ハイヌ-ン・ニンジャ・ノーマッド #2
「ツ、ツネオ=サン」「い、如何致します……!」足軽たちが困惑した顔で侍を見上げ、答えを求めた。「面白い、俺が相手をする」馬上の侍は足軽たちを後ろに下がらせた。そして威圧的に数歩、馬を前に歩ませ、呼びかけた。「貴様、どこの落武者だ?」 22
2020-10-16 21:12:00「ドーモ、初めまして、ツネオ=サン」落武者はオジギした。粉っぽい風が大通りを吹き抜けた。「……いや、トゥームストーン=サン。ニンジャスレイヤーです」「ドーモ。貴様、何故、その名を知っている?」トゥームストーンと呼ばれた馬上の侍は、眉根を寄せた。 23
2020-10-16 21:15:00「お主を殺すからだ」キルジマは云い、刀を鞘から抜いて横一文字に構えた。しんしんと刃が鳴った。真昼の太陽を浴び、刃が落武者の顔に影を落とす。その下に、二つの真っ赤な目が爛々と輝いた。 24
2020-10-16 21:18:00「忍」「殺」と刻まれた禍々しい鋼鉄面頬がどこからともなく現れ、落武者の口元を覆った。鎧の下では赤黒い襤褸布が現れ、業火の如くざわめいた。「その首、貰い受ける」 25
2020-10-16 21:21:00「猪口才な」馬上の侍は鼻で笑い、右腕を左から右へと無造作に振った。目にも留まらぬ速さで、四枚のスリケンが放たれた。スリケンの投擲速度はおよそ時速二百キロ。常人の目では追えぬ。 26
2020-10-16 21:24:00だがキルジマには見えるのだ。彼は目を見開き、歯を食いしばった。「イヤッー!」刃の残光が空中にZ字の軌跡を描き、カカカッと、四つの火花が散った。スリケンを弾いた凄まじい反動で、キルジマの体は後方にと、と、と数歩流れた。 27
2020-10-16 21:27:00鋼鉄の星は全て弾かれ、二枚が地面に深々と突き刺さり、一枚が宿の壁を突き破り悲鳴を生じさせ、初めに弾いた一枚は投擲者のもとに返された。キルジマは投擲者を狙い、スリケンを弾き返したのだ。投擲時よりもなお加速し、今や六六六キロじみた速度。信じ難い業前であった。 28
2020-10-16 21:30:00対する馬上の侍は、身じろぎひとつしなかった。弾き返されたスリケンの軌跡が見えなかったからではない。己の体には当たらぬと読めていたからだ。ギュン、と音が鳴り、スリケンが侍の兜に深々と突き刺さり、それを後方へと弾き飛ばした。 29
2020-10-16 21:33:00兜の下に隠されていたのは、黒いニンジャ頭巾と、髑髏模様の黒面頰、そして白く発光する人外の瞳。侍の正体は、ニンジャであった。ニンジャは満足げに頷き、馬から降りると、黒い刀を抜いてアイサツした。「良かろう。ならばニンジャスレイヤー=サンとやら、俺のカラテで直々に斬り殺してくれる」 30
2020-10-16 21:36:00