柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 『SIDE:柳生十兵衛』

これはアロハ天狗によるSFパルプアクション剣豪エンタメ・マーダーパンク小説「柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のtwitter再放送ログです
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前話
『内臓館とマダム・ストラテジーヴァリウスに関する報告書/第二話 百手のマサとウォーモンガーたみ子、内臓館を訪れる 』

まとめ 柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 『内臓館とマダム・ストラテジーヴァリウスに関する報告書/第二話 百手のマ.. これはアロハ天狗によるSFパルプアクション剣豪エンタメ・マーダーパンク小説「柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のtwitter再放送ログです 640 pv

柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 『SIDE:柳生十兵衛』(前編)

2020-11-17 18:08:01
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「オイラ、柳生十兵衛!バトルが大好きな小学五年生!町田の皆、オイラとバトルしようぜ!!」町田に立ち入るなりそう絶叫した柳生十兵衛は、その剣の二振りで町田の全住民の八割強を即死させた。 1

2020-11-17 18:08:19
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

二発目の斬撃を何者かに受け止められると、十兵衛は途端にその場への興味を失い、おもむろにその場に座り込んで弁当を食べ始めた。「オッホ、オイラの大好きなオムライスじゃねーか、母ちゃん、わかってる~~!」 2

2020-11-17 18:13:21
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

彼の剣を辛うじて止めた男は剣が折れたのか一目散に走り去っていったが、十兵衛は食べる事に夢中で気にも留めなかった。 3

2020-11-17 18:18:21
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

ここで読者諸兄に申し添えておくと、本作における柳生十兵衛のビジュアル・イメージは、現代日本における最大公約数としての柳生十兵衛概念(女体化されているものは除外されたい)を想定頂いて概ね外れはない。つまり、小学生ではない。 4

2020-11-17 18:23:18
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

それはさておき、十兵衛は弁当を食べ終わると(ちなみに、これは実際にはオムライスではなかった。それが実際には何だったのか詳述するのは読者の正気のために差し控える)立ち上がり、鼻をひくひくと鳴らして嗅ぎまわった。生き残りの匂いを嗅いでいるのだ。 5

2020-11-17 18:28:21
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

実際には、犬並みの嗅覚を持っていたとしても辺りの凄まじい死臭と血の匂いの中でそれを嗅ぎ分けるのは不可能だったし、十兵衛の嗅覚は人間並みだった。適当に歩き回って、近くにいる人間を皆殺しにしているだけだ。ただし十兵衛だけは、それを鼻によるものと信じていた。 6

2020-11-17 18:33:23
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「あれが柳生十兵衛か」「あれは…狂人というより、異常者ではないか」「油断するな。この国で最強の剣士の一人だ」そんな十兵衛の様子を、遠く離れた所から見る男たちがいた。 7

2020-11-17 18:38:17
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

彼らは、十兵衛の町田来訪を知って一太刀浴びせようと殺到した(そして真っ二つになった)市民たちとは異なり、慎重に距離を置いて十兵衛を観察していた。「それにしても愚かな連中だ」「あの男がここを訪れて、まず大量殺戮をするなど容易に予測できるだろうに、理解できんね」 8

2020-11-17 18:43:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

死体の山を見て、男たちが笑う。「笑うな、お前たち。それがこの国のやり方ということだ」頭目格と思しき、大柄な男がいさめた。その目つきは険しく、顔の下半分は濃い熊髭に、上半分は数々の傷痕に覆われている。 9

2020-11-17 18:48:19
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

その声は断固とした意思を表していたが、声に荒々しさはなく、むしろ穏やかな口調だった。 「イエス・サー!」それまで笑っていた男たちは、途端に襟を正した。簡単には人に従わぬ荒くれ者の集まりだったが、頭目の男は彼らからの絶対的な敬意を獲得していた。 10

2020-11-17 18:53:21
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

男たちの服装は一様に埃っぽくすり切れたフライト・ジャケット。この国の技術ではない、なんらかの銃器を両手に構えている。黒い金属製の巨大なバックパックが目立つ。「しばらくこの距離を維持し、奴の行動様式と戦闘能力を確認する。現地住民と無用な戦闘は起こすな。理解したか」 11

