- kiduki39ra
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昔鬼と交わったとか鬼に呪われた、と噂される因習村の長の家。時折先祖返りなのか呪いなのか、その鬼の特徴を宿した子供が産まれるという。鬼の生まれ変わりとも言われ、その子供を丁重に祀りながら幽閉し影で意見を仰ぎながら、その家は村を治めていた。
2020-11-16 13:09:15その家に、男女の双子が産まれた。男の方は普通の子供だったが、女の方はその鬼の特徴を宿していた。しきたり通り、女の方は丁重に座敷牢へ迎え、男の方はどうするか相談の末に妹の世話役にすることにした。 いつか成長し、母親とも引き離され残った家族の妹の世話を甲斐甲斐しくする兄。
2020-11-16 13:14:40座敷牢の中の妹もそんな兄を家族として慕いながら、日の差さない牢暮らしながら健やかに育っていた。……それこそ、鬼の印として。 成長した妹は、段々不可思議な不安を吐露するようになった。 「段々、私が私でなくなってしまう」 「私の中の鬼が私を喰らっている」 「このままだと、私は鬼になる」
2020-11-16 13:20:12妹の言葉はうまく理解出来ないが、不安なことは伝わってくる。兄なりに慰め励ますが、妹は悲しそうに笑うのみ。 「私が私でなくなっても、どうかお兄ちゃんだけは私を覚えていて」 そんな願いに、兄は手を握り頷くのだった。 妹の言葉が真実だと知ったのは、それからしばらく後だった。
2020-11-16 13:22:54何も変わらないように見える妹なのに、何故か違和感を覚えた。まるで、何かが妹の真似をしているかのよう。 ……ああ、妹の瞳はこんなに赤かっただろうか。 「お前は誰だ」 誰何の声に、【妹】はにんまりと笑った。 「私は、【妹】だよ。オニイチャン」 「嘘だ」
2020-11-16 13:31:17【妹】の笑顔は変わらないまま、それでもしっかりと頷いた。 「君の妹なら、もう死んだよ」 そして、その【妹】は自らを鬼と名乗り、つらつらと昔話をした。 曰く、かつてこの一族と交わった鬼の魂は滅んでおらず、こうして転生を繰り返している。ごく稀にこうして意思ごと生まれ変わることもあると。
2020-11-16 13:31:18「本来なら儂として産まれるはずなのに、此奴の意思が強くてなぁ。ようやく終わったわ」 面倒な仕事が終わった、とばかりに呟く【妹】……鬼を、ようやく理解が追いついた兄は睨み付けた。殺してやる、とその首に手を伸ばす兄に、鬼は笑った。 「【私】を殺せるの?」 お兄ちゃん、と。
2020-11-16 13:40:41僅かに躊躇い、それでも腕に力を込めれば【妹】の顔でそれは苦しむ。助けて、と【妹】の声で乞われればその手は簡単に緩んだ。 けほこほと咳き込み、【鬼】の顔で【妹】がまた笑う。 「【妹】を、助けてね。お兄ちゃん」 悍しくも美しい笑顔だった。
2020-11-16 13:40:42(以下ダイジェスト) ・神隠しのことを鬼食らいと称す村であり、その言葉通り人の肉を食いたいと話す妹のために山に迷い込んだ人なんかを食べさせるお兄ちゃん。 ・妹を恋愛対象として好きなことに気付くお兄ちゃん。私は妹じゃないからいいんだよ、と誘う鬼。 そんな感じの因習村ネタでした
2020-11-16 13:48:06