馬新聞に赤いサインペンで印をつける。「やっぱり本命はホタルノヒカリで決まりかな」そう結論づけたハーメルンに、エンジョイメントは首を横に振った。「いやいやー、この私が調教したんだもの。こたろーで間違いないってー」#tknm

2011-07-20 22:53:09
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p ――ここは夢の中にある東京競馬場。お馬さんに人生を賭けた漢たちの熱気が結実し、人々の集合的無意識に反映して生まれた幻の競馬場である。そして本日『競馬の祭典』日本ダービーを迎え、競馬場を包む熱気は最高潮に達しつつあった。#tknm

2011-07-20 22:53:31
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 「パドックで見たでしょー?」エンジョイメントの問いに、ハーメルンはパドックを歩くこたろーの姿を思い出す。ハミを噛まされ、黒革のビキニパンツで股間を申し訳程度に覆う彼の姿は、拉致直前とは比較にならないほど引き締まった体格になっていた。#tknm

2011-07-20 22:53:52
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p こたろーは竹の子書房ラジオ課に所属する、ぽややんなSE見習い。オカルトや怪談好きで、この間夢魔たちから取り立てを受けたばかりの『チーム怪談天下統一』の竹宵亭煙鳥と仲が良い。そんなこたろーが、突然ビール瓶で殴られて拉致されたのはつい先日のことだ。 #tknm

2011-07-20 22:55:02
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p でも、どうやったらこんな短期間でこれほど身が引き締まるのだろう? エンジョイメントは嬉々として教えてくれた。「まず余分な肉を削ぎ落とさないといけないからー。大量浣腸用イリガートルで、グリセリン浣腸を二百回くらいねー。さすがに泣きわめいてたけどー」 #tknm

2011-07-20 22:55:30
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 「うわぁ……」思わず想像してしまい、言葉を失うハーメルン。だが、エンジョイメントの話はまだ続く。「十回目くらいのところで啜り泣きになって、二十回目くらいで絶対服従するようになったけど、容赦なく二百回目まできっちりやってー」 #tknm

2011-07-20 22:55:54
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 「……立派なマゾ奴隷に育ったのは、わかったけどさ」「その後、筋肉をつけさせるために地獄のトレーニングを課してープロテイン漬けにしてー尻穴に拡張用ニポポ人形を銜えさせてー」……どうやら、こたろーが想像を絶する酷い目に遭ったのだけは間違いないらしい。 #tknm

2011-07-20 22:57:10
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p しかし、それにしてもわからないことがある。ハーメルンは聞いた。「だけど、なんで日本ダービーなの? 何か理由があって、こたろーを出走させるわけでしょ?」「よくぞ聞いてくれましたー」エンジョイメントは胸を張った。 #tknm

2011-07-20 22:57:35
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 「ほら、歌にあるじゃないー。♪はしれーはしれーこたろ……」「違う、それ違う!」「え?」「間違ってる! それはこたろーじゃなくて、コウタロー!」「あ……そ、そうなのー?」ハーメルンの突っ込みを受けて、間違いに気がついたエンジョイメントの視線が泳ぐ。 #tknm

2011-07-20 22:57:55
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 「間違いで立派なマゾ奴隷を育てちゃって……どうするつもりよ!」「どうもこうも……け、競馬なんだし勝てばいいのよ。ここでお前が負けたならーオイラの生活ままならぬってヤツよ!」開き直るエンジョイメントの耳に、出走を知らせるファンファーレが響いた。 #tknm

2011-07-20 22:58:36
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p ゲートが開く。サラブレッドたちの舞い起こす砂埃の中、尻を押さえながら走るこたろーが見えた。双眼鏡を下ろしたハーメルンが疑問を口にする。「どうして尻を押さえてるの?」「……実は、コースレコードでゴールしないと、ドラゴン花火が点火することになっていて……」 #tknm

2011-07-20 22:59:13
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 人間が馬より早く走れるはずがない。常識だった。三分後にはハズレ馬券が舞う中で、第一コーナー付近で倒れたこたろーの突き出された尻から、火花が高く美しく吹き出していた。「むごい……あまりにむごい」ハーメルンが呟く。 #tknm

2011-07-20 22:59:39
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 「ギャンブルは……恐ろしいものね」そう言い放ったエンジョイメントが、なんとなくアンニュイな雰囲気を作りながら、何も無かったかのように誤魔化して帰ろうとしている。それが、ハーメルンには一番恐ろしいことのように思えた。 #tknm

2011-07-20 23:00:01
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 【破竹のナイトメア/社員番号十三番 こたろー様のお支払い】 #tknm ・コウタロウじゃない。こたろー。 ・お尻でドラゴン花火を銜えられるようになりました。 ・女王様の仰せには逆らいません。

2011-07-20 23:00:30
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 【破竹のナイトメア/社員番号十四番 こはらまりか様】 #tknm

2011-08-07 21:21:36
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p 夏の太陽が肌を焼き、こはらまりかの体力を確実に削り取っていく。竹の子書房で『永遠の十三歳』という二つ名を持つ彼女も、紫外線の攻撃によってお肌のヘアピンが死のカーブに変わっていくのを回避することは出来ない。衰える溌剌さ……こはらまりかは夏バテしつつあった。 #tknm

2011-08-07 21:22:14
氷原公魚@竹の子書房北海道支社勤務 @Wakasagi_H

@ts_p ようやく自宅に帰りつき、疲れ果てた身体を横たえたのは既に夜も更けた頃だ。明日の為にも深く、そして一秒でも早く寝たい。まりかはそう思った。しかし、寝なければならないと思えば思うほど、睡眠への義務感が焦りとなって彼女の眠りを妨げる。 #tknm

2011-08-07 21:23:01