【高橋健太郎さん】「アケイディアの流木」はどこから流れついたのか?/英国由来の音楽がやってくる以前に既に文化的混血が進んでいたバイユー

「健太郎が語るザ・バンド」シリーズ、遅まきながらまとめ作成しました。 話は膨らんで、西フランスからノヴァ・スコシアにやってきた音楽が、ブルーズの特異性の一つ12小節形式成立に影響を与えたのでは?という仮説を展開します。 目次) 1.ザ・バンドの名曲「アケイディアの流木(Acadian Driftwood)」 2.「アカディアンの過去と現在」 続きを読む
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1.ザ・バンドの名曲「アケイディアの流木(Acadian Driftwood)」

 カナダの東南部、ケイプ・ブレトン島を含む一帯は、16世紀にはフランスの植民地であり、アカディア(英語ではアケイディア)と呼ばれていた。このアケイディアをイングランドが奪い取り、ノヴァ・スコシア、つまり「新スコットランド」と命名して最初の植民地を建設したのは1629年。その後、フランスとの睨み合いを続けながらも、ロンドン政府によって大規模な植民地計画の実行開始が1749年に宣言された。おりしもハイランド(注・スコットランド北部)では、地主主導の農業革命の煽りで暮らしが立ち行かなくなった人びとが多数あらわれ、かれらは大挙してノヴァ・スコシアに移り住む。(注略)
 アケイディアを分捕られたフランスは、すぐ西隣のケベックまでも奪われた。だが、すでにフランス系住民が多数居住していたことや、18世紀アメリカ独立戦争を巡る諸要素が絡み合った結果、1867年の自治領カナダ成立とともに、ケベックは北米大陸におけるフランス文化の橋頭保とも呼べる自治権を持った州となる。フランス系のアイデンティティ護持を一貫して「国是」としてきたケベックに、フランスからの影響が濃厚な伝統音楽が継承されているのは言うまでもない。(中略)
 ケベック成立の恩恵にまったく与れなかったのが、旧アケイディアのフランス系住民だ。ブリテンのノヴァ・スコシア植民開始が宣言された1749年からの約6年間で、1万人前後のアケイディアに住むフランス系カトリックが、財産を没収されたうえ植民地アメリカへと船で強制移住させられた。かれらの悲劇が、詩人ロングフェローによって描かれたのはよく知られているだろう。ロックの世界ではザ・バンドが「アケイディアの流木」という名曲を残している。アメリカ各地で排斥される約10年の艱難辛苦を経て、かれらが腰を据えたのは、はるか南、未だフランス統治下にあるルイジアナ南部の沼沢地帯、バイユーだった。(茂木健『フィドルの本 -あるいは縁の下のヴァイオリン弾き-』P151~153)

kentarotakahashi @kentarotakahash

探してるCDが、おお、AMAZONにあるじゃないか!と行ってみて、値段見て、吹いた。 amzn.to/3pNj6KQ

2020-11-21 20:12:42
kentarotakahashi @kentarotakahash

アカディアンのフォーク・ミュージックを知る上で、他にお薦めってありますか?

2020-11-21 20:23:31
kentarotakahashi @kentarotakahash

映画『ランブル』が、ネイティヴ・インディアンの音楽が、アメリカのポピュラー音楽に与えた影響について、示唆を投げたけれど(ほとんど研究されてないとしつつも)、アカディアンのフォーク・ミュージックについても、それありそうだよね。ケイジャンみたいな目に見える形以外のところで。

2020-11-21 20:45:26
kentarotakahashi @kentarotakahash

フレンチ・インディアン戦争以前(18世紀前半)まで遡ると、ルイジアナ〜ミシシッピから五大湖周辺に至る地域、つまり後にジャズ、ブルーズ、ロックンロールを育む地域は、フランスなんだよな。 pic.twitter.com/1jxHp364RL

2020-11-21 20:58:09
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kentarotakahashi @kentarotakahash

ザ・バンドの音楽について、カナダ人がアメリカ音楽を演った的に語られることって多いけれど、ネイティヴ・インディアンとアカディアンの系譜を引くと考えると、アメリカのバンド以上に、深遠なアメリカーナ性を彼らの音楽が湛えていたことも頷けるような。

