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◇ファヴ 「この度は本当に……」 「謝られたって困るぽん!」 目の前に突き出された頭、薄い灰色の短髪、二本の黒い角、全てが腹立たしい。魔法少女は顔を上げ、目を伏せた。表情からは申し訳なさがいっぱいに伝わるが、ファヴという電脳妖精に「絆される」という惰弱な機能は無い。
2020-11-14 16:12:04人事部門の応接室は、織の細かい朱色基調の絨毯を敷き、調度品には木の温かみを感じさせる渋茶色の物を配置、全体的に暖色を多く使い、暖かな雰囲気を醸し出す造りになっている。が、そのような部門長の計らいに逆らい、現在の雰囲気は穏やかとは程遠い。
2020-11-14 16:13:13外交部門からの客人である魔法少女「魔王パム」はひたすらに頭を下げ続け、人事部門所属のマスコットキャラクターであるファヴはただただ責めたて、建設的な遣り取りは一切ない。 甲高い電子音声が部屋の中に響いた。 「謝るくらいならクラムベリーを返せぽん!」
2020-11-14 16:15:05発端は今から一週間前の「魔王塾主催 最強魔法少女決定トーナメント」だった。「もうすぐ試験が始まるんだから自重すべきぽん」というマスコットキャラクターのごく真っ当な意見を受け流し、魔法少女「森の音楽家クラムベリー」は大会へのエントリーを決定した。
2020-11-14 16:17:58彼女は全部で二十あるブロックの四番目、Dブロックに送られた。参加名簿を見た識者が「死のブロックだ」と唸ったという強者ひしめくブロックだ。
2020-11-14 16:18:38一回戦では「炎の湖 フレイムフレイミィ」を圧倒、少々の火傷を負って勝利。二回戦では「白刃乱舞 レイザーレイ」相手に少なからず出血するが、血も傷も意に介さず叩きのめした。
2020-11-14 16:22:04三回戦では魔法反射能力を持つ「雲外鏡 山田ミラ子」に対し泥臭いインファイトを仕掛け、双方合わせて骨折十三ヶ所という激しい格闘戦の末に殴り潰す。
2020-11-14 16:23:11四回戦では波を操る「終末の波濤主(パトス) ノミリーナ」と魔法の撃ち合いを演じ、音波さえも操ってみせた波の達人に敗北寸前まで追い詰められるも、隠し技「大爆音の二乗(フォルテ・フォルティッシモ)」をゼロ距離で炸裂させ、間一髪勝利をもぎ取った。
2020-11-14 16:25:09そして問題となるブロック準決勝。傷つき疲弊していたクラムベリーは周囲の反対を押し切って「もるもるもるぐ」と対戦する。同情や心配を吹き飛ばす猛攻でクラムベリーは押しまくるも、もるもるもるぐは魔法による回避と退避、魔法少女体術による受けで防御に徹した。
2020-11-14 16:26:20僅かな隙を突かれて傷ついた箇所に一撃を受け、よろめくクラムベリー。そこへもるもるもるぐが「絶対的死体保管所(ブラックモルグ)」を使用、哀れ森の音楽家は黒い箱に封印されてしまったのだった。
2020-11-14 16:27:44ファヴが「クラムベリーが暴れに暴れたせいで設定が狂った。これでは封印から解放するのに時間がかかる。試験開始には間に合わないだろう」と聞かされたのはトーナメントが終了して数時間後のことだ。ふざけるな責任者出てこいと怒鳴り散らしても既に後の祭り。
2020-11-14 16:28:24菓子折りを持ってやってきた責任者の魔王パムもすいませんごめんなさい申し訳ありませんで具体的な方策を持っているわけではない。そもそも参加契約書には「なにが起ころうと自己責任」と書いてあるわけで、魔王パムが頭を下げる必要さえなかったのだが、そこは誠意を見せているつもりなのだろう。
2020-11-14 16:29:16魔王パムが顔を上げてファヴを見た。ファヴは怒鳴ることを止めて見返した。その表情はさっきまでの「謝っているだけの人」ではない。魔王と呼ばれ、そのカリスマと戦闘能力で魔法少女達を率いてきた者に相応しい、凛々しくも雄々しい表情だ。 「責任はとる」
2020-11-14 16:31:03「責任はとるって……どうするつもりぽん。クラムベリーの封印を解除する方法があるとでもいうぽん」 「代役を送る。魔王塾の塾生、卒業生の中で最も適任と思われる者を一人、試験官として人事部門に臨時配属させる。どうかこれで許してほしい」 魔王パムはテーブルに両手をつき、深々と頭を下げた。
2020-11-14 16:31:56以上、twitterに投稿したらどうなるかのテストです。お話は続くかもしれませんし続かないかもしれません。とりあえず文頭の一字下げができないことは把握しました。
2020-11-14 16:33:07