2020-11-17 18:58:17
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

彼らの言葉はこの国の言葉ではなく、その肌は白い。「俺たちの目的は二つだ。柳生一族の能力を確認すること、奴の持つ「英霊頑刀」と呼ばれるエピック・アーティファクトを奪取すること」男たちは頷く。先ほどの軽薄さは消えていた。 12

2020-11-17 19:03:19
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「いつもの通り命がけの作戦だが、お前たちを一人も死なせる気はない。いつもの通りな」頭目の男、エルンストはそう告げ、円陣に立つ男たちに手を差し出した。ほかの男たちも皆、そこに手を重ねていく。「科学のために」「科学のために」 13

2020-11-17 19:08:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

彼らの手袋の甲にある、ハトの紋章をあしらえたエンブレムにはこう記されていた。 テスラ科学振興財団 ヴァルチャー・スクアッド 彼らは兵士ではない。皆、科学者であった。 14

2020-11-17 19:13:19
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

十数時間後。エルンストともう一人の若者は瓦礫の中にうつぶせになり、双眼鏡で十兵衛を観測していた。あれからというもの、十兵衛は無作為に辺りを歩き回り、気まぐれに殺戮を繰り返していた。時折、十兵衛の刀が辺り一面を大きく薙ぎ払うのが見える。 16

2020-11-17 19:23:21
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

斬撃の軌道がこちらを向く度に、若者は体をビクッと震わせる。エルンストは微動だにしなかった。 「ヨルン、お前は博士号を取ったばかりだったな。こんな辺境のはぐれ者フィールドワークチームに志願したのは何故だ」 17

2020-11-17 19:28:21
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

エルンストは若者、ヨルンに語り掛ける。その声に非難や自嘲の響きはない。ただ低く、静かな声だった。「東アジアにおける好戦性有害生物群が専攻でした。柳生一族の生態を間近で観察できる機会は願ってもないですし…なにより…」ヨルンは双眼鏡から目を外し、エルンストを見た。 18

2020-11-17 19:33:16
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「教授の元で働きたかったです」へつらいではなかった。ヨルンは懐からすり切れた文庫本を取り出した。『柳生を倒しにニッポンへ』 19

2020-11-17 19:38:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

エルンストが過去に出版した本だった。表紙には若いエルンストの写真が映っている。その顔の傷痕は今よりずっと少なく、その眼に今の険しさと憂いの色は宿っていない。「そうか」エルンストは抑揚のない声でそう答えた。双眼鏡からは目を離さなかった。 「ヨルン、見ろ」 20

2020-11-17 19:43:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

十兵衛に動きがあった。それまでうろうろと瓦礫の山を歩き回っていた十兵衛が座り込んでいる。ヨルンが慌てて双眼鏡を構える。「は、はい…!あれは…?十兵衛…何をしている…あれは…まるで…?」その声には困惑と、嫌悪の響きがあった。「人形遊びだな」エルンストが淡々と答えた。 21

2020-11-17 19:48:19
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「子供の…死体で…ですか…」ヨルンの頬から冷や汗が流れた。意識して抑えないと胃液が逆流しそうだった。「この国の人間の思考様式は我々と根本的に異なる…が、柳生一族はそれとも異なる。その中でも柳生十兵衛、やつは更に異常だ。人と思うな、悪意ある災害そのものと思え」 22

2020-11-17 19:53:22
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

エルンストは変わらず、感情のこもらない口調で答えた。その冷静さに頼れるものを感じたヨルンは、エルンストの顔を見て凍り付いた。双眼鏡から微かに覗くエルンストの眼に浮かぶ、余りにも深い憎悪の色を見たのだ。 23

2020-11-17 19:58:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「チェッ!つまんねーの!」十兵衛はすっかり退屈して石を蹴っていた。 25

2020-11-17 20:08:16
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