2020-11-21 21:02:18
kentarotakahashi @kentarotakahash

だって、この水色の地域には、アイリッシュやスコティッシュのフォーク・ミュージックよりも先に、ネイティヴ・インディアンとアカディアン(フランスからの入植者)のフォーク・ミュージックがあったはずなんだから。 pic.twitter.com/2p45MnhxaC

2020-11-21 21:08:19
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kentarotakahashi @kentarotakahash

で、映画『ランブル』が示唆したように、アフリカンとネイティヴ・アメリカンの音楽のフュージョンが起こった。さらには、それらとアカディアンの音楽とのフュージョンだって、あったんじゃないだろうか。

2020-11-21 21:10:58
kentarotakahashi @kentarotakahash

エレーヌ・バイアルジオンの『Chansons d'Acadie』は1956年にフォークウェイズが録音した。エレーヌはケベック州出身の歌手・女優で、民俗学者でもあった。open.spotify.com/album/4n9UTeeq…

2020-11-21 21:17:27
kentarotakahashi @kentarotakahash

この17曲目に入ってる「Dans les Prisons de Nantes(ナント刑務所の囚人)」は17世紀起源。フランス語圏で広く歌われてきたという。当然、カナダやアメリカでも18世紀には歌われていたんじゃないだろうか。 open.spotify.com/track/7e7GE0TC

2020-11-21 21:29:33
kentarotakahashi @kentarotakahash

この曲、12(6)小節進行で、3行詩の形式だよね。

2020-11-21 21:30:47
kentarotakahashi @kentarotakahash

次号のレココレの原稿入れて、ひと段落かなと思ってたんだけれど、これはまだまだ先がありそうだな。

2020-11-21 21:52:58
kentarotakahashi @kentarotakahash

この曲はロビー・ロバートソンが書いた曲の中でも三本の指に入ると思ってきたんだけれど。 youtube.com/watch?v=te7KW4…

2020-11-21 21:53:59
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kentarotakahashi @kentarotakahash

背景の歴史をもっと読み込まないといけないわね。

2020-11-21 21:54:42
kentarotakahashi @kentarotakahash

昨日から聴いてるこのコンピレーション、素晴らしい。カナダのノヴァ・スコシア州でのフィールド・レコーディング。やはり1956年のフォークウェイズ盤。 youtube.com/watch?v=vPI6Ah…

2020-11-22 09:47:32
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kentarotakahashi @kentarotakahash

ノヴァ・スコシア州のフォーク・ミュージックはスコティッシュ由来が主だとWiki見ると書いてあるんだけれど、カナダのフォークロリスト、ヘレン・クレイトンが録音したこれにはアカディアンのフォーク・ソングも多い。さらには先住民(ミクマク族)やジャーマンのものもある。

2020-11-22 09:55:03
kentarotakahashi @kentarotakahash

ノヴァ・スコシア州はスコティッシュが大量に移民してくるのは19世紀だった。が、それ以前にアカディアン(フランスからの入植者)とインディアンの音楽が触れあっていたことが、このコンピレーションの構成からも窺えるね。

2020-11-22 09:57:13
kentarotakahashi @kentarotakahash

ヘレン・クレイトンの本、Kindle版安いから、読んでみよう。カナダのアラン・ロマックスのような人なんだな。 amzn.to/3lOo3ka

2020-11-22 09:59:52
kentarotakahashi @kentarotakahash

このアカディアン・フォーク・ソングも興味深い。これも12(6)小節3行詩形式だよね。 youtube.com/watch?v=pyyVhS…

2020-11-22 10:03:43
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kentarotakahashi @kentarotakahash

「Acadian Driftwood」をアナログで聴いてみようと盤を出してきたら、長年の誤解に気がついた。このクレジット。 pic.twitter.com/MnDOvkssri

2020-11-22 19:54:47
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kentarotakahashi @kentarotakahash

『Nouthern Lights - Southern Cross』はガース・ハドソンのシンセサイザー・ワークが印象的なアルバムだったので、「Acadian Driftwood」の冒頭の笛の音もシンセだと思い込んでいた。でも、この曲でガースはシンセは弾いてないわ。

2020-11-22 19:58:23
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