柳生十兵衛がやって来る ヤァ！ヤァ！ヤァ！ 『SIDE：柳生十兵衛』

柳生十兵衛がやって来る ヤァ！ヤァ！ヤァ！ ／ YYYYY @YYYYY_revival

折角の町田訪問だというのに、挨拶代わりにたくさん殺してからは、殆ど誰も話しかけてくれなかった。時折正気を失った浮浪者が何もわからずに近づくが、すぐに魔刀から発散される瘴気やガンマ線により、こちらが斬るまでもなく即死してしまう。26

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逃げ遅れて射程内に入った女子供や老人を、退屈まぎれに得意の超広範囲斬撃”雄呂血薙ぎ”で薙ぎ払いもするが、それで衝動が満たされる訳もない。懐から「町田に行ったら一度は訪れたい！町田でおすすめの観光スポット20選」と記された巻物を取り出す。 27

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これを見て定番１位の町田リス園に来たはいいものの、最後のリスもたった今踏み潰してしまったところだ。１位でこれなら、それ以下は推して知るべしだろう。虚無と死の街、町田… 28

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「もっと楽しいことねーかなー…歯ごたえのあるヤツとバトルするとか…もっと１００人２００人まとめて真っ二つにするとか」 十兵衛は鼻を鳴らしながら、周囲を嗅ぎまわる。「オッ？」十兵衛の目の色が変わった。 29

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「オッ？オッ？よくよく嗅いでみると、集団の匂いがするぞ？よし！遊びにいくぜ！」繰り返しになるが、十兵衛の嗅覚は人間並みだ。ただの当てずっぽうである。しかし、その勘は正しかった。剣士の本能であろうか、それとも個としての異常性であろうか。ともかくも、十兵衛は向かい始めた。 30

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【お詫び】なんか磁気嵐とか不正選挙とかで通番２６が変だったので直しました　わたしは全然悪くありませんがなんか投稿が変だったのでおわびします👺

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避難困難者や負傷者が寄り集まり、急場の難民キャンプと化している薬師池公園へと…！ 31

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「各班、こちらアルファだ、状況を報告しろ」エルンストが無線機に向けて語りかけると、すぐに返答が届く。「アルファ、こちらベータ。指定のポイントにて十兵衛を観測中、異常なし」「こちらチャーリー、ベータに同じ」「デルタ、現地住民に接触されましたが、交渉により戦闘の回避に成功」 33

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「エコー、異常無し」他の４チームもエルンストとヨルンのように二人一組となって、町田の各地から十兵衛の動向を監視していた。 「了解だ。それでは各班、観測結果と所見について報告しろ。端的にな」 34

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「十兵衛の斬撃は特殊な衝撃波を生成し、実際の刀身より大幅にその射程を増すようです。推定有効射程は約３００ｍ」「ただし、精度は悪いものと考えられます。横に振り抜いて地上の敵を一掃することで、その欠点をカバーしている模様」 35

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「斬撃は現在までに、生物、非生物含め、その軌道にある全てを切断しており、ビル等の建物や装甲車を丸ごと両断した例も珍しくありません。唯一の例外は、十兵衛の最初の二刀を食い止めた正体不明の人物です」 36

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「それについて、現地住民から情報提供を受けました。本名不詳。通称”百手のマサ”と呼ばれる男で、十兵衛来訪までは町田でも無名の存在だったそうで、過去や能力については謎が多いです。 37

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「十兵衛の周囲には毒性の大気、または強い放射線が発生しているものと考えられます。彼の付近に不注意にも近寄った非戦闘員や動物が、その直後急激に体調を悪化させ死亡する事例が複数観測されました。 38

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この距離からの観測では詳細は不明であり、十兵衛そのものからの毒性か、英霊頑刀、あるいはその他の刀からのものかの判断は困難です」 39

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「奴に対して有効な攻撃を加えた者が存在しないため、十兵衛の防御力は現状では不明です。しかしながら、十兵衛は時折瓦礫などに足を躓かせて転倒しており、その際に出血を確認しました。 40

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負傷の回復速度からも、人類種と同程度の防御力だと期待されます。十兵衛の血液サンプルは回収済ですが、少量のため分析には専門設備が必要です」各班から十兵衛に対する観測結果が続々と届く。この場で語られない各班の詳細な観察も含めれば、画期的な論文が書けるだけの内容だ。 41

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「了解した。俺もお前たちの所見に対して異議はない。諸君らの観測に何ら不満は無いが、十兵衛の能力に未知の要素が多いのも事実だ。現在の我々の装備で柳生十兵衛を殺害、あるいは無力化し、英霊頑刀の奪取に踏み切るのはリスクが高い。 42

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プランBとしてこのまま監視を確認し、十兵衛と現地残存勢力の激突により双方が消耗したタイミングを待つ。あるいは現地勢力が十兵衛の殺害に成功した場合は、英霊頑刀の引き渡しについて交渉の余地も残されているかもしれん」 43

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彼は隣に座るヨルンを一瞬見て、続けた。「もう一つオプションがある。柳生十兵衛は現在、非戦闘員の避難所となっている薬師池公園に向けて進行を開始している。非戦闘員の虐殺が目的と推定される。あるいは、十兵衛を今、我々がその途上で迎撃し、彼らを保護するという選択肢もある。 44

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財団の規則では人道的措置よりも任務の方が優先されるが、最終的な決定権限はフィールドチーム・リーダー、つまり俺にある。お前たちの意見を聞きたい。俺が最後に決定する。リスクは先ほどお前たち自身が説明した通りだ」しばらく沈黙が続く。「救助に向かいましょう」 45

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最初の声は無線機からではなく、隣から上がった。ヨルンが真剣な目でこちらを見ていた。「ベータ、新入りと同意見だ」「こちらチャーリー、どうせならさっさと国に帰って論文を書きたい。今仕留めましょう」「デルタ、この国の女は美人が多い。役得が期待できそうだ」「エコー、異議なし」 46

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ヨルンの答えからそれほど間を開けずに、他のチームからも返答が来る。 エルンストが再び口を開く。 47

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「満場一致だな。それでは我々はこれより、柳生十兵衛の撃退と非戦闘員保護を主要目標に変更する。一度合流した後に再度散開し、十兵衛を包囲する。合流点はC3エリアの134,357ポイント。 48

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デルタ、お前たちのチームが一番公園に近い。十兵衛の接近に気づいていない可能性がある。避難するよう警告してから合流しろ」 49

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言葉の後、エルンストは少し沈黙し、ジャケットの胸元からロケットペンダントを取り出し、開く。その中の古ぼけた写真にはまだ若いエルンストと、日本人と思しき女、そして赤ん坊の三人が映っていた。一瞬の感傷の後、すぐにそれを閉じ、胸に戻す。